神奈さんとアメリちゃん

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第四百七十四話 意外なお客さん! ―前編―

公開日時: 2022年1月23日(日) 21:01
文字数:2,874

 今日も、ミケちゃんとクロちゃんが来る日。白部さんがいないと、お勉強会ができないのがネックね。繁忙期を、抜けさえすれば……。あと、一息なんだけどなー。


 今回はクロちゃんが早めに到着していて、ミケちゃんを待つだけだけど……。


 お、呼び鈴。


「はーい。どちら様ですかー?」


 一応確認しないとね。


「どうもー。わたしです、由香里です。ミケちゃんも一緒ですよ」


 あら、送りに同行とは、最近では珍しい。とりあえず、出ましょ。


「こんにちは」


 三者互いにご挨拶。相変わらず、二人ともおしゃれな服装ね。ミケちゃん、ツーサイドアップから、左右に黒いリボンに変えてる。


「由香里さん、お送りお疲れ様です。じゃあ、中に行こうか、ミケちゃん」


「あのー、すみません」


「はい?」


 由香里さんに呼び止められる。


「わたしも、お邪魔してよろしいでしょうか?」


「はい?」


 さっきと違い、若干「い」が上がったイントネーションで聞き返してしまう。


「ご迷惑でしょうか?」


「いえ! そんなことは! 変な声出してすみません。ご多忙な時期でしょうにと思って……」


「あー、だからこそでして……」


 うーん、なんだかよくわからないけど、この日差しの中、立ち話させるもんじゃないね。


「わかりました、中へどうぞ」


 というわけで、二人を招き入れました。



 ◆ ◆ ◆



「こちら、飲み物と菓子です」


「すみません、わざわざ」


 由香里さんから、ビニール袋を渡される。また、いただきものをしてしまった。お返ししないとなあ。


「あ、気になさらないでくださいね。私も押しかける、ご迷惑代的に考えていただければ」


「いえいえ、迷惑だなんてそんな! とりあえず、こちらご用意させていただきますね。お先に、寝室で待っていてください」


「はい。ありがとうございます」


 どうも、調子狂うな。由香里さんといえば、かくてるの大黒柱。うちにいらしてて、大丈夫なのかしら?


 ソツのない彼女が、無計画にサボるとも思えないし。なんか事情がありそうな。


 でも、私から深堀りするもんじゃないよね。事情があるなら、彼女が話すまで待とう。


 トレイにパッキーチョコ菓子とそれぞれのドリンクを乗せて、リビングを通りかかると、由香里さんがトマト&バジルを眺めてました。


「どうされました? 何か気になることでも?」


「あ、いえ。これ、収穫どきですね。早めに摘んだほうがいいですよ」


 トマトを手に取り、つぶやく彼女。


「そうなんですか? あとで、そうしますね。飲み物とお菓子用意できましたので、寝室へ行きませんか?」


「そうですね。よく育ってたので、つい見とれてしまって」


「ありがとうございます」


 褒められてしまった。それはさておき、寝室へ。


 中に入ると、三人娘が最近のレッスンなどの、進み具合を話し合ってたようです。そういえばこの三人、趣味がバラバラなのよねー。


「いやー、ここも、仕事場を拝見して以来ですねー」


 懐かしそうに、あたりを見回す彼女。


 配膳も終わったので、「では、失礼してデスクに」と言って、仕事を再開する。


「実はわたし、失敗しちゃいまして」


「えっ!?」


 突然語られる、重そうな話にびっくり。


「データを破壊しちゃった……とかですか!?」


「あ、いえ。そんな大げさなのじゃないんですけど、細かい凡ミスが続きまして」


「そーなのよ。こないだの料理とか、由香里にしてはビミョーなデキだったわ」


 ミケちゃんが話に入ってくる。


「まあ、そんな感じで。わたし、家事炊事がストレス発散法なんですけど、それですらミスが目立って。『いっそ、丸一日羽根を伸ばしてきなよ』って、優輝ちゃんに勧められたんです」


