「猫崎さんは、今日は何を買われるおつもりなんでしょうか?」
信号待ち中、後部座席の白部さんが疑問を口にする。まあ、お買い物行きましょうって誘ったの私だし、私の回る店に合わせようということなのでしょう。
「そうですね。百均、トイザウるス、ハートマン、麗文堂、桜京ストア……あとは、あめりの服をもう少し買い足そうかな、と」
実のところ本屋さんにはあまり用がなかったのだけど、白部さんがノーラちゃんのために新しい本を買いたいと仰っていたので、気を使わせても悪いなと思い付け加えておく。
「なるほど、今日はそのあたりを回る感じですか」
「はい。通り道なのでサンチョに帰り際に寄ってもいいですけど、いかがでしょう?」
「うーん、特に用はないですね」
「了解です」
信号が青になったので、再発進。アメリはノーラちゃんに、ぶどう狩りや芋掘りなどの体験を楽しそうに語っている。「うわー、アタシもやりてー!」と、うらやましそうなノーラちゃんの声。
さて、もうすぐ目的地に到着ですよ。
◆ ◆ ◆
毎度おなじみ「るるる」地下駐車場に車を停め、今回は初手からトイザウるスへ。
華やかなおもちゃ王国に着くと、ノーラちゃんがはしゃいで走り出しそうになるので、白部さんが慌てて抱きとめる。
「こーら、走らないの」
「おー、そうだった!」
相変わらず落ち着きがないねー。元気なのはいいことだけど。彼女も、もうちょっと経ったらアメリみたいにだいぶ落ち着くのかしら? ……うーん、イメージできない。
「おねーちゃん、ぬいぐるみ見たい!」
一方、アメリからリクエスト。
「いいよー。白部さんはいかがなさいます?」
「ご一緒させていただきます。いいよね、ノーラちゃん?」
「おー、アメリと一緒ならいいぞー」
というわけで、ご一緒にぬいぐるみ売り場へ。
「見て! かにざえもん!」
アメリがカニのぬいぐるみを手に取り、キラキラした瞳を向けてくる。相変わらずなネーミングセンスだこと。
「それが欲しいのね。おっけーおっけー」
さっそくかごにイン。
「ノーラちゃんは、やっぱりこういうの興味ない?」
「んー……全然」
一方、ノーラちゃんは白部さんの問いかけにいまいちな反応。
「アメリはもう、欲しいのない?」
「特にないかなー」
ふむ。アメリのほうはカニぬいで満足した模様。
「猫崎さん、男児向け売り場行きましょうか」
「そうですね」
というわけで、コーナー移動。
「おー、いつもながらスッゲー!」
男児玩具売り場に着くと、水を得た魚のようになるノーラちゃん。楽しそうに、おもちゃの物色を始める。しっぽが立ちそうになると、私と白部さんで慌てて隠すのはもはや恒例。
「そういえば、潜水艦を手に入れてからのノーラちゃんの入浴はいかがですか?」
「ありがたいことに、苦手意識がだいぶ薄くなってくれました」
「それは良かったです」
ふぐたくんを手に入れるまで続いた、アメリの入浴難を思い出す。
アメリ、ノーラちゃん、クロちゃん、ミケちゃん。当たり前だけど、四者四葉でまるで好みが違うのが興味深い。クロちゃんが盆栽に手を出したときは、ちょっと困惑したっけね。
「ルリ姉、これ欲しい! カン姉のとお揃い!」
熟考した末にノーラちゃんが手に取ったのは、ミニカー。それも、私の車と同じ車種。何の偶然か、色まで一緒。
「へー。ほんとに同じだ」
思わず、まじまじと見つめてしまう。
「な!」
にぱっと笑う彼女。
「うん、じゃあそれ買いましょう。ほかに何かほしいのある?」
「んー……今はとりあえずいいや!」
「じゃあ、お会計しましょうか」
こうして四人でレジへ向かい、清算。
かにざえもんもそこまで大きくないので、そのまま百均「CANDY」へ。
「お、あったあった」
手に取ったのは、アナログの置き時計。うちにはデジタル時計しかないので、アメリの教材として前々から欲しかったもの。
白部さんも、私とは別に店内を回っている。
時計以外にも細々した物を買い揃え、お会計。白部さんと合流し、子供服のお店へ。
こちらでは、アメリのために下着や部屋着、外着を買い足していく。うふふ。新しい服を着たアメリの撮影、楽しみだなー。
白部さんもノーラちゃんの服を買い足されたようで、これでるるる側のお買い物は終わり。トランクに一度荷物を収めた後、駅ビル「ゆらりと」側へと移動するのでした。
◆ ◆ ◆
麗文堂さんで児童書コーナーでまりあさんの著書を見るものの、もう全部買っちゃってるなあ。「うどんのめがみさま」の新作はついこないだ脱稿したばかりなので、まだ発売されていない。
私自身も特に欲しい本がないので、白部さんのお買い物に同行しつつ、ぶらぶらと平積み本の表紙を眺める。
白部さんのほうを見ると、ノーラちゃんは「エレメントレンジャー」の写真絵本をまず手に取った模様。続いて子供向けの図鑑コーナーに移ると、ノーラちゃんが「おー! かっけー!」と大声を上げる。
「こら、大声出さないの」
注意する白部さん。
「ごめん、ルリ姉。でもさ、すっげーかっけーんだもん」
はて、何に反応したのでしょうと彼女の手元を覗き込むと、手にしているのは恐竜図鑑。ティラノサウルスのアップが表紙。ほんとに、とことん趣味が男の子してるなあ。
「これ欲しい!」
「うん、じゃあそれも買いましょ。他には何かある?」
ノーラちゃんがさらにコーナーを物色し、「これも!」と手に取ったのは、「はたらくくるまたち」という表題の、パトカーや消防車などが表紙に写っている図鑑。
なるほど、こういう方向には知的好奇心が働くのねえ。
「了解。じゃあ、これも買いましょう。もうない?」
さらに書架を眺めたり本を手に取ったりするノーラちゃんだけど、「もうないや!」とのことで、お会計と相成りました。
続いてゆらりとに移動し、ハートマンでクレヨンを購入。白部さんも、「いいですね」と、スケブとクレヨン、それとノーラちゃんの希望で薄緑基調の子供傘を購入されました。
これで、回るお店も桜京ストアを残すのみ。さて、今日の晩ごはんは何にしましょうかね。
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