私はルビ振りフィニッシュ中。アメリはスポンジ・トムの視聴中。スポンジ・トムの終了を待って、単行本二巻ぶんの紙束を持って対面に座る。
「はーい、二冊目だよー」
「おお~、続きだ! おねーちゃん、ありがとう!」
キラキラと瞳を輝かせて表紙を眺めるアメリ。ふふ、可愛いなあ。
見ているだけでこちらも幸せだけれど、アメリの勉強を次にステップアップさせてあげたい。
「ところで、それ読む前に新しい勉強覚えたい?」
「おお!? 今度は何?」
顔をがばっと上げて、興味津々に見つめてくる。本当に向学心が強いなあ。
「分数っていってね。物を分けて考えるときに便利なんだ」
「おお~……」と、新たな知識の地平に心躍らせる彼女。
「じゃあ、準備するね。ブロック借りていいかな?」
「いいよー」
アメリちゃんからご承諾いただいたので、ブロックを箱からいくつか取り出す。「さかなのおうち」を筆頭に、見覚えのある謎オブジェがチラホラ。
それらには手を付けずに、余っているブロックを接合する。
「さて、アメリちゃん。ここにひと塊のブロックがありますね?」
「うん」
「これをこうやって……外すと、半分になるね?」
ブロックを外して一個ずつにすると、こくこく頷くアメリ。
「半分ずつになったこれをね、分数っていうので二分の一って表現するんだ。字で書くとこうなるの」
白紙のコピー用紙に、鉛筆で横棒と、上下に1と2を書く。
「横棒の下が分母、上が分子っていってね。一つのものを下のぶんで分けたうち、上のぶんがありますよーって意味なのね」
「おお~……」と、感心のため息を漏らすアメリ。
「じゃあ、この場合を見てみようか」
ブロック三個を接合する。
「このひと塊から、一個外しまーす。さあ、それぞれ何分のいくつかな?」
えーとえーと……と悩み、「三分の一と三分の二?」と自信なさそうに回答するアメリ。
「大せいかーい!」
パチパチと拍手すると、「おお~! 当たった!」と瞳を輝かせる。
「分数はね、こうやって一つのものがいくつに分かれて、そのうちどれぐらいあるかっていうのがわかるんだ。じゃあ、アメリちゃん。これを五分の二と五分の三にしてくれるかな?」
五つを接合したブロックを手渡すと、即座に二つと三つに分ける。
「すごーい! さっすが、アメリちゃん! 大正解!」
頭をわしゃわしゃ撫でると、「うにゅう」という気抜け声を上げる。
「じゃあこの紙に、字で五分の二って書いてみてくれるかな?」
先ほどの紙と鉛筆を手渡すと、横棒を引き、下に5、上に2を書く彼女。
「すごい、すごい! またまた大正解! かわいいい、かしこい、アメリちゃん!!」
パチパチと拍手すると、照れくさそうに自分の後頭部を撫で、「うにゅう~……」と、さらにとろけた気抜け声を上げる。
「で、ここがポイントなのだけど、この五分の二と五分の三のブロックをもう一度くっつけると、ひと塊に戻るね? つまり、分母と分子が同じになったら、それは一と同じなんだ」
「おお~……!」
「よし、簡単な分数の足し算をしてみようか。このブロックを五分の二を二つと五分の一を一つに分けて……。さて、このうち、五分の二のを二つくっつけると、五分の何になるかな?」
「……五分の四?」
「だーいせーいかーい!! ほんとにすごいです、アメリちゃん!!」
今まで以上の勢いで拍手。さらにとろけるアメリ。
「じゃあ、今度は引き算だ! この五分の四から、五分の一を取ったらどうなるかな?」
「五分の三!」
自信満々な回答!
「ピンポンピンポン! これまた大正解!! さっすが、アメリちゃん!」
頭を撫でまくると、もうぐにゃぐにゃなぐらいとろけ、「うにゅう~~……」と、気抜け声でつぶやく。ふふ、べた褒めしすぎで照れくさいのかな。でも、ほんとにすごいんだもの。
「ちなみに、式で書くとこんな感じになるのね」
長い横棒の下に5、上に2+2。もう一個、長い横棒の下に5、上に4-1と書く。
「これが、分数の足し算と引き算の書き方ね。この先ちょーっとややこしくなっていくけど、もうすぐ九時だし、今日はここまで! 勉強、お疲れ様でした!」
「おおー! 次も頑張る!」
拳を突き上げ、気合十分なアメリ。そんな彼女の頭を撫でると、またもや「うにゅう~」ととろける。
今日はもう遅いから、ストレッチはお休みかな。まあ、お隣でダンスしまくったし、カロリーは十分消費できてるからきっとよし!
アメリを寝かしつけ、デスクのライトのみにしてプロット作業に取り掛かる。お仕事お仕事!
今回は、かくてるハウスならぬみるきーハウスの四人と一匹と、さらなる親交を深めるお話。今回でみるきーハウス編は一回終わらせ、まりあさんとクロちゃんの劇中キャラ……名前は未定だけど、そちらにスポットが移る。
今まで基本的に、私とアメリの一対一の関係が続いてきた「あめりにっき」において、こうして次々と新たな人物と猫が出てくるのは大きな変化だ。よく考えると、すごい大冒険だったなあ。
ただの日常である史実と違い、あめりにっきにする際はそれなりに物語性が必要になる。ここが漫画家としての腕の見せ所。明日には真留さんに送信して、打ち合わせの準備を進めたい。頑張るぞー!
読み終わったら、ポイントを付けましょう!