「いやー、コミットって、漫画とか映像では見たことありますけど、どんな感じなんでしょうねー?」
桜京線の車内で、白部さん、まりあさんたちと会話。
「私は、そんな文化があるんだなーぐらいでしたよ。楽しみですね」
「わたしもです。優輝さんたちのお話によると、かなり暑くなるらしいので、体調、とくに子供たちに気をつけないとですねえ」
「あと、人混みがすごいらしいですから、はぐれないようにしないとですね」
三人で、これからの期待と、不安について話し合う。
当の子供たち三人は、おしゃべりを楽しんでいます。
しかし……。
車内を見ると、私たちみたいな、キャリーバッグを下げたお客さんが、結構見当たる。
いかにもオタクっぽい人から、小洒落た感じの女性まで、実に容姿は様々。これみんな、コミットに参加するのかな。
乗客数も多く、私たちはちょっと座るのが難しい。いやー、波乱の予感がしますねえ!
そうこうしていると、新宿駅に到着~。
さあ、ここから日本最強の、ダンジョン攻略の始まりです。
S線に乗らなければいけないのだけれど、私たち三人とも、利用経験ナシ!
なので、途中あった交番や、出会った駅員さんに道を尋ねながら、掲示板を頼りにえっちらおっちらと、それらしき方向へと進んでいきます。
ゴールイン! S線の改札ですよー! 目的地・K駅までの切符を買い、なんとか乗車~。ふー、疲れた。
キャリーバッグ軍団は、私たちを含めて、非常に目立つようになりました。むしろ、お客さんの大半がそれです。というか、ぎゅうぎゅうです! ひ~!
S線はそのままO駅でR線に切り替わり、一路K駅を目指します。
そして、目的地に到着~! 乗客が、一斉にわっと下車! うわー! はぐれないようにしないと!
「いやはや、すごいですね……」
なんかもう、この段階でへろへろ。
「ほんとに。冷房が役に立ってない状態でしたね」
汗を拭くまりあさん。
「とりあえず、飲み物でも買いませんか?」
白部さんのご提案で、行列に並び、飲み物を買い求める。いやはや、自販機に行列ができるってすごいな。
しかし、うちの子たち、ずいぶんじろじろ見られてるなー。この子たちが注目を集めるのは、今に始まったことじゃないけれど、今日は一段と度合いが高いような……。
ぎゅっと、アメリの手を握る。
番が来たので、スポドリを二本購入。経口補水液は優輝さんの勧めでキャリーバッグに二本忍ばせてあるけれど、これはいざというときに取っておきたい。
白部さん、まりあさんも買い終わり、バスのりばへ。
いやー、もう完全に、コミットのお客さんだなって、わかる人一色! 壮観だなー。なんとなく、記念にパシャリ。
バスに乗車することができ、ゆらり揺られて会場へ! 乗客で、外が見えないなあ……。下車すると、漫画でおなじみの、あの二つの逆三角の形状が! 東京ギガサイトだ!
優輝さんに到着を知らせるべく、スマホで電話をかける。
「はーい」
「今、着きましたー」
「お疲れ様です。サークル用出入り口に、さつきを向かわせます」
というわけで、スマホのWebカタログを頼りに、サークル用の出入り口へ。
出入り口前で、とんでもない数の大集団を横に見る。地図によると、一般参加者用入り口。優輝さんが、サークル枠で入れてくださらなかったら、あの中で待つハメになってたのか……。
「ここで、待ってればいいんでしょうか?」
「と、思いますけど」
不安そうなまりあさんに答える。なにしろ、まるで勝手がわからないものだから、彼女同様、不安な気持ちでさつきさんを待つのみ。
「おーい! こっちっすー!」
さつきさん! 見覚えのある姿に、一同ほっと胸をなでおろす。
「おはようございますっす。じゃあ、さっそく中に入りましょうっすか」
ご挨拶返しをすると、さつきさんが先導し、係員さんにチケットを見せて私たちを中に招く。
「これがコミットかあ~……」
いやもう、人人人人人人! さらに人!
「すごいですね……」
「でしょう? でも、一般の入口が開いたら、こんなもんじゃ済まないっすよ。もう、魔境っす」
さつきさんに所感を漏らすと、なにやらすごいことを言い出す。そうよね。さっきの大集団が、なだれ込んでくるのよね……。
「着いたっす。ここが、自分らの島っす」
たしかに、長机に囲まれて島っぽい雰囲気のエリアで、残りのお三方とミケちゃんから、「おはよーございます」とお声がけいただく。こちらも、ご挨拶返し。
「どうですか、今の心境は?」
ふふと、優輝さんが問いかけてくる。
「いやー、すでに緊張してますよ」
「あはは。わかります。あたしらも初心の頃は、そんな感じでした」
朗らかに笑う彼女。みなさん、荷物を開けて並べているところらしい。
「ええと、サークルとして参加させていただいたわけですけど、私たちは何をすればいいですか?」
「ああ、入場をスムーズにするための方便なので、普通に楽しんでください。あたしらは、基本ここを離れられませんから、案内はできないですけど」
「ありがとうございます。ではさっそくですけど、ゲームを売っていただけますか?」
お財布を取り出す。
「ありがとうございます! 四千円になります~」
「わたしも、せっかくだし買ってみましょうか」
「まりあさんも、ありがとうございますー!」
逡巡しているのが、白部さん。
「それ、『ラック』で動きますか?」
ラックというのは、最大シェアを誇るOS『ウィンズ』の、対抗馬ともいうべきOS。
「あー、すみません。ラックはちょっと、対応してないですね」
「そうですか。売上に、ご協力したかったのですけど」
「お気持ち、ありがたく受け取っておきます」
ぺこりとお辞儀する優輝さん。
「ミケちゃんも、お手伝いするの?」
「そーよ。このプラカード持って、呼び込み」
猫耳幼女の呼び込み! こういうところに来る人たちには、すごく刺さりそうね! アメリたちも、注目の的だったし。
「もうすぐ、一般開放だね。作業急ごう」
「おー!」と、作業スピードをアップさせる、かくてるの皆さん。
もうすぐ開幕かー。ドキドキするな~。
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