神奈さんとアメリちゃん

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第四百九十一話 初コミット! ―前編―

公開日時: 2022年2月9日(水) 21:01
文字数:2,431

「いやー、コミットって、漫画とか映像では見たことありますけど、どんな感じなんでしょうねー?」


 桜京線の車内で、白部さん、まりあさんたちと会話。


「私は、そんな文化があるんだなーぐらいでしたよ。楽しみですね」


「わたしもです。優輝さんたちのお話によると、かなり暑くなるらしいので、体調、とくに子供たちに気をつけないとですねえ」


「あと、人混みがすごいらしいですから、はぐれないようにしないとですね」


 三人で、これからの期待と、不安について話し合う。


 当の子供たち三人は、おしゃべりを楽しんでいます。


 しかし……。


 車内を見ると、私たちみたいな、キャリーバッグを下げたお客さんが、結構見当たる。


 いかにもオタクっぽい人から、小洒落た感じの女性まで、実に容姿は様々。これみんな、コミットに参加するのかな。


 乗客数も多く、私たちはちょっと座るのが難しい。いやー、波乱の予感がしますねえ!


 そうこうしていると、新宿駅に到着~。


 さあ、ここから日本最強の、ダンジョン攻略の始まりです。


 S線に乗らなければいけないのだけれど、私たち三人とも、利用経験ナシ!


 なので、途中あった交番や、出会った駅員さんに道を尋ねながら、掲示板を頼りにえっちらおっちらと、それらしき方向へと進んでいきます。


 ゴールイン! S線の改札ですよー! 目的地・K駅までの切符を買い、なんとか乗車~。ふー、疲れた。


 キャリーバッグ軍団は、私たちを含めて、非常に目立つようになりました。むしろ、お客さんの大半がそれです。というか、ぎゅうぎゅうです! ひ~!


 S線はそのままO駅でR線に切り替わり、一路K駅を目指します。


 そして、目的地に到着~! 乗客が、一斉にわっと下車! うわー! はぐれないようにしないと!


「いやはや、すごいですね……」


 なんかもう、この段階でへろへろ。


「ほんとに。冷房が役に立ってない状態でしたね」


 汗を拭くまりあさん。


「とりあえず、飲み物でも買いませんか?」


 白部さんのご提案で、行列に並び、飲み物を買い求める。いやはや、自販機に行列ができるってすごいな。


 しかし、うちの子たち、ずいぶんじろじろ見られてるなー。この子たちが注目を集めるのは、今に始まったことじゃないけれど、今日は一段と度合いが高いような……。


 ぎゅっと、アメリの手を握る。


 番が来たので、スポドリを二本購入。経口補水液は優輝さんの勧めでキャリーバッグに二本忍ばせてあるけれど、これはいざというときに取っておきたい。


 白部さん、まりあさんも買い終わり、バスのりばへ。


 いやー、もう完全に、コミットのお客さんだなって、わかる人一色! 壮観だなー。なんとなく、記念にパシャリ。


 バスに乗車することができ、ゆらり揺られて会場へ! 乗客で、外が見えないなあ……。下車すると、漫画でおなじみの、あの二つの逆三角の形状が! 東京ギガサイトだ!


 優輝さんに到着を知らせるべく、スマホで電話をかける。


「はーい」


「今、着きましたー」


「お疲れ様です。サークル用出入り口に、さつきを向かわせます」


 というわけで、スマホのWebカタログを頼りに、サークル用の出入り口へ。


 出入り口前で、とんでもない数の大集団を横に見る。地図によると、一般参加者用入り口。優輝さんが、サークル枠で入れてくださらなかったら、あの中で待つハメになってたのか……。


「ここで、待ってればいいんでしょうか?」


「と、思いますけど」


 不安そうなまりあさんに答える。なにしろ、まるで勝手がわからないものだから、彼女同様、不安な気持ちでさつきさんを待つのみ。


「おーい! こっちっすー!」


 さつきさん! 見覚えのある姿に、一同ほっと胸をなでおろす。


「おはようございますっす。じゃあ、さっそく中に入りましょうっすか」


 ご挨拶返しをすると、さつきさんが先導し、係員さんにチケットを見せて私たちを中に招く。


「これがコミットかあ~……」


 いやもう、人人人人人人! さらに人!


「すごいですね……」


「でしょう? でも、一般の入口が開いたら、こんなもんじゃ済まないっすよ。もう、魔境っす」


 さつきさんに所感を漏らすと、なにやらすごいことを言い出す。そうよね。さっきの大集団が、なだれ込んでくるのよね……。


「着いたっす。ここが、自分らの島っす」


 たしかに、長机に囲まれて島っぽい雰囲気のエリアで、残りのお三方とミケちゃんから、「おはよーございます」とお声がけいただく。こちらも、ご挨拶返し。


「どうですか、今の心境は?」


 ふふと、優輝さんが問いかけてくる。


「いやー、すでに緊張してますよ」


「あはは。わかります。あたしらも初心の頃は、そんな感じでした」


 朗らかに笑う彼女。みなさん、荷物を開けて並べているところらしい。


「ええと、サークルとして参加させていただいたわけですけど、私たちは何をすればいいですか?」


「ああ、入場をスムーズにするための方便なので、普通に楽しんでください。あたしらは、基本ここを離れられませんから、案内はできないですけど」


「ありがとうございます。ではさっそくですけど、ゲームを売っていただけますか?」


 お財布を取り出す。


「ありがとうございます! 四千円になります~」


「わたしも、せっかくだし買ってみましょうか」


「まりあさんも、ありがとうございますー!」


 逡巡しゅんじゅんしているのが、白部さん。


「それ、『ラック』で動きますか?」


 ラックというのは、最大シェアを誇るOS『ウィンズ』の、対抗馬ともいうべきOS。


「あー、すみません。ラックはちょっと、対応してないですね」


「そうですか。売上に、ご協力したかったのですけど」


「お気持ち、ありがたく受け取っておきます」


 ぺこりとお辞儀する優輝さん。


「ミケちゃんも、お手伝いするの?」


「そーよ。このプラカード持って、呼び込み」


 猫耳幼女の呼び込み! こういうところに来る人たちには、すごく刺さりそうね! アメリたちも、注目の的だったし。


「もうすぐ、一般開放だね。作業急ごう」


 「おー!」と、作業スピードをアップさせる、かくてるの皆さん。


 もうすぐ開幕かー。ドキドキするな~。

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