私には深い悩みがある。それは、朝が爆裂に弱いゆえ、アメリに簡単な朝食しか食べさせてあげられないこと。
なんだ、そんなこと? と思われるかもしれないけれど、これは私にとってとてもとても由々しき問題なのデス。
目どころか脳でも心臓でも、どこに入れても痛くないほど可愛いアメリ。そんなアメリにトーストやシリアル以外のきちんとした朝食を食べさせてあげたい! などと、いつものスーパーで悩んでいるところ。
夜のうちに作っておいて、朝温め直すという手もあるけれど、やはりできたてホヤホヤを食べさせてあげたい。ううむ、一体どうすれば……。
うーん、うーん……。カートを押しながらぐるぐると店内を徘徊。困ったなあ。
……はっ! ひらめいた! ひらめきましたよ!
朝食だからって、朝食べなければいけないという決まりはないのです!!
夜にコテコテの朝食メニューをいただく。そんなご家庭があってもいいじゃない! 自由とはそういうこと!
そうとなれば、今夜の晩ごはんは大決定!
アジの開き、納豆、卵、ネギ、味付け海苔……うふふ、これぞ和の朝食! ってカンジのオールスターたちね!
「おねーちゃん、晩ごはん何にするのー?」
「ふふふ、ズバリ朝食を作っちゃうよ!」
晩ごはんは? と尋ねてこんな珍回答が返ってきたものだから、首を傾げて不思議そうな表情を浮かべるアメリ。
そんな彼女の頭をキャスケット越しに撫でて、本当の朝のお供であるパンと牛乳もかごに入れ、レジに向かうのでした。
◆ ◆ ◆
「たっだいまぁーっ!」
テンション高く帰宅なう! アメリも「ただいまー!」と続く。晩ごはんにはちょっと早いので、ルビ振りの仕上げでもしてましょうかねー。あと一息で終わりそうだし。
というわけで、ルビ振りの合間に炊飯の準備を進めることしばし。スマホくんが炊きあがりを知らせてくれましたよ!
とてとてとキッチンに移動~。
「さあさあ、アメリちゃん。二箇所ほど手伝ってもらっちゃおうかなっ!」
炊事の準備を整えながら、アメリに呼びかける。彼女も「おおー!」と拳を突き上げ意気軒昂!
「えーと、おネギを斜め切りにして、あとは少しだけ薄い輪切りにしてくれるかな? もう一個、卵を二つ溶き卵にしてもらえたらOK」
「はーい!」
というわけで、作業分担~。
アメリがネギと卵の準備を整える間、私は手鍋にお湯を沸かし、アジの開きを焼いていく。弱火でじっくり。これ、焼き魚のコツ。
「できた!」
二枚目のアジを焼いていると、アメリが声を上げる。
「お疲れ~。卵の殻入らなかった?」
「今度は上手くできた!」
「そっかー。すごいすごい!」
頭をわしゃわしゃ撫でると、「うにゅう」と気抜け声を上げる。おネギも良い仕上がりで。
では、やっていきましょうか。アジも焼き上がったので、まずはお皿に乗せてしまう。
おネギは乾燥わかめと一緒にお味噌汁に。溶き卵は卵焼きにする。
卵焼きが焼けたら鍋にお味噌を溶き、お味噌汁も完成! ごはんも切っときましょう。
あとは、納豆用に納豆パックと丸の卵、刻みネギ、鰹節、からしを用意。これを全部入れるのが猫崎家流・納豆術なのだけど、アメリ納豆初体験だからね。シンプルに納豆だけってのが好きかもしれないから、あくまでもオプションにしておく。
あとは、味付け海苔のパックを置いて、お茶を淹れたら配膳完了~!
「は~い、アメリちゃん! 夜の朝ごはん完成ですよ~!」
エプロンを外し着席。アメリはまりあさんちで作った朝食をさらに豪華にしたような料理に興味津々!
「本当は、朝にこれぐらい用意してあげたいんだけどね。私、それできないから晩ごはんにしてみました! それじゃあ、いただきますしようか。いただきます!」
「いただきます!」
とりあえずアジから。うんうん、シンプルに美味しいです。夜にこういうのもオツなもんだね!
「おねーちゃーん、これどうすればいいのー?」
初めて見る納豆に困惑するアメリ。
「それはねー。私のやり方見てて」
パックの中でわしゃわしゃかき混ぜ、小鉢に投入!
「で、ここからは好き好きなんだけど、私はこういうふうにするのが好き」
刻みネギ、鰹節、からし、たれ、そして生卵を入れ、さらにわしゃわしゃ。これをごはんにとろ~り。
「アメリは初めてだから、まずはシンプルに納豆……そのお豆さんとたれだけで試して、色々付け加えてみるといいよ」
「わかった!」
少し食べては色々継ぎ足していき、最終的に私と同じスタイルになったアメリちゃん。う~ん、味覚まで似るのね。と、ほほえま気分に。
お味噌汁もいい塩梅で、良き哉良き哉。
最後に味付け海苔で納豆ご飯をいただき、フィニッシュ! ふう、本当にこういうのを朝、食べられたらなあ。
アメリもほどなく食べ終わり、お茶を飲み始める。
「どうだった?」
「美味しかった!」
満面の笑顔のアメリに、こちらもほっこり。私も食後のお茶をいただく。
お茶を飲み終わると「ごちそうさまでした!」と合唱し、後片付け。
食後にルビ振りも終わり、第二巻も読ませてあげると、それは楽しそうに、そして愛おしそうに読みふけってくれました。
アメリが寝たらまたお仕事で忙しくなるから、今のうちに新しいことを教えてあげたいな。よし、分数を教えてあげよう!
頑張って、先生するぞー!
読み終わったら、ポイントを付けましょう!