神奈さんとアメリちゃん

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第百六十六話 緊急スクランブル、駅前でごはんを食べよ!

公開日時: 2021年4月25日(日) 16:01
文字数:2,444

「できたー!」


 朝十時、今日も今日とて筆を走らせていると、背後からアメリの嬉しそうな声が聞こえてくる。


「何ができたのかなー?」


 首をそちらに向けると、ブロック製のよくわからない大きな物体ができていました。


「えーと、それはなあに?」


 少々困惑しつつ尋ねてみる。


「へろもん! あのね、昔の地球にいた恐竜なの!」


 う~ん。言われれば、若干、かろうじて、ぎりぎり……恐竜に見えなくもない、かなあ?


「そうなんだー、上手だね!」


 ともかくも、子供は褒めて伸ばす! アメリ先生、もしかしたら前衛芸術の俊英に育つかも知れないしね!


「えへへー、ありがとー!」


 にぱっと、お陽様笑顔を向けてくる彼女。ああ、この笑顔を見ると、やっぱり褒めて正解だったなって強く思うのです。


「おねーちゃん、ブロック足りなくなってきちゃった」


 それはそれとしてという感じで、ちょっとしゅんとするアメリ。たしかにこのへろもん、結構な量のブロックが使われている。見るからに力作で、アメリとしても解体したくないのだろう。


「ふーむ……。よし、じゃあ私のお仕事がひと段落したら、駅前行こっか! ただ、ブロックを買うお金はアメリが出す。それでいいかな?」


「うん!」


 アメリちゃん、快諾。一つはお年玉を得たのだから、そう何でもかんでも私がお金を出すのは教育上良くないかなって思ったのと、もう一つは金銭感覚を身に着けさせる訓練。使うべきときは使う、締めるべきときは締める。そういう感覚を、きちんと身に着けてくれたら嬉しい。


 アメリはへろもんを一旦おもちゃ箱にしまい、漢字の書き取りを始める。何というか、アメリの楽しみや興味ははどれを取っても「知」に結びついているのがすごいと思う。


 歌謡コンテストの頃はアイドルを目指すのかな? なんて漠然と思っていたけれど、この子はひょっとしなくても学問の道へ進むんじゃなかろうか。


 そう考えると、アメリに私が教えられる範囲での個人授業しかさせてあげられないのが切ない。この子は、いろんな知識をスポンジのように吸収できる力があるのに。


 とはいえ、そこを嘆いても仕方がない。今目の前に、こうしてアメリが存在してくれていることがすでに奇跡なのだ。その幸福を、ひとまず噛み締めよう。


「おねーちゃん、どうしたの? ぼーっとして」


 仕事すると言っておきながら、じっとアメリを見続ける私に気付き、小首を傾げる彼女。


「あ、うん。ごめん、ちょっと考え事してた。お仕事頑張るぞい!」


 気合を入れ直し、PCに向き直る。まずはお仕事、お仕事! 生活のため、アメリのため、読者のため、「ねこきっく」のため。色んなものが、私の双肩にかかっているんだ。しっかりしなきゃ!



 ◆ ◆ ◆



「ふー……」


 なんとか、キリのいいところまでネームできました! だいたい半分ってところかな。


「おねーちゃん、お腹空いた~」


 えっ? いけない、もう一時回っちゃってる! 根詰め過ぎちゃった……これはうかつ!


「ごめん、アメリ! すぐ支度するから、駅前で何か食べましょ」


 大急ぎで外着に着替え、駅前に向かうのでした。



 ◆ ◆ ◆



 おなじみ、「るるる」にとうちゃーく!


 まずは、何をさておきごはんよね。


「アメリ、何か食べたいものある?」


「何でもいいよー」


 いつもの力強いお言葉とは違い、とりあえず早く何か食べたいという意味だろう。


 調理時間がかからないものがいいよね。すると……よし、あそこにしよう!


「ちょっと歩くけど、頑張ってね」


 アメリを連れて、空ビルを隔てて一つ隣のショッピングモール「フォレスト」へ向かうのでした。


 そして、到着! ここ、入ったすぐそばにイートイン付きのパン屋さん「サンキスト」があるのです。


「アメリ。食べたいものをね、このトングで挟んでこのトレーに載っけるんだよ」


「おお~……!」


 目移りする彼女。「マカロニグラタンパン」なるものがあったので、まずはそれを選んだ模様。グラタン、好物の一つだもんね。私も何か選ぼうっと。


 まずは、ぐっとボリュームある「えびカツサンド」。あとはもう一個、いかにも腹持ちの良さそうな「カレーパン」。よし、これでお砂糖入りでコーヒーも頼んだらちょうどいいかな。


 アメリはと様子を見ると、さらに「いちごのフルーツサンド」を載せた模様。食べきれるかしらね? まあ、フルーツサンドはパック入りだから、食べきれなかったら持ち帰ればいいか。


 ともかくも、トレー二枚を同時にお会計~。私はコーヒー、アメリはジュースがないのでアイスミルクティーをつけてもらう。


「いただきます!」


 混雑時はとっくに過ぎているのでさくっと着席し、二人で合唱。パンを食む。


 うん、ここのパン美味しいわ~。えびカツ、すごくぷりぷりしてる!


 一方アメリはというと、お腹が空きすぎたのか一心不乱にグラタンパンをかじっている。うう、ごめんなさい。仕事に熱中しちゃうと、時間忘れちゃうお姉ちゃんで……。


 ふう、ごちそうさま。パンも食べ終わって、人心地ついた~。アメリもやっと余裕が生まれたのか、「美味しかった!」と瞳を輝かせる。


「良かったねえ。ついでだから、晩ごはんもここのパン買ってそれにする?」


「うん!」


 というわけで、今度は落ち着いてパンを選択。私はプチトマトとバジル、モッツァレラチーズが美しい「マルゲリータパン」と「ほうれん草とパンチェッタのキッシュ」、それにデザートとして「ショコラデニッシュ」を買う。


 アメリが「BLTサンド」を買おうとするけれど、「夕飯にする頃にはパンが湿気っちゃうよ」と教えると、ほかのも含め野菜入りサンドイッチは諦めたようだ。


 代わりに選んだのは、「ウィンナードッグ」とさっき私が買ったカレーパン。そして、これまた私と同じくショコラデニッシュ。なんか、お揃いだとほほえまね!


 あとは……せっかくだから、こういうとこのちょっといいブレッドも買っていこう。たまには、こういうので朝食も乙よね。


 よし、二度目のお会計! では、「トイザウるスおもちゃ屋」……の前に、「麗文堂本屋さん」へ行きましょうか。ちょっと、買いたい物があるのです。


 それでは、れっつらごー!

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