 ははあ、そういうことだったのね。


「そんなわけで、お邪魔した次第なんです」


「そういうことでしたら、ごゆっくりなさっていってください。あまりお構いできなくて、恐縮ですが」


「いえいえ。こうしているだけで、結構気が休まります」


 ボトルを開ける音が聞こえる。彼女の好きな、オレンジジュースを飲んでるみたい。


「おお~。じゃあ、『大航海世代』やる? 由香里おねーちゃん」


「いいよー。みんなもやる?」


 「やるやる」と、ミケちゃん、クロちゃんも同意。四人でゲームを始めました。


 彼女、ゆっくりできるといいな。



 ◆ ◆ ◆



「由香里、強い~」


 ミケちゃんが、うにゃあって感じの声を上げる。


 ちょいと画面を見てみると、由香里さん圧勝。


「お上手ですね~」


 思わず感服。


「いえいえ。運が良かっただけですよ。もう一回やる?」


 「うん!」と子供たち同意。良きかな良きかな



 ◆ ◆ ◆



「む~……。さっきから、全っ然由香里に勝てないわ……」


 不満げな声を出すミケちゃん。


「ちょっと、ガチ・・にやりすぎたかな……」


 ふーむ。運の要素が強いゲームだけど、戦略・戦術が物を言う部分もあるからねー。かといって手を抜くと、それはそれで、ミケちゃんムキになりそうだし。


「すみません、由香里お姉さん。ハンディキャップつけてもらえますか? ボク、勝ち目ないです」


 ここで、クロちゃんのさりげないアシスト。プライドの高いミケちゃんに代わり、ハンディキャップマッチを申請。


「じゃあ、初期資金……このぐらいかな。少なくしてスタートするね」


「ありがとうございます」


 というわけで、ゲーム再開。



 ◆ ◆ ◆



「やったわ! 優勝よー!」


 ミケちゃんのシャウト。一同から拍手が飛ぶ。私も拍手。


「おめでとー」


「まーね。ちょっとホンキを出せば、こんなもんよ」


 顔は見えないけど、胸を反らしてるのがわかる。きっと、ドヤ顔を決めていることでしょう。


「ミケちゃん、上手だねー」


 由香里さんも賞賛。


「むう。ハンデつけた由香里に言われてもなー……。とりあえず、休憩しない? 目が疲れちゃった」


「アメリもー」


「じゃあ、休憩しましょ」


 というわけで、休憩タイム。私も、ちょっと休憩するか。疲れ目の目薬、注そ。


「疲れ目の目薬、みんなも使う?」


 「使うー」と、子供たち。由香里さんも、「お借りします」と、注し回していきます。


 「ありがとうございました」と、由香里さんが返しに来ようとするけど、「せっかくなので、そちらで話の輪に入らせていただきます」と、自分から出向きました。


「どうでしょう? 疲労というか、ストレスというか、そういうのは少しでも抜けた感じですか?」


「はい、おかげさまで。ただ、調子が戻ってきたせいか、なんだか料理がしたくなってきてしまいました。あの、差し支えなかったら、さっきのトマトとバジルで、サラダ作らせてもらえませんか?」


 ひょ。また、突飛なお申し出を。でも、どうせ私たち二人だと、持て余す量だしなー。


「では、お願いできますか? あ、良ければ摘み方教えて下さい」


「いいですよー」


 というわけで、レクチャーを受けながら、チョキンチョキンとハサミで切っていく。ふう。なかなか大変だな。子供たちは、後ろで見学。途中、自分もやってみたいと言うので、交代したり。


「……終わりましたー」


 とれとれのトマトと、バジルがジャーン!


「お疲れ様です。では、お台所お借りしますね」


「調理器具とか、調味料の説明はおまかせを~」


 彼女を先頭に、みんなでぞろぞろ。


 とれたて野菜と、由香里さんの腕前の、奇跡のマリアージュに期待。


 続く!

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