神奈さんとアメリちゃん

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第三百十四話 神奈の恩返し

公開日時: 2021年8月8日(日) 21:01
更新日時: 2021年8月11日(水) 19:44
文字数:2,929

 むーん。


 今日も今日とて机でお仕事する午前。一つ気にしていることがあります。


 それは、あれだけお世話になった白部さんと久美さんに、これといったご恩返しをできていないこと。


 久美さんのみならず、彼女不在の間、優輝さんたちがお仕事と家事を両立なさっていたわけで。かくてるの皆さん全員にも何かして差し上げたい。


 で、ご両家だけに何かしてまりあさんだけハブってのも申し訳ないから、まりあさんにも何か……。


 何がいいかしらね。またローストビーフ作って配り歩くのもいいかもしれないけれど。


 浦野さんにそうしたように、「カトレーヌお菓子屋」さんでケーキを買っていくのも悪くない。


 ふーむ。


「アメリちゃん。月初めに白部さんや久美さんに随分お世話になったでしょう? もしアメリが彼女たちだったとしたら、何をもらったら嬉しいと思う?」


 考えあぐねて、無茶なパスをブロック遊びしているうちのお嬢様に投げてみる。


「おお? うーん……うーん……」


 考え込んでしまった。やはり無茶振りにもほどがあったか。


「おねーちゃんのお料理美味しいから、お料理がいいと思う!」


 お、ご神託が下りました。ありがたや。


 では、いつものスーパーに行って、ものを決めるとしましょう!



 ◆ ◆ ◆



 じゃーん! とうちゃくー! 今日も自転車です! 相変わらずうちのお姫様は注目の的だけど、皆さんもそろそろ慣れていただきたい。難しいか。


 ま、それはさておきチラシちぇーっく! 贈り物だから値段で決めるのもあれだけど、まあ参考ってことで。


 あら、黒毛和牛、それもお高めのが三割引!? これ、これにしよう!


 牛肉で贈り物というと、やはりローストビーフがいいかな。でも、二度目もただのローストビーフってのも芸がない気がする。……そうだ!


 バゲットとチェダーチーズ、トマト、リーフレタスをかごに入れる。ふふふ、ローストビーフはローストビーフでも、サンドイッチにしちゃいますよ!


 調味料類はうちにあるから、あとは……来客用にクッキーでも買っときますか。


 アメリちゃんは独自にお小遣いでうめえ棒とバルーンガムを買う模様。


 では、お会計~。



 ◆ ◆ ◆



 ただいまーっ!


 さて、さっそくローストビーフを作りましょう。前回あんなに時間かかると思わなくて、グダグダになっちゃったからね。たしか二~三時間ぐらいかかった記憶がある。


 待ち時間の間、レッツ・お仕事! 


 すらすら~っ。すいすい~っ。うーん、アメリちゃんがいると、お仕事がはかどりますねえ!


 あ、いけない。大事なこと忘れてた! LIZE起動~。


「おはようございます。皆さん、今日のお昼ごはんの予定は動かせないものが多いですか? たとえば、お刺身ですとか」


 全員ログインしているようで、即座に挨拶が返ってくる。


「特に、急いで食べなければいけないものはないですけど……。どうしてまた、そのようなご質問を?」


 もっともな疑問を呈するまりあさん。


「月初め、皆さんに大変お世話になりましたから、ローストビーフサンドを作ってお届けしようかと思うんです」


「あら、ありがとうございます! でも、わたし特にお力になれませんでしたし……」


「いえいえ。もう、皆さんの存在自体が心強かったですし。元を正すと、私の不用心から起きた事件でしたからね」


 恐縮するまりあさんに気を使わせまいと、筋道を立てる。


「そうおっしゃるのでしたら、ありがたくいただきますね。ご厚意を無下に断るのも申し訳ないですし。恐縮です」


「そんな、かしこまらないでくださいよ。まりあさんも大切な友人なんですから」


「ありがとうございます」


 と、照れ猫スタンプ。


「正午よりは少し遅れてしまうと思いますけど、大丈夫でしょうか?」


 確認すると、皆さん大丈夫とのこと。


「では、用件だけですみませんが、仕事に戻らせていただきますね。楽しみにお待ち下さい」


 サムズアップ猫スタンプとともに話を締めくくり、仕事に戻る。


 さあ、仕事も料理も頑張りましょー!



