神奈さんとアメリちゃん

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第三百四十五話 アメリベンジ! ―後編―

公開日時: 2021年9月8日(水) 21:01
文字数:2,789

 仕事に集中していると「ぽぴ」という独特なLIZEの着信音とともに、白部さんから個別宛てに画像二つとメッセージが届きました。はて、何でしょう?


「こんにちは。休憩時に、アメリちゃんのテスト問題を作ってみました。よろしければお使いください」


 画像をクリックすると、筆算の割り算テストと、解答図でした。ほほー。


「こんにちは。ありがとうございます。さっそくプリントして渡してみますね」


 というわけで、プリントアウト。


「アメリちゃーん」


「なーに?」


 ブロックでまたもや謎オブジェの制作に励んでいた巨匠が、顔を上げる。


「白部先生からテスト問題をいただきましたよー。やってみる?」


「やるー!」


 とてとてと走り寄ってきて、問題用紙を受け取る。


「必要ならタイマー仕掛けようか?」


「のんびりやっていい?」


「どうぞどうぞ。決めるのはアメリちゃんですから」


 というわけで、ゆっくり問題に取り組むようにしたようです。


 そして、再度それぞれの作業に打ち込む私たち。


「できたー!」


 おや、早い。休憩時間を利用して作っただけあって、多い問題数ではなかったけど、十五分も経ってないんじゃないかしら。


「じゃあ、答え合わせどうぞ~」


「はーい」


 また、とてとてと走り寄ってきて正解の書かれた紙を受け取り、戻っていく。


「……おお~! おねーちゃん、全問正解できたー!」


「おお~! すごいすごい!!」


 二人でおお~とか言ってるのに、自分で微笑ましくなってしまう。ともかくも、パチパチと拍手。


「花マル書いてあげるね」


 赤ペン片手に折りたたみ机に向かい、たしかに全問正解なのを確認すると、100と花マルを描く。


「やったー!」


 本当に嬉しそうね。よしよしと頭を撫でる。


「アメリちゃんはすごいですねえ。もっと構ってあげたいけど、私は仕事に戻らなければいけません」


 ぎゅっと抱きしめ背中をとんとん叩くと、後ろ髪引かれる思いでデスクに戻るのでした。



 ◆ ◆ ◆



 そんなこんなでお仕事に励んでいると、スマホのアラームが。


「おっと、もう夕方だ。ごはんを炊く時間ですよ、アメリちゃん」


「おお~。行ってくる!」


「ついていかなくて大丈夫?」


 尋ねるとしばし悩んだ末、「ごはん炊くのなら大丈夫だと思う!」と、そのままキッチンへ向かっていきました。


 やはり、自立心が旺盛な子だな。


 そういや、福井時代は家への侵入者を、よく「お土産」にしてたっけ。最初は悲鳴を上げたものだ。後になると、すっかり慣れたけど。


 あれ、狩りのできない人間に狩りの仕方を教えてあげてるつもりなのよね。だから、ああいうときは逆に褒めてあげるのが大事。


 懐かしい思い出に浸っていると、娘が「ただいまー」と戻ってきました。


「おかえり。問題なさそう?」


「大丈夫だと思う!」


 では、炊きあがり予想時間の二十分前に、またアラームをセットしておきましょう。



 ◆ ◆ ◆



 おっと、またもやアラームが鳴りました!


「アメリちゃん、鶏肉にスパイスをまぶす時間ですよ」


「おねーちゃん。アメリ、昨日スパイスのところ失敗あった?」


 不安そうな瞳を向けて、尋ねてくる。


「んにゃ。見てる限りはきちんとできてたよ。ただ、ラップして冷蔵庫に入れるのだけはやってね」


「わかった! じゃあ、一人でやってくる!」


 一転、瞳をキラキラと輝かせ、颯爽さっそうと再びキッチンへ向かうのでした。


 そして、ややあって帰還。


「どう? 怪我とかしてない?」


「だいじょーぶ! ちゃんと、説明書きの通りにやってきたよ! ラップもして、冷蔵庫に入れた!」


 とVサイン。ノーラちゃんの影響、色々受けてるなあ。ほほえま。


 それじゃ、今度は炊きあがり時間にアラームをセット、と。



 ◆ ◆ ◆



 三度目のアラームが鳴りました!


