神奈さんとアメリちゃん

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第百十三話 ホリホリ! お芋さん掘り!

公開日時: 2021年4月23日(金) 22:01
更新日時: 2022年3月19日(土) 13:37
文字数:2,127

時計の針はくるくると回っていき、アメリとノーラちゃんの再会からはや五日。アメリの新たな予防接種と各種検査も終わり、まりあさんもすっかり完調ということで、お昼下がりにお隣K市にあるさつま芋農園の芋掘り体験会に来ています!


 お芋掘りということで、子供たち以外は皆作業用のスポーツウェアやジャージ、スウェットなどのラフな格好。手には軍手とスコップ。ちなみに、私もスウェットです。高校時代のジャージなんて、故郷に置いたままだからねー。


「今日はよろしくお願いしまーす!」


 皆で、農家のおじさんにご挨拶。


「はーい、よろしくー。子供さんたちは、芋掘りに参加しないのかな?」


「あー、ちょっと事情がありまして……見学なんです」


 うーん、言うに言えない猫耳しっぽの秘密。


「了解、了解。じゃあ、お嬢ちゃんたちは見ててね。手本見せるよ。まず、つる・・の上のほう取っちゃってさ、こうやって、周りを丁寧に掘っていって……」


 おじさんが、つるの残り周辺の土を優しくスコップで掘っていく。


「で、このぐらいね。このぐらい掘ったら、こう、抜くの……よっと!」


 ずぼっとお芋が抜ける。一同、「おお~!」と拍手。案外深く掘らないのね。子供のとき以来だから、全然覚えてなかったわ……。


「やー、これ収穫期には全部手作業で抜いてるんすか。重労働っすね~」


 さつきさんが舌を巻く。


「まあねー。でも、長年やってるからね。慣れたよ。それじゃあ、始めましょう」


 「はーい」と、別々の株に散る一同。


 堀り堀り……掘り掘り……いやー、土掘るだけでももう汗だく。ええと、このぐらい掘ればいいんだったかな?


「せーのー……よっとぉ!」


 おお、抜けた抜けた! 隣で見守っていたアメリが、「おお~!」と声を上げる。


 ふー、腰がさっそく痛い。お次の株はっと……ふとアメリを見ると、文字通り指をくわえて見ている。


 う~……。


「よっし、アメリ! 服の泥汚れぐらいきれいにしてあげる! だから、アメリもやろう!」


 すると、顔をぱあっと輝かせ、「うん!」と元気良くうなずく。というわけで、軍手とスコップを手渡し、選手交代。ちょっと軍手が大きいけど、しゃーなしだね。


 一所懸命土を掘ってお芋を露出させたものの、抜くのに苦労中。


「アメリ、一緒に抜こ」


「うん!」


 二人で茎を持ち、力を合わせて引っ張ると、ずぼっ! と景気よく抜けました!


「おお~……! 抜けた!」


 お陽様のような笑顔を向けてくるので、「やったねー」とキャスケット越しに頭を撫でると、「うにゅう」と気の抜けた声を上げる。


 ミケちゃんとクロちゃんも、アメリの芋掘り参戦を見て優輝さんとまりあさんに話しかけ、芋掘りに参加! 良きかな良きかな


 こうして、楽しいお芋掘りは進んでいきました。



 ◆ ◆ ◆



「いやー、疲れました~。ほんと、漫画家の体力の無さを痛感しましたよ」


 帰りの車内で、助手席のまりあさんに話しかける。ミケちゃんもこちら側に同乗していて、子供同士例によって、よくわからない珍映画の話に花を咲かせている。


「わたしもくたくたです~。畑仕事って大変なんですねえ。お花の世話の、十倍ぐらい疲れた気がします」


 まりあさんも自分の体力のなさに苦笑。やっぱりというか、お芋掘りが終わってピンピンしてたのは久美さんだけでした。


 運転することしばし、後部座席が静かなことにふと気付く。バックミラーで様子を見ると、三人娘がすやすやと眠りこんでいました。ふふ、疲れて寝ちゃったのね。


「子供たち、寝ちゃいましたね。静かにして、寝かせてあげましょうか」


「そうですね」


 こうしてしめやかに宇多野家にたどり着き、まりあさんとクロちゃんを降ろすと別れを告げ、自宅へと戻りました。



 ◆ ◆ ◆



「ミケ、眠そうだねー。ありがとうございました」


 家についたら、もう夕刻。かくてるハウスの門前で、うつらうつらしているミケちゃんの頭をキャスケット越しに撫でながら、微笑んで私にお礼を述べる優輝さん。


「ふふ、みんな一所懸命掘ってましたものね」


「実のところ、あたしもちょっとグロッキー気味で……。では、失礼しますね」


 優輝さんも体力の無さを思い知った口なので、苦笑しながらも別れを告げミケちゃんを支えながら邸内に戻っていく。


 すると、隣で大あくび。


「アメリも眠そうだねー。お風呂だけ入ったら、寝ちゃおうね」


「うん……」


 アメリも、立ちながら船を漕ぎ始めている。一緒に家に帰ったら、服を泥汚れに強い洗剤で洗いながら入浴。ああ、私も湯船で寝落ちしそう……。


 頑張ってアメリを着替えさせベッドに横にならせると、あっという間に眠りに落ちてしまった。ふわあ……私も、乾燥が終わったら取り込んで寝ちゃおう。



 ◆ ◆ ◆



 もみもみ……もみもみ……。


 お~……アメリのもみもみアタック。もう朝か~。


「ん……アメリ、おはよー」


 あー、よく寝た。


「おねーちゃん、お腹空いたー」


「そうね、晩ごはん食べずに寝ちゃったものね~。じゃあ、ごはんにしましょーねー」


 熟睡しても朝の弱さは変わらず。凝った料理を作れるほど頭がしゃっきりしていないし、何よりふたりともお腹ペコペコなので、雑にトーストと牛乳で朝食は済ませました。お芋の調理、時間かかるからね。


 お芋は十分じゅうぶんすぎるほど採れたから、色々作れるなー。白部さんやご近所さんにもおすそ分けしましょ。

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