神奈さんとアメリちゃん

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第四百二十七話 私が水着に着替えたら ―後編―

公開日時: 2021年12月6日(月) 21:01
文字数:2,926

 河岸を変えて、さつきさんと由香里さんコンビの先導で、スポーツウェア専門店へ。スポーツ用品店のお隣ですね。気づきそうで気づかなかったな、このお店。


 ただ、総勢十三人はいくら何でも多すぎるので、子供たちは別行動。大人の買い物見てても面白くないだろうしね。面倒はさつきさんと由香里さんが見てくださるとのことなので、アメリちゃんとはしばしお別れ。


 中に入ると、ジャージを筆頭に、水着までずらりと。ミケちゃんたちのもここで買ったほうが良かったのかな? まあ、ウィンドゥショッピング……というか、嬰児えいじ服から始まった漫才、面白かったけど。


 とりあえず、ぞろぞろと大人向け水着コーナーへ。


「お、これどうですかね?」


 さっそくアイテムに目をつけた優輝さん。


 上が左右に黄と黒、ボトムが逆配色で黒と黄に別れた大胆なビキニ。


「わお。ダイタンですね~」


「はは。こういうの着れるの、今のうちですからね」


 屈託なく笑う彼女。


「若いっていいですねー」


「「「ねー」」」


 まりあさん、白部さん、近井さんと、しょぼくれてうなずき合う。


「あ、いや、そういう嫌味な意図はなくてですね!」


 慌てて首を横に振る優輝さん。


「冗談ですよ。アラサーにはアラサーなりの、魅力あるファッションってのがありますから」


 ちょっと気まずくなりそうだったので、笑顔で返す。


「そうおっしゃっていただけると、ありがたいです」


 ほっと胸をなでおろす彼女。傍観者ポジションの久美さんは、やれやれといった感じで首を振っている。


「ウチは、やっぱ競泳が気楽だなー。ここに由香里がいたら、ぜってー阻止されそうだけど」


 そうおっしゃり、有名スポーツウェアメーカー「ヴィクトリア」のロゴが胸部に入った、紺の水着をチョイス。


「えー、由香里じゃないですけど、それはあたしが阻止しますよ。もっと可愛いの着ましょうよー」


「由香里がいないと思ったら、代わりにお前が言うんかい。つーてもなあ。ウチ、可愛い系は嫌だぞ。せめてカッコイイ系でないか?」


 かっこいい、かっこいい……みんなで、彼女の身長に似合うかっこいい系を探す。


「これとかどうでしょう?」


 紫のビキニを取り出すまりあさん。脳内着用図をイメージしてみる……。申し訳ないけど、似合わない。


「まりあさん、すんません。自分でもそれは似合わないとわかるんで、パスで」


「ダメですかー」


 物色に戻るまりあさん。


 久美さんのスタイルは、以前ストレッチ動画を送ってもらったとき見たことがあるけど、胴回り含め全体がとても引き締まっている。


 そういう意味では、ビキニは悪くなさそうなんだけど、どうしても上背が足りないから、「子供が無理してる感」が出てしまうのよねえ……。切ない。


「これ、どうでしょう?」


 近井さんが取り出したのは、黒と紫のワンピース。それを映画フィルム状の白い模様が横断ならぬ斜断しており二色に分けているという、とてもおしゃれな印象のもの。


「お、いいっすね。結構気に入りましたよ、これ。後はサイズが合うかだなー」


 面白い水着が色々あるもんですねえ。ああ、肝心の自分のぶんも見繕わないと。


「わたしはこれで」


 まりあさんが選んだのは、胸中央にギャザーが入った、白いワンピース。


「とても似合うと思いますー」


 率直な感想を返す。まりあさんには、白がよく似合う。


「私は……夫と子供がいますから、あまり派手なのは……。あ、でもこれはいいかも」


 近井さんが選んだのは、腹部から下部にかけて白と緑のヤシの木があしらわれた、黒基調のもの。


「派手すぎず、地味すぎずで丁度いいですね!」


 ほかの方も、ご同様の好感触。


「では、とりあえずこれを