「ごはんが炊きあがりました~。そんじゃ、今度はさすがに私も一緒に行くよ」


「うん! アメリ、わからないことはきちんと訊くからね!」


 てなわけで、二人でキッチンへ~。


 キッチンに到着すると、手洗いし、冷蔵庫からチキンのお皿を取り出すシェフ。うん、きちんと隙間なくくるんであるね。


「えーと、おねーちゃん。昨日はブロッコリーからやらなかったのが、いけなかったんだよね?」


「そうね。それが最初の失敗。先に茹でて水切りしておくと、チキンとかができる頃には水切りが終わってマヨネーズが水っぽくならないからね」


「らじゃー!」


 というわけで、鍋にお湯を沸かす一方、ブロッコリーをサッと洗い、切っていくシェフ。ほほー、今度は手際がいい!


 お湯が沸騰したらブロッコリーを投入し、タイマーを三分にセット。うんうん、順調順調!


「次、何やったらいい?」


「そうねえ……。お味噌汁用のお湯を沸かそうか。急がないから、水からでオッケーよ」


「はーい」


 お鍋二号にお水を注ぎ、点火! いいよ、いいよー。


「次は何やったらいい?」


「ブロッコリーの茹で上がりを待とう」


 「はーい」と言い、鍋の前で待機するシェフ。ややあって、タイマーがピピピと鳴る。


「えーと、これをザルに揚げて水で……だよね?」


「うん」


 流水で冷やす。


「これ、どうやって水切ったらいい?」


「深皿の上に置いて、放置。トマトも洗ってからそうしよう」


「らじゃー!」


 言われた通りにこなしていく。


「アメリちゃん、今のうちにごはん切って」


「はーい」


 踏み台を大忙しで動かし、ちょこちょこ移動する。背が小さいと大変よね。


 すると、ぐつぐつとお湯が沸騰する音が。


「お豆腐切るのは問題なかったよね?」


「うん」


 お豆腐をサイコロ状に切り、投入する。


「少し、火を通そう」


 私なら同時進行でチキンも焼いちゃうけど、今は一手一手、手順をきちんと踏ませる。


「……そろそろいいかな」


「はーい。あとは、火を止めてお味噌だよね?」


「その通り~」


 というわけで、実際その通りにお味噌を溶かす。


「味見して~」


「はいは~い。……うん、ちょうどいいと思います!」


 ぐっとガッツポーズするシェフ。


「チキンだけど、焼き方訊く?」


 尋ねると、こくこくうなずく。


「これ、くっつかないフライパンだから、昨日みたいに油なくても大丈夫ね。で、火にかけて熱くなったと思ったら、皮を下にして焼いて」


 「りょーかーい!」と、焼き始める。


「ときどき、焼き加減を見て、焼けたらひっくり返してね」


「わかった!」


 香ばしい匂いと、じゅうじゅうといういい音。


 フライ返しで何度か様子を見た後、フライ返しでひっくり返す。


 そして、さらに確認しながら、やがて火を止める。


「できた!」


 食事をお皿やお茶碗に盛るアメリちゃん。最後に麦茶を注ぎ、配膳終了!


「じゃ、座ろっか。音頭取りお願いね」


「はーい。いただきます!」


「いただきます!」


 今日のサラダは水っぽさもなく、チキンもちゃんと温かくてスパイシー。ごはんもふっくらで、お味噌汁の香りも芳醇。


「すごく美味しいよ。アメリ」


「うん!」


 互いに、お陽様のような笑顔を向け合う。良きかな良きかな


 こうして、アメリちゃんのお料理リベンジは無事成功を収めたのでした。めでたしめでたし。

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