神奈さんとアメリちゃん

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第百八十四話 かんなせんせいのかけざんひっさんきょうしつ

公開日時: 2021年4月26日(月) 18:01
文字数:2,571

お雑煮作りの翌お昼下がりに、子供たち三人と白部さんがアメリに誘われて遊びに来ています。


 で、執筆自体にストレスを抱えているわけではないけれど、アメリにお勉強を教えたい欲が強まってしまった私は、三人まとめてお勉強の面倒を見ることにしました。アメリたちもやる気のようで。


 ノーラちゃんだけ猫耳人間化の時期ゆえ勉強が遅れているので、ベッドと下敷き代わりのスケブを使って、足し算と引き算の授業を白部さんとマンツーマンでする様子。


「さてさて、今日は筆算で掛け算する方法を教えちゃうよ!」


 コピー用紙と筆記用具を配布すると、子供たちが真剣な面持ちを向けてくる。


「一応確認だけど、三人とも割り算まではできるよね?」


 こくこくとうなずく三人娘。可愛い。白部さんたちも、背後で授業を始めた模様。


「じゃあ、少し戻って、掛け算を筆算する方法ね」


 すると、「しつもーん」とミケちゃんが挙手する。


「九九は暗記したわよ? 書かなくてもできるわ」


「うん、九九と十掛ける十までは簡単だけどね。じゃあ、ミケちゃん。二十三掛ける五十六は?」


 いきなり問題をぶつけると、「え? え? えっと……」と固まってしまった。


「とまあ、こういう具合に、二桁以上の計算をやるとき役に立つの。じゃあ、やり方を説明していくね」


 紙に横線を引き、その左端上に×、上に8、下に6と書く。


「これが、掛け算のときの筆算の書き方ね。上の数字と下の数字を掛けて、横棒の下に答えを書くの。さあ、いくつかな?」


「四十八!」


 即座に三人がハモる。


「正解です! で、ここからがポイントなんだけど……さっき言った、二十三掛ける五十六の場合ね」


 紙に、先ほどの要領で23×56の筆算式を書く。


「こういう場合はね、まず、三掛ける六を計算するの」


 十の位に1、一の位に8を書く。


「で、次に二掛ける六を十の位から始めて書くの」


 百の位に1、十の位に2を書く。


「今度は、下の五と三を掛けるの。書くのは十の位」


 百の位に1、十の位に5を書く。


「最後は、二掛ける五を百の位から始めて書くのね」


 千の位に1、百の位に0を書く。


「あとは、この四つを足し算! さあいくつになるかな? これを写して解いてみて」


 書かれた数字と式を真似する彼女たち。「えーと……」と言いながら、解いていく。


「千二百八十八……?」


 クロちゃんが不安そうに訊く。


「ピンポンピンポン、大正解~! お見事です、クロちゃん! ほかの二人もできたかな?」


 ミケちゃんとアメリが、次々に「できた!」と口にする。


「あとは、掛け合わせるものが三桁になっても、四桁になっても要領はおんなじ。じゃあ、ちょっと問題集作るね」


 デスクに座り、さくさくと問題を作成してプリントアウト。


「ほい、完成~。じゃあ、みんなやってみよー! わかんないところがあったら質問してね」


 問題用紙を手渡し、仕事に取り掛かる。白部さんの方をちらりと見ると、足し算の練習問題を行っているようだ。


 白部さんの授業と、鉛筆が机に当たる音をBGMにすいすい筆を走らせる。うーん、やっぱり子供たちと触れ合うとはかどる!


「できた!」


 背後で、アメリの元気な声が上がる。


「見て~」


 アメリが用紙を手渡してくるので、採点する。


「うん……うん……。おお、すごい! アメリちゃん、しょっぱな全問正解です!」


 椅子をくるりと回してぱちぱちと拍手すると、「えへへ~」と照れくさそうに自分の後頭部を撫でる。


「むむむ……! 妹には負けてられないわね!」


 ミケちゃん、俄然やる気を出した模様。


「計算はゆっくりでいいよー。ミスしないことが大事」


 そんなミケちゃんを落ち着かせる。


 こうして、ミケちゃんとクロちゃんも無事正解!


「お見事です、三人とも! じゃあ、この後は互いに問題を出し合ってみようか」


 コピー用紙の追加を渡す。


「おお~! やってみる! ミケとクロもやろう!」


「望むところよ!」


 胸を反らし、挑戦を受けて立つ気満々のミケちゃん。


「ボクも頑張る……」


 クロちゃんの士気も高い。良きかな良きかな


 あとは子供たち同士に任せるとして、私は再度お仕事に集中~。


 ちらりと、白部さん組が引き算の授業に入ったのが耳に入った.。


 ペンを走らせることしばし。コーヒー牛乳がなくなっていることに気づく。おかわりついでにみんなの飲み物もれてこようかな。


「飲み物持ってきますね。白部さんは、紅茶とコーヒーどちらがお好きですか?」


「私ですか? 紅茶でお願いします。お手数おかけします」


「いえいえ。では、行ってきます」


 コーヒー牛乳と紅茶をれて、トレイを手に寝室へ。


「はーい、ちょっと休憩しましょ」


 配膳しながら、皆に声をかける。


「ありがとうございます。ノーラちゃんも休憩しましょ」


「おー……頭がフットーしそうだぞー……」


 ノーラちゃん、フラフラ。やっぱりお勉強より運動のほうが性に合ってるのかな。


 みんなでまったりティータイム。


 雑談したところによると、クロちゃんは最近メキメキ将棋の腕を上げているらしい。フリマのとき、ちらりとお話に出た戸成となりさんと、二枚落ちというハンデで悪くない勝負ができるようになってきたとのこと。二枚落ちというのがどのぐらいのものかピンとこないけど。


 そういえば、アメリとミケちゃんは女の子座り、ノーラちゃんはあぐらだけど、クロちゃんは正座だから背筋がピンとしててきれいだな。将棋の成果かしら?


 ミケちゃんはよく、カラオケに連れて行ってもらったり、ダンスゲームに勤しんでいるらしい。ノーラちゃんは、久美さんの手が空いているときに、キャッチボールに付き合ってもらってるみたい。


 みんな、やりたいことがはっきりしてるんだね。アメリはというと、そろそろ新しい児童学習書が欲しいようだ。


「そういえば、猫崎さん。いただいた写真集、大変目の保養になっています」


 ふふと微笑む白部さん。


「ご期待に添えたようで何よりです」


 こちらも微笑み返す。


 こうしてティータイムは和やかに進行し、再度私はお仕事に、子供たちはお勉強に戻ることに。


 その後は根を詰めすぎると良くないということで、子供たちは白部さんを交えながらトランプ遊びに興じ、夕方まで遊んでました。私も、ちょっとだけ参加したり。


 そんなわけで、今日もつつがなく一日が過ぎました。


 子供たちにお勉強を教えて、仕事も進んで、充実した一日だったな。ノーラちゃんも足し算・引き算をなんとか覚えたようで何より。良きかな良きかな

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