「お邪魔しまーす。こんにちはー」
今日は、流しそうめんの日。お隣の門が開きっぱなしになっていて、中を覗くと、皆さんでわちゃわちゃとお庭でなにかしているので、入ってみました。
「あ、神奈さん、アメリちゃんいらっしゃーい! こんにちはー」
優輝さんが気づき、ご挨拶。すでに私たち以外集まっていて、ほかの方々からもご挨拶されました。
「おお、流しそうめんマシーンですね!」
かくてるの皆さん……由香里さんがいないけど、残りのお三方が「流しそうめん器」の調整をしていました。
緩い傾斜のついた竹樋の先に、ザルとバケツがセットされています。
しかし、竹が長いな。私たち、大人数だものねえ。
「はい。今日のために、みんなで作ったんですよ。さつきー、水流してー」
「りょーかいっす~」
二リッターペットボトルの水を流す、さつきさん。おおう、いい感じに流れてますね!
「うん。調整はバッチリ! 実際流すのが楽しみですねえ!」
満足そうな笑みを浮かべて、身を起こす優輝さん。
「由香里さんはどちらに?」
「そうめん茹でてます。装置のほうはこれでいいから、めんつゆと追加の水、持ってきますかね」
「それなら、ウチがやるわ。力仕事は任せとけ。そん代わり、テーブル用意しといてくれ」
「あいあいさー!」
敬礼して、屋内に向かう久美さんを見送る、我らが進行役。
「じゃ、用意しようか」
「らじゃーっすー」
バンからテーブルを出し、プラスチックカップを用意するお二人。
「私も、なにか手伝いましょうか?」
「あ、これでだいたい、こっちの作業終わりです。あとは、久美さんと由香里を待つだけですね」
おお、手際がよろしいですねえ。
しばし談笑していると、由香里さんと久美さんが、手鍋やボトルを手に、こっちにやって来ます。
「こんにちは。お待たせしましたー」
一同、由香里さんにご挨拶。久美さんが、めんつゆをプラスチックカップに入れ、配ってくださいます。
「めんつゆ、行き渡りました? いいみたいですね。じゃ、暑いしさっそく始めますか。あたしが水流すから、由香里はそうめんお願い」
「おっけー」
「それじゃー、いただきます!」
優輝さんの音頭取りで、一同、いただきますの合唱。
背の高い順に、上段から並んでいます。もちろん、最後尾はともちゃん。
「じゃ、流しますよー」
ペットボトルから水を流し、そこに由香里さんが、手鍋からそうめんを投入!
「では、まず一番手前のぼくが。すみませんね」
そう言って、ひょいとそうめんを取る良夫さん。
ずずずーっと勢いよくすする彼。やーん、美味しそう~。
「まだ、たくさんありますからねー」
第二弾投入! これは、白部さんがゲット。
こうして、わんこそばならぬ、わんこそうめんのように、次々にそうめんが流されていきます。
お、来た来た! ひょい。ずずずー……っ。うーん、美味し~!
「おお~……こっちに来ない……」
「ごめんねー。そろそろそっち行くからー」
しょんぼりアメリちゃんに、声をかける。
子供組のほうまで流れていったので、ミケちゃんがゲット! 「おお~……」と、またもしょんぼりなアメリちゃん。
「だって、背の高い順に取らないとだもの。そろそろアメリの番よ」
ミケちゃんの言う通り、クロちゃんの次は、アメリに流れていきました。
「おお!」
なんとか、タイミングよく摘む愛娘。ずずずーっと勢いよくすすり、「んーっ!」っと、嬉しそうに唸ります。
「美味しい!」
瞳キラキラ。良き哉良き哉。
「まだまだいくよー」
ペットボトルを取り替え、新しい水を流す優輝さん。そうめんが、どんぶらこっこと流れてくるので、順に取っていきます。たまに、ともちゃんが取りそこねた麺が、ザルに入ったり。あとでリサイクルかな。
「久美さん、さつきー。そろそろ交代~」
「りょーかーい」
「かしこまりっすー」
選手交代。凸凹コンビが流し手に。
こうして手鍋のそうめんが切れたら、ザルに落ちたそうめんを回収。これをまた、流します。
「おかわり取ってきますねー」
「じゃ、ウチは水の換えを」
「お願いしまーす。じゃ、二人が戻ってくるまでの間、雑談でも」
ホストとして、おもしろ雑学を披露する優輝さん。相変わらず、トークが上手い。
中世ヨーロッパでは、固ーいパンをお皿代わりにして、最後に食べてたんですって! へー!
「おまっとさーん」
お二人が戻ってきたので、流しそうめん再開!
再び、流し手は優輝さんと由香里さんになり、みんなで美味しくいただいていきます。
こんな感じで五巡する頃には、もうお腹いっぱい! 体格の小さい子供たちは、とっくにギブアップ状態。
「私、ギブアップです。ごちそうさまでしたー」
挙手して宣言。あー、食べた食べたー。
「なにか、手伝えることないですか?」
「ほかの皆さんも、そろそろ終わりっぽいですね。特にないので大丈夫ですよ」
「ぼくも、ごちそうさまです」
ややあって、良夫さんもギブアップして、これで全員ごちそうさま宣言状態。
「お疲れ様でしたー。じゃ、残ったそうめんは、適当にあとで、あたしらが食べますね」
片付けに入る、かくてるの皆さん。
「ええと、なにか手伝えること、ないものでしょうか?」
いただきっぱなしが居心地悪い性分なのと、手持ち無沙汰なので、改めて尋ねる。
「そうですねえ……。バケツの水を、あそこの蛇口のところに、捨てていただけますか?」
優輝さんが指差した先に、洗車ホースの付いた蛇口と、格子が見える。
「はーい」
役に立てるって、いいですねえ。かくてるの皆さんにはお世話になってばかりだから、せめてこれぐらいお返ししないと。
……だばーっ! ヨシ!
「捨ててきましたー。あと、もうないです?」
「いえいえ、そこまで気を使っていただかなくても。大丈夫ですよ」
そうめん器を分解しながら、遠慮がちに仰る優輝さん。うーん、これは逆に気を使わせちゃってるかな?
「わかりました。子供たちの相手してますね。みんな、流しそうめんどうだった?」
「取りにくい! でも、美味しかった!」
ともちゃんの、率直な感想。まだ、五歳だもんねえ。
「ボクは、面白かったです。日本のこういう文化、いいですね」
さすが、和ガール。
「なかなか面白かったわ。また来年もやりたいわね」
「アタシも!」
「アメリも面白かった!」
概ね好評なようで、良き哉良き哉。
「ふう。あとは器材をしまうだけですけど、せっかくですから、食後のお茶でもいかがです?」
優輝さんから、ご提案。
「あら、いいんですか?」
「イベントは、楽しめるときに楽しみ尽くさなきゃです!」
お仕事あるけど、一杯いただくぐらいなら大丈夫かな?
「では、いただきますね」
「そうこなくっちゃ!」
こうして、食後のお茶会を楽しむ私たちでした。
日差しが強かったけど、その中でやる流しそうめん、絶品だったな。本当に、人を楽しませるのがお好きなんだな、かくてるの皆さんは。
楽しい隣人たちのおかげで、この一年、本当に充実してたなあ。実に、良き哉!
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