 ◆ ◆ ◆



 というわけで、ローストビーフが出来上がりました!


 あとは……。


「アメリシェフ。今日はトマトさんとレタスさんのカットをお願いします。トマトは薄切り、レタスはこないだのサーモンサンドぐらいにしてね」


「らじゃー!」


 私はバゲットを切り、まずは具材が触れる面にそれぞれバター、マヨ、マスタードを塗っていく。


 続いてビーフとチーズを食べやすい薄さに適度に切って、と。


「シェフ。そちらはいかがですか?」


「もうちょっとー」


 ふむ。先にソース作ってましょうかね。


 赤ワイン三百ミリリットルを二分強レンチン。蜂蜜百ミリリットル、バター、バルサミコ酢それぞれ五十グラムを混ぜ、出来上がりー。少し冷ましましょう。


「できたー!」


 おっと、ナイスタイミングです。アメリシェフ!


 バゲットに、レタス、トマト、チーズ、ビーフ、ソースの順に挟んでいき、まずは一つ完成!


「アメリちゃん。一緒にこんな感じで作っていきましょう」


「おお~!」


 いやー、十一人ぶん作るのは大変だー。でも、苦労してこそのご恩返し!


 ……かんせーい!!


「「いえーい!」」


 お馴染みハイタッチ。うわ、十二時半だ! 急がなきゃ!


 手早くラッピングし、二人でお出かけ!


 まずは、かくてるハウス。


「お待たせしましたー!」


「どーもどーも、ありがとうございます!」


 出迎えたのは優輝さん。お辞儀される。


「特に、久美さんには格別にお世話になりまして。そのぶん、皆さんにもしわ寄せがいってしまったでしょうし」


「あー、そんな気にしないでくださいよ。久美さん子供の世話するの大好きだし、あたしらもしわ寄せというほどのことは」


「本当に、ありがたかったです。せめてものお気持ち、お収めください」


 深々とお辞儀。


「はい、美味しくいただきますね。久美さんには、あたしから感謝のお気持ち伝えときます」


「ありがとうございます。私からも、後で直接お礼を述べさせていただきますので」


 というわけで、互いに再度お辞儀し、白部家へ! 忙しー!


「ありがとうございます。ノーラちゃん、こないだのローストビーフ喜んでましたから、楽しみにしてるんですよ」


「お二人のお口に合ったようで、なによりです。本当に、白部さんには大変お世話になって……。この程度でご恩が返しきれるかどうか」


 またも、深々とお辞儀。


「いえいえ、そんな。私も、ある程度は自分たちのためにしたことでもありますし。猫崎さんのご演説、本当に素晴らしくて。あれが効いたようで、上の上……政治方面でも色々動きがあるみたいですよ」


「そんな方向に話が進んでるんですね。アメリたちが暮らしやすい社会になるといいいですね」


「本当に、そう思います。皆さんと出会ったことで、研究者でありながら当事者ともなりましたから、そういう社会をぜひ実現したいですね」


 あとは、互いに時間が押してるので手短に会話を終え、車に乗り込む。ほんと忙しい。


「ありがとうございます。わたし、本当に今回の件では逆に神奈さんのお世話になったぐらいですのに」


「日頃の感謝の気持と思っていただければ。特にクロちゃんには、アメリのこと、とても良くしてもらってますし」


「ありがとうございます。クロちゃんが聞いたら喜びますね」


 例によって路駐なので、話を短めに切り上げミッションコンプリート!


 疲れたけど、少しでもご恩が返せたと思うと嬉しいな!

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