神奈さんとアメリちゃん

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第五百六話 納涼! 流しそうめん!

公開日時: 2022年2月24日(木) 21:01
文字数:2,782

「お邪魔しまーす。こんにちはー」


 今日は、流しそうめんの日。お隣の門が開きっぱなしになっていて、中を覗くと、皆さんでわちゃわちゃとお庭でなにかしているので、入ってみました。


「あ、神奈さん、アメリちゃんいらっしゃーい! こんにちはー」


 優輝さんが気づき、ご挨拶。すでに私たち以外集まっていて、ほかの方々からもご挨拶されました。


「おお、流しそうめんマシーンですね!」


 かくてるの皆さん……由香里さんがいないけど、残りのお三方が「流しそうめん器」の調整をしていました。


 緩い傾斜のついた竹樋たけどいの先に、ザルとバケツがセットされています。


 しかし、竹が長いな。私たち、大人数だものねえ。


「はい。今日のために、みんなで作ったんですよ。さつきー、水流してー」


「りょーかいっす~」


 二リッターペットボトルの水を流す、さつきさん。おおう、いい感じに流れてますね!


「うん。調整はバッチリ! 実際流すのが楽しみですねえ!」


 満足そうな笑みを浮かべて、身を起こす優輝さん。


「由香里さんはどちらに?」


「そうめん茹でてます。装置のほうはこれでいいから、めんつゆと追加の水、持ってきますかね」


「それなら、ウチがやるわ。力仕事は任せとけ。そん代わり、テーブル用意しといてくれ」


「あいあいさー!」


 敬礼して、屋内に向かう久美さんを見送る、我らが進行役。


「じゃ、用意しようか」


「らじゃーっすー」


 バンからテーブルを出し、プラスチックカップを用意するお二人。


「私も、なにか手伝いましょうか?」


「あ、これでだいたい、こっちの作業終わりです。あとは、久美さんと由香里を待つだけですね」


 おお、手際がよろしいですねえ。


 しばし談笑していると、由香里さんと久美さんが、手鍋やボトルを手に、こっちにやって来ます。


「こんにちは。お待たせしましたー」


 一同、由香里さんにご挨拶。久美さんが、めんつゆをプラスチックカップに入れ、配ってくださいます。


「めんつゆ、行き渡りました? いいみたいですね。じゃ、暑いしさっそく始めますか。あたしが水流すから、由香里はそうめんお願い」


「おっけー」


「それじゃー、いただきます!」


 優輝さんの音頭取りで、一同、いただきますの合唱。


 背の高い順に、上段から並んでいます。もちろん、最後尾はともちゃん。


「じゃ、流しますよー」


 ペットボトルから水を流し、そこに由香里さんが、手鍋からそうめんを投入!


「では、まず一番手前のぼくが。すみませんね」


 そう言って、ひょいとそうめんを取る良夫さん。


 ずずずーっと勢いよくすする彼。やーん、美味しそう~。


「まだ、たくさんありますからねー」


 第二弾投入! これは、白部さんがゲット。


 こうして、わんこそばならぬ、わんこそうめんのように、次々にそうめんが流されていきます。


 お、来た来た! ひょい。ずずずー……っ。うーん、美味し~!


「おお~……こっちに来ない……」


「ごめんねー。そろそろそっち行くからー」


 しょんぼりアメリちゃんに、声をかける。


 子供組のほうまで流れていったので、ミケちゃんがゲット! 「おお~……」と、またもしょんぼりなアメリちゃん。


「だって、背の高い順に取らないとだもの。そろそろアメリの番よ」


 ミケちゃんの言う通り、クロちゃんの次は、アメリに流れていきました。


「おお!」


 なんとか、タイミングよく摘む愛娘。ずずずーっと勢いよくすすり、「んーっ!」っと、嬉しそうに唸ります。


「美味しい!」


 瞳キラキラ。良きかな良きかな


「まだまだいくよー」


 ペットボトルを取り替え、新しい水を流す優輝さん。そうめんが、どんぶらこっこと流れてくるので、順に取っていきます。たまに、ともちゃんが取りそこねた麺が、ザルに入ったり。あとでリサイクルかな。


「久美さん、さつきー。そろそろ交代~」


「りょーかーい」


「かしこまりっすー」


 選手交代。凸凹コンビが流し手に。


 こうして手鍋のそうめんが切れたら、ザルに落ちたそうめんを回収。これをまた、流します。


「おかわり取ってきますねー」


「じゃ、ウチは水の換えを」


「お願いしまーす。じゃ、二人が戻ってくるまでの間、雑談でも」


 ホストとして、おもしろ雑学を披露する優輝さん。相変わらず、トークが上手い。


 中世ヨーロッパでは、固ーいパンをお皿代わりにして、最後に食べてたんですって! へー!


「おまっとさーん」


 お二人が戻ってきたので、流しそうめん再開!


 再び、流し手は優輝さんと由香里さんになり、みんなで美味しくいただいていきます。


 こんな感じで五巡する頃には、もうお腹いっぱい! 体格の小さい子供たちは、とっくにギブアップ状態。


「私、ギブアップです。ごちそうさまでしたー」


 挙手して宣言。あー、食べた食べたー。


「なにか、手伝えることないですか?」


「ほかの皆さんも、そろそろ終わりっぽいですね。特にないので大丈夫ですよ」


「ぼくも、ごちそうさまです」


 ややあって、良夫さんもギブアップして、これで全員ごちそうさま宣言状態。


「お疲れ様でしたー。じゃ、残ったそうめんは、適当にあとで、あたしらが食べますね」


 片付けに入る、かくてるの皆さん。


「ええと、なにか手伝えること、ないものでしょうか?」


 いただきっぱなしが居心地悪い性分なのと、手持ち無沙汰なので、改めて尋ねる。


「そうですねえ……。バケツの水を、あそこの蛇口のところに、捨てていただけますか?」


 優輝さんが指差した先に、洗車ホースの付いた蛇口と、格子が見える。


「はーい」


 役に立てるって、いいですねえ。かくてるの皆さんにはお世話になってばかりだから、せめてこれぐらいお返ししないと。


 ……だばーっ! ヨシ!


「捨ててきましたー。あと、もうないです?」


「いえいえ、そこまで気を使っていただかなくても。大丈夫ですよ」


 そうめん器を分解しながら、遠慮がちにおっしゃる優輝さん。うーん、これは逆に気を使わせちゃってるかな?


「わかりました。子供たちの相手してますね。みんな、流しそうめんどうだった?」


「取りにくい! でも、美味しかった!」


 ともちゃんの、率直な感想。まだ、五歳だもんねえ。


「ボクは、面白かったです。日本のこういう文化、いいですね」


 さすが、和ガール。


「なかなか面白かったわ。また来年もやりたいわね」


「アタシも!」


「アメリも面白かった!」


 概ね好評なようで、良きかな良きかな


「ふう。あとは器材をしまうだけですけど、せっかくですから、食後のお茶でもいかがです?」


 優輝さんから、ご提案。


「あら、いいんですか?」


「イベントは、楽しめるときに楽しみ尽くさなきゃです!」


 お仕事あるけど、一杯いただくぐらいなら大丈夫かな?


「では、いただきますね」


「そうこなくっちゃ!」


 こうして、食後のお茶会を楽しむ私たちでした。


 日差しが強かったけど、その中でやる流しそうめん、絶品だったな。本当に、人を楽しませるのがお好きなんだな、かくてるの皆さんは。


 楽しい隣人たちのおかげで、この一年、本当に充実してたなあ。実に、良きかな

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