神奈さんとアメリちゃん

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第四百四十一話 あの料理が、再び!?

公開日時: 2021年12月21日(火) 21:01
文字数:2,315

 ……などと意気込んでいたら、入れ替わりにスマホに着信が。どなたでしょ? 優輝さんか。


「はい、もしもし?」


「あー……おはようございます。ども。その、お忙しい……ですよね?」


 はて? なんだろう、妙に歯切れの悪い。


「おはようございます。実際、これから仕事に取り掛かろうとしていたところで」


「ですよねー」


 ため息が聞こえる。なんだろう、この変なテンション。彼女がこんな風になる状態といえば……?


「ひょっとして、何かのお誘いですか?」


「はい。お忙しいのはわかりきってるんですけど、その、皆さんと食卓を囲みたくなりまして。白部さんとまりあさんと近井さんはOKいただいたんですけど、ご多忙なのがわかりきってる神奈さんはお声がけしていいものかと悩みつつ、お電話差し上げました」


 なるほどね。


「一時間程度なら構いませんけれど、いかがでしょう?」


「ほんとですか!? いやー、言ってみるもんだなあ! じゃあ、お昼にうちにいらしてください!」


 おおう、一転して朗らかに。ほんと、パーティーとか大好きなんですねえ。


「わかりました。お昼にまた。失礼します」


「失礼します~」


 上機嫌で通話終了する彼女。最初の不審者ぶりが嘘みたい。


「アメリちゃん。お昼はお隣でいただきますよ」


 例によって、スマホで何やら調べ物をしていた我が娘に、話しかける。


「おお~! 楽しみ!」


 ふふ。アメリちゃんは、毎日が楽しみの連続ですね。良きかな良きかな



 ◆ ◆ ◆



「こんにちは~。あら、優輝さん、こちらリビングに?」


 皆さん勢揃いの中、優輝さんもリビングに。いつもだったら、キッチンにいるはずだけど。


「こんにちは~。いやー、不肖・あたしがお昼作りたかったんですけど、さつきが『今日は、皆さんに振る舞いたい料理があるんで、どーんとお任せっす!』って譲らなくて」


 困った様子で、後頭部を撫でる彼女。なるほど、たしかにさつきさんがいない。


「まあ、あたしとしては、久々にうちでの会食が目的だったんで、それでもいいかなと」


 なるほど。とりあえず、皆さんとご挨拶を交わす。


「あ、そうだ久美さん。ミケちゃんの歌はいかがですか?」


「おん? それなりにジュンチョー。もうすぐできそーだぜ」


「おお~! さすが!」


 と、ぱちぱち拍手。


「おおう……。照れるじゃねーか」


 まんざらでもなさそうな彼女。


「楽しみよねー」


 当の本人ミケちゃんも、待ちわびてますね。良きかな良きかな


「どもー。お待たせしたっすー。こちらダイニングへどうぞっすー」


 そんな折り、ちょうどさつきさんが、ダイニングからひょっこり顔を出しました。


 非かくてるチーム一同、ご挨拶し、ダイニングへGO!


 ダイニングに行くと、いつもの十二脚に加え、幼児用の椅子が一脚テーブルに加わっていました。テーブルの上には、バインミーに似た、バゲットサンドイッチ。


「やー、まさか十二人掛けテーブルでも、手狭になる日が来るとは思わなかったっすね・こりゃ、ほんとにお城みたいなテーブルが必要かもしれないっす」


「それはないって、さっちゃん」


「とほ~。ノッてくださいっすよ~」


 真顔の由香里さんによる、相変わらず容赦ないボケ殺し。


「ほらほら、噛み合わない漫才してないで、音頭取ってくれ」


 珍しく進行役に回る久美さん。


「ういっす。今日はトルコ料理を作ってみたっす。トルコでは意外にも、こんなのを食べてるんすよ」


 んん? なーんか、デジャビュ。


 とりあえず促されて着席し、サンドイッチを見てみる。


 バゲットに玉ねぎやレタス、何より魚が挟まっている。おやおや?


「松平さん、これは魚のサンドイッチに見えますけど、何の魚でしょう?」


「サバっす!」


 近井さんの質問に、サムズアップで応える彼女。


 やっぱり、サバサンドだった!


「これ、ハモりさんのよりだいぶ凝ってますね」


「お。神奈さん、ご存じでしたっすか。ハモさんのは、極限まで簡略化してるっすからね。……とはいっても、自分が作ったのも本場式とはいえ、元が屋台料理なんで、割とお手軽っすけど」


 ソフトドリンクをサーブしながら、応えてくださる。


「私、ハモりさん式しか食べたことないから、楽しみです」


「ぜひ、本場式を味わってくださいっす」


 サーブし終わったさつきさんが着席し、いただきますの音頭取り。いただきます!


 バゲットをぱくっ!


 ハモりさんのも十分美味しいけど、やっぱり料理って、かけた手間がそのまま反映されるな。玉ねぎとレタスがシャキシャキと美味しい。


 そして、サバの油っこさがこのさわやかさにちょうど噛み合う。


 にんにくと粒マスタード、レモンの味もするな。これが本場式かー。


 いやー、美味しい! お呼ばれしてよかったわー。


 子供たちも、美味しい美味しいとぱくぱく。良きかな良きかな


 ごちそうさま。


「美味しかったですー。やっぱり、本場式は一味違いますね」


 マスペをいただきながら、賞賛を述べる。


「お褒めに預かり、光栄っす。ハモさんのも美味しいっすけど、やっぱり一手間かけると違ってくるっすね」


 ちょっと得意げな、さつきさん。


「ごちそーさまー。ねえ、神奈おねーさん。せっかくだから、この後遊びに行っていい?」


「勉強会?」


 空になったマスペのグラスを置く。マスペサイコー!


「ううん、遊び。たまには、息抜きしたいじゃない」


「どうする、アメリ?」


「構わないよー!」


 お陽様笑顔。


「お、なんだ? 遊びなら、アタシも混ざりたいぞ」


「……ボクも」


「とももー!」


 あらあら、どんどんメンバーが増えちゃって。


「友美がお邪魔するなら、私もご一緒しないとですねえ」


「私も、ノーラちゃんが行くなら同じく」


 近井さん、白部さんまでノッてきた!


「じゃあ、うちにあるお菓子、ミケに持たせますね」


 優輝さんが、そうおっしゃる。なんだか、あれよあれよと話が進んでいきました。


 はてさて、どうなることでしょー?

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