神奈さんとアメリちゃん

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おまけ編・その三 白部さんとノーラ

公開日時: 2022年4月24日(日) 21:01
文字数:1,590

 サッカーの練習試合も終わり、一緒にF駅を経由して帰宅中。練習場は近くにパーキングがないので、バス利用。


 バッグに入れたビデオカメラには、ノーラちゃんのかっこ可愛い活躍……もとい、貴重なデータが入っている。


 今では初期の悪癖もすっかりなくなり、チームプレイに注力するようになった。


 監督さんの評によれば、パス回しにとても光るものがあるらしい。それは、素人目にもなんとなくわかる。


 この子は、夢を実現できるのだろうか。


 もちろん、ノーラちゃんは頑張っている。座席で、船を漕ぎそうになるほどに、へとへとだ。


 あとは、研究者である私がどこまで頑張れるか、かな。



 ◆ ◆ ◆



 うつらうつらしているノーラちゃんの手を引き、我が家へ。


 お世辞にも広いとはいえないけど、とりあえずはここで暮らすほかない。まさか、二人暮らしになるとは想定してなかったものねえ。


 私も、医者とはいっても勤め人で、まだ駆け出し。ここへ越してくるだけでも、だいぶお金を使ってしまっている。


 親に頼めば援助してくれるだろうけど、医大に通わせてもらった上で、そこまでしてもらうのは忍びない。大学も、早く無償化してほしいものだけど。


 両親は、いつでもノーラちゃんを連れて、実家に戻ってきていいと言うものの、猫耳人間四人が揃う、この奇跡的なご近所を去るのも、もったいない。


「ただいまー。ほら、ノーラちゃんも」


「おー……ただいまー……」


 ほんと疲れちゃってるのね。今日も、頑張ってたものねえ。


「お風呂だけ入っちゃったら、一眠りしていいからね。一緒に入りましょう?」


「おー……? ちょっと恥ずかしいぞー。一人で入れる~」


 あら寂しい。最近、一緒に入ってくれないのよね。まあ、二人で入るには、狭いお風呂なのだけど。


「わかった。じゃあ、お湯だけ張っちゃうから、ユニフォーム脱いでね」


「お~……」


 のそのそと、寝室へ向かう愛娘。大丈夫かな?


 お湯を張り、寝室に入ると、ノーラちゃんが下着姿で床寝してました。


「こーら。そんな姿で寝ないの! すぐにお湯溜まるから、あとちょっと我慢!」


「おー……」


 さっきから、「おー」ばっかり。思考力落ちちゃってるのね。


 とりあえずお湯が溜まったので、入ってもらう。


 ノーラちゃんが上がったら、私の番だ。



 ◆ ◆ ◆



 ……遅いな。出てくるのが遅い。


 ……。


 まさか!


 急いで、浴室のドアを開ける!


「大丈夫!?」


「わあ! 急に開けないでくれえ!」


 湯船で身を縮こまらせる彼女。


「大丈夫!? 寝落ちしてない!?」


「してないから安心してくれー! キモチ良かっただけだー! 恥ずかしいから出てってくれよなー」


「あ、うん。ごめんね。寝落ちだけはほんと、気をつけてね」


 そう言い残し、ドアを閉める。ふう、大事になってなかったようで一安心。



 ◆ ◆ ◆



「う~! キモチ良かった~!」


 ノーラちゃんが、部屋着になって寝室に戻ってくる。


「いらっしゃい。ドライヤーかけてあげる」


「おー」


 少し、元気が戻ったかな?


 ドライヤーで乾かすと、ふさふさの毛並みが戻ってきた。


「いつもの、やっていい?」


「いいぞー」


 すうう~と、愛娘の頭部の匂いを吸引。シャンプーの香りとともに、子供独特の柔らかい匂いを感じ取る。ああ、至福の時間。


「ぎゅ~って、していい?」


「そっちも、好きにしていいぞー」


 ぎゅーっと、背後からハグ。最高の抱き心地!


 まだ、こういうことを存分にさせてもらえるのは、ありがたいなあ。


 猫崎さんが不安がっていたことだけど、いつかこういうことができなくなる日が、きっと来ることだろう。それまで、心ゆくまでこの感触と香りを楽しみたいと思う。


 すると不意に、ノーラちゃんの体から力が抜けた!


「ノーラちゃん!?」


 寝息を立てている。ああ、限界が来ちゃったのね。


「せめて、ベッドで寝ましょ」


 揺すり起こして、むにゃむにゃいう娘をベッドに潜り込ませる。


 おやすみなさい、愛しいノーラちゃん。起きたら、美味しいチキンステーキが待ってるからね!

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