そんなわけで、夏祭り!
会場に出かけるべく、アメリと支度。
ほんとはねー。私もアメリも浴衣で武装したかったけど、私、干物だし、アメリは用意してないから、せめてちょっといい服でおでかけです。
バス停でバスを待っていると、白部さん、続いて近井さんご一家と合流! 互いにご挨拶。
「こんばんは。今日は楽しみましょう」
女性陣四人とも、おめかししていますね。ノーラちゃんは、相変わらずのショートパンツだけど。良夫さんは、わりとざっくりした格好。
「アメリちゃん、ロングスカートに変えたんですね」
親子さんが、目ざとく気づく。
「はい。せっかくのお祭りですから、ちょっといいところ見せたい的な?」
我ながら、意味不明な供述。
「こういう格好、久しぶりー」
スカートをつまんで、ひらひらと振る娘。
「とっても可愛いよ」
「そう? えへへ」
親子さんに褒められて、嬉しそう。アメリちゃんも、女の子ですねえ。
「かくてるの皆さん、遅いですね。もうすぐバス来ちゃいますけど」
五人が合流してこないので、不思議に思い、LIZEを見てみる。
「あら。先に到着しちゃってるみたいです。ミケちゃんを迎えに行ったほうが、早いからって」
「そうなんですか。宇多野さんは……角照さんたちとご一緒じゃないみたいですね?」
親子さんと白部さんも、スマホチェック。
「あ、来ましたよ。とりあえず、乗っちゃいましょう」
緑のマイクロバスが来たので、百円払って乗ると……。
「まりあさんにクロちゃん! こんばんはー」
互いに、迷惑にならないよう。控えめボイスで挨拶を交わす。
まりあさんもクロちゃんも、きれいな浴衣姿。まりあさんは朝顔、クロちゃんは金魚柄。
浴衣、似合ってますよという意思を込めて、親指と人差指で輪っかを作り、続いてサムズアップします。
意図が通じたようで、まりあさんは微笑み、クロちゃんは恥ずかしそうに俯いてしまいます。
「そうだ。かくてるの皆さんなんですけど、先に到着しているらしいです」
これだけは、伝えておいたほうがいいと思い、小声でご報告。
「そうなんですか。ちょっと今、スマホ使えませんから、確認できませんけど」
私たち九人、立ちんぼ状態なので、スマホはしまってます。
お祭りだからか、乗客も多め。まりあさんみたいに、浴衣の人もいるね。
後は、三十分ほど無言でゆらり揺られて、F駅で降車~!
「ふう。浴衣、似合ってますよー!」
やっと会話できる状態になったので、会場に向かいながら、みんなで改めて浴衣を褒めます。
「ありがとうございます。せっかくの夏祭りですからね」
微笑むまりあさん。クロちゃん、また照れて俯いちゃってます。
「昨日の今日で、ご用意したんですか?」
「いえ。わたしは元々持ってましたし、クロちゃんのはこんなこともあろうかと、六月に買ってまして」
おお~。
「クロちゃん、浴衣着るの楽しみにしてたんですよ。去年はまだ生まれ変わったばかりで、お祭りどころではなくて」
あー、時期的にそうですよね。
おしゃべりしながら、アール・サインを突き抜けて、けやき通りに出ると……おーおー! 人だらけですねえ!
「ちょっと、優輝さんに電話かけてみますね」
スマホを取り出し、コール。
「はーい、着きました?」
「はい。今、皆さんどちらですか?」
「境内の参道沿いで、ビール飲んでます。由香里とミケは、ジュースですけどね」
「わかりました。向かいます。……皆さん、境内の飲み物売り場らしいですよ」
九人で祭りの様子を眺めながら、神社へGo!
「……あ、いたいた!」
手を振ってアピールしながら、接近~。
向こうも気づいて、カップ片手に手を振ってきます。
「こんばんはー」
互いに、ご挨拶。
優輝さんと、さつきさんの頬が桜色。久美さんは間違いなく一番飲んでるだろうけど、彼女、顔に出ないからなー。
「まりあさんとクロちゃん、浴衣じゃないですかー! 似合ってますよー」
陽気にサムズアップする優輝さん。出来上がってるのかしら? まあ、普段からこんな感じだけど。
ほかの皆さんも、浴衣を口々に褒めます。私たちも、来年は着たくなってきちゃった。
「皆さんも、何か飲みます?」
親指で、背後の屋台を指差す優輝さん。
「そうですね。駆けつけ三杯なんていいますし、一杯買っていきましょうか」
「私も」
上戸組の皆さんと一緒に、ビールをお買い上げ。まりあさんと子供は、ジュースにしました。
「あ、そうだ。ステージのほうで、芸人さんのお笑いショーやってるみたいですよ」
「へー。行きましょうか」
カップを手に、一同移動。
ステージでは、二人の男性芸人が笑いを取っていました。
「なんのお題でしょうね?」
途中から入ったので、今の芸はわからず。次の芸を待ちます。
お、ショートコントのはじまりー。勘違い系かー。私、こういうの好きなのよねー。
次々繰り出される勘違いの数々に、一同爆笑! ちょっと、子供たちはいまいち、ネタがわからないみたいだけど。
あー、おかしー。ビール、吹かないようにしないと。思わず、涙まで出しちゃいました。
お笑いショー終了~。面白かったー! やっぱ、笑いはいいね!
「おお~。ちょっと、わからないとこあったー」
「そっかー。退屈だった?」
「んー。んんー?」
返答に、困った感じのアメリちゃん。
「次は、子供たちを楽しませてあげたいですねえ」
「ああ、でしたら、あっちに子供向けブースがありますよ」
「いいですね、行きましょう!」
というわけで、場所移動。
おお、ミニSLなんて設置してある。
「乗りてー!」
「ともも!」
ノーラちゃん、ともちゃん、ビビッと反応!
「アメリも乗る?」
「うん!」
元気に頷く我が娘。
「ミケはどうする?」
優輝さんが、ミケちゃんにに尋ねる。
「ええー……? コドモっぽくない?」
「ミケおねーちゃん、一緒に乗ろう!」
手を、きゅっと握るともちゃん。
「むう……可愛い妹の頼みじゃ、しょうがないわね!」
ふぁさあっと髪をかき上げ、格好をつけるミケちゃん。ほほえまー。
というわけで、SLの到着を待って、五人で乗車。
やーん、可愛い! エモですよ、エモ! スマホで撮影ボタン連射!
「いいなー、こういうの! な、とも!」
「うん!」
降車後、余韻を楽しむノーラちゃんと、ともちゃん。やたら気が合いますね。
このあとは、焼きとうもろこしや、かき氷を味わうなど、お祭りを満喫!
「あ、すみません。私たちは、そろそろ引き上げますね」
時計を見て、親子さんが申し訳なさそうに仰います。
「お疲れ様でした。楽しかったです。また、こういった機会に!」
一同で、手を振って見送り。
その後も、水風船釣りをしたり、射的に挑戦したり。例によって、私は成果ゼロ。とほほ。
金魚すくいもあったけど、うちには飼育設備がないのと、「命を預かることの責任」の約束があるので、スルー。
「あー。そろそろ上がらないと、バスなくなりますね」
スマホを見て、優輝さんが残念そうに声を上げる。
「では、引き上げましょうか」
「ですね」
楽しい時間はあっという間に終わり、帰途につくのでした。
浴衣を用意して、また来年来よう!
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