神奈さんとアメリちゃん

退会したユーザー ?
退会したユーザー

第百三十六話 ノーラ、再び駅前へ ―前編―

公開日時: 2021年4月24日(土) 17:31
文字数:2,425

「猫崎さんは、今日は何を買われるおつもりなんでしょうか?」


 信号待ち中、後部座席の白部さんが疑問を口にする。まあ、お買い物行きましょうって誘ったの私だし、私の回る店に合わせようということなのでしょう。


「そうですね。百均、トイザウるスおもちゃ屋ハートマン雑貨店麗文堂本屋桜京ストアスーパー……あとは、あめりの服をもう少し買い足そうかな、と」


 実のところ本屋さんにはあまり用がなかったのだけど、白部さんがノーラちゃんのために新しい本を買いたいとおっしゃっていたので、気を使わせても悪いなと思い付け加えておく。


「なるほど、今日はそのあたりを回る感じですか」


「はい。通り道なのでサンチョディスカウントストアに帰り際に寄ってもいいですけど、いかがでしょう?」


「うーん、特に用はないですね」


「了解です」


 信号が青になったので、再発進。アメリはノーラちゃんに、ぶどう狩りや芋掘りなどの体験を楽しそうに語っている。「うわー、アタシもやりてー!」と、うらやましそうなノーラちゃんの声。


 さて、もうすぐ目的地に到着ですよ。



 ◆ ◆ ◆



 毎度おなじみ「るるる」地下駐車場に車を停め、今回は初手からトイザウるスへ。


 華やかなおもちゃ王国に着くと、ノーラちゃんがはしゃいで走り出しそうになるので、白部さんが慌てて抱きとめる。


「こーら、走らないの」


「おー、そうだった!」


 相変わらず落ち着きがないねー。元気なのはいいことだけど。彼女も、もうちょっと経ったらアメリみたいにだいぶ落ち着くのかしら? ……うーん、イメージできない。


「おねーちゃん、ぬいぐるみ見たい!」


 一方、アメリからリクエスト。


「いいよー。白部さんはいかがなさいます?」


「ご一緒させていただきます。いいよね、ノーラちゃん?」


「おー、アメリと一緒ならいいぞー」


 というわけで、ご一緒にぬいぐるみ売り場へ。


「見て! かにざえもん!」


 アメリがカニのぬいぐるみを手に取り、キラキラした瞳を向けてくる。相変わらずなネーミングセンスだこと。


「それが欲しいのね。おっけーおっけー」


 さっそくかごにイン。


「ノーラちゃんは、やっぱりこういうの興味ない?」


「んー……全然」


 一方、ノーラちゃんは白部さんの問いかけにいまいちな反応。


「アメリはもう、欲しいのない?」


「特にないかなー」


 ふむ。アメリのほうはカニぬいで満足した模様。


「猫崎さん、男児向け売り場行きましょうか」


「そうですね」


 というわけで、コーナー移動。


「おー、いつもながらスッゲー!」


 男児玩具売り場に着くと、水を得た魚のようになるノーラちゃん。楽しそうに、おもちゃの物色を始める。しっぽが立ちそうになると、私と白部さんで慌てて隠すのはもはや恒例。


「そういえば、潜水艦を手に入れてからのノーラちゃんの入浴はいかがですか?」


「ありがたいことに、苦手意識がだいぶ薄くなってくれました」


「それは良かったです」


 ふぐたくん魚のおもちゃを手に入れるまで続いた、アメリの入浴難を思い出す。


 アメリ、ノーラちゃん、クロちゃん、ミケちゃん。当たり前だけど、四者四葉でまるで好みが違うのが興味深い。クロちゃんが盆栽に手を出したときは、ちょっと困惑したっけね。


「ルリ姉、これ欲しい! カン姉のとお揃い!」


 熟考した末にノーラちゃんが手に取ったのは、ミニカー。それも、私の車と同じ車種。何の偶然か、色まで一緒。


「へー。ほんとに同じだ」


 思わず、まじまじと見つめてしまう。


「な!」


 にぱっと笑う彼女。


「うん、じゃあそれ買いましょう。ほかに何かほしいのある?」


「んー……今はとりあえずいいや!」


「じゃあ、お会計しましょうか」


 こうして四人でレジへ向かい、清算。


 かにざえもんもそこまで大きくないので、そのまま百均「CANDY」へ。


「お、あったあった」


 手に取ったのは、アナログの置き時計。うちにはデジタル時計しかないので、アメリの教材として前々から欲しかったもの。


 白部さんも、私とは別に店内を回っている。


 時計以外にも細々こまごました物を買い揃え、お会計。白部さんと合流し、子供服のお店へ。


 こちらでは、アメリのために下着や部屋着、外着を買い足していく。うふふ。新しい服を着たアメリの撮影、楽しみだなー。


 白部さんもノーラちゃんの服を買い足されたようで、これでるるる側のお買い物は終わり。トランクに一度荷物を収めた後、駅ビル「ゆらりと」側へと移動するのでした。



 ◆ ◆ ◆



 麗文堂さんで児童書コーナーでまりあさんの著書を見るものの、もう全部買っちゃってるなあ。「うどんのめがみさま」の新作はついこないだ脱稿したばかりなので、まだ発売されていない。


 私自身も特に欲しい本がないので、白部さんのお買い物に同行しつつ、ぶらぶらと平積み本の表紙を眺める。


 白部さんのほうを見ると、ノーラちゃんは「エレメントレンジャー」の写真絵本をまず手に取った模様。続いて子供向けの図鑑コーナーに移ると、ノーラちゃんが「おー! かっけー!」と大声を上げる。


「こら、大声出さないの」


 注意する白部さん。


「ごめん、ルリ姉。でもさ、すっげーかっけーんだもん」


 はて、何に反応したのでしょうと彼女の手元を覗き込むと、手にしているのは恐竜図鑑。ティラノサウルスのアップが表紙。ほんとに、とことん趣味が男の子してるなあ。


「これ欲しい!」


「うん、じゃあそれも買いましょ。他には何かある?」


 ノーラちゃんがさらにコーナーを物色し、「これも!」と手に取ったのは、「はたらくくるまたち」という表題の、パトカーや消防車などが表紙に写っている図鑑。


 なるほど、こういう方向には知的好奇心が働くのねえ。


「了解。じゃあ、これも買いましょう。もうない?」


 さらに書架を眺めたり本を手に取ったりするノーラちゃんだけど、「もうないや!」とのことで、お会計と相成りました。


 続いてゆらりとに移動し、ハートマンでクレヨンを購入。白部さんも、「いいですね」と、スケブとクレヨン、それとノーラちゃんの希望で薄緑基調の子供傘を購入されました。


 これで、回るお店も桜京ストアを残すのみ。さて、今日の晩ごはんは何にしましょうかね。

読み終わったら、ポイントを付けましょう!

ツイート