翌、二十二日。
やはりともちゃんが、夜起きているのが難しいということで、近井さんご一家は昼のうちに、昨日の続きを満喫したようです。なんでも、サンバ・カーニバルがあったらしく、写真をいただきました。
残った私たちはというと、昨日ほとんど遊び尽くしてしまったのと、かくてるの皆さん以外は仕事があるので、お祭りは不参加。
かくてるの皆さんも、「そろそろ仕事しないとねー」というムード。ノーラちゃんは、現時点では作業のない久美さんと、久々にキャッチボールで遊んだようです。
で、今日は、花火を前倒しして遊びましょうという話になりました。
ただ、花火が映える夜の到来が遅いため、どうしても開催が七時辺りになり、ともちゃんが連日のお祭りで疲れていることもあって、近井さんご一家は不参加。ともちゃんが、もっと大きくなったら、一緒にやりましょう。
◆ ◆ ◆
「と、いーうーわーけでー……花火大会開催でーす!」
優輝さんの宣言で、児童公園にてハイタッチで盛り上がる、いい歳した大人五人と子供たち。さすがに、白部さんとまりあさんは、このノリには乗れないようで、微笑んで見守っています。
明かりは、街灯と懐中電灯のみ。まあ、女子供でもこれだけ人数いれば、危険なこともないでしょう、多分。
まりあさんとクロちゃんは、今日も浴衣です。
「いやー、いいですね、花火! 心躍りますねえ!」
我らがまとめ役、ウッキウキ。
「ボク、自分で花火するのは始めてですよ」
和ガール・クロちゃん、花火初体験にしっぽがぴくぴく。興味津々ですねえ。
「水くんで来るぞー」
久美さんが、バケツを手に水道に向かいます。
「じゃ、今のうちに子供たちにレクチャー。花火は人に向けたり、振り回してはいけません。遊び終わったら、水入りバケツに突っ込むこと。何より、大人と一緒に遊ぶこと! 守れるかな?」
優輝さんの言葉に、「はーい」と返事する四人娘。
「いいお返事です。それでは保護者の皆さん、ライター回していくんで、点火して子供に持たせてあげてください」
今度は、私たちが「はい」とお返事。
まず、優輝さんが点火。シューッと、きれいな火花が吹き出し、子供たちから「おお~」と、総アメリちゃん化した声が上がります。
「はい、ミケ。次、神奈さんどうぞ」
ライターを受け取り、こちらも点火。素敵な光の粒がきらめく。
「はい、アメリ。次、まりあさんどうぞ」
こんな感じにライターを回していき、大人組が花火を持つ番になったら、花火同士をくっつけて火をもらいます。
「おねーちゃん、きれーだねー」
なんだか、うっとりした声の我が娘。
「そうだね。日本の夏って感じだねえ」
私も、美しい光のアートに見惚れる。
ほかの子供たちもめいめい楽しんでおり、クロちゃんなど、しっぽがピンと立ってしまっています。
「次は、これやろうっす~」
さつきさんが取り出したのは……。
点火して地面に置くと、火花を吹きながら暴れまわるネズミ花火!
子供たち、きゃあきゃあ声を上げ、逃げ回ります。
「あ~。そんな怖くないっすよ~」
半パニック状態の子供たちを見て、頭を掻くさつきさん。
そして、パンッ! という音とともに花火が動きを止めると、子供たちのしっぽが、ぶわっ!
「さつきのバカーッ!」
ミケちゃんが、彼女をぽかぽか両手で叩きます。
「ごめんっす。ここまでビビられるとは思わなかったっす……」
しょげる仕掛け人。
「しょうがないから、ネズミ花火はお蔵入りで。次はこれいきましょう!」
優輝さんが取り出したのは、線香花火!
点火すると、ぱちぱちと静かに光が散ります。
「風流ですねー」
クロちゃんが、うっとりと光球を見つめる。なんだか、子供とは思えない、艶っぽい表情だ。
そして、花火は散った後、ぽとりと落ちました。儚い。
「ボク、これが一番好きかもです」
さすが、ワビサビガール。お目が高い。
「よーし、次はこれやろうぜー」
久美さんが、筒状の花火に点火すると、にょろにょろ~っと、細長い物体が。
「おお~? 変なの……」
子供たちの受けは、イマイチ。
「やっぱ地味だな、ヘビ花火……」
当人も、思ったより受けが取れずに、がっかり気味。
「優輝、しょーがないからあれやるか? パラシュート飛ぶやつ」
「あれ、夜は見失いますからねえ。やめときましょう」
「代わりに、これやりましょうよ」
由香里さんが用意したのは、またも筒状の花火。
点火してささっと離れると、光の噴水が吹き出します!
これには、子供も大人も大喜び! きれいだなあ。
このタイプの花火を四つ同時に仕掛け、遠巻きに光のアートを楽しむ我々。
さらに、手持ちの噴射花火と線香花火をもう一巡し、楽しい花火大会はしめやかに終わりました。
「楽しかったですねー」
皆同意し、余韻を愉しむ。
燃えカスやゴミが十分冷えたら、ホウキとちりとり、トングなどで拾って、水バケツに入れていきます。
最後に久美さんが水飲み場で水だけ流し、少し残った水ごと、ゴミ袋にポイ。
「んじゃ、これは持ち帰りだな」
「あたしらで、ゴミは処分しときますんで。帰りましょうか」
三家方面に向かう私たち。まりあさんとクロちゃんは、行きと同様、帰りもバンで送っていくそうです。
花火なんて、何年ぶりにしただろう。
鮮やかな火花たちが、脳裏に再現される。
楽しみに彩られたこの一年を、表すかのように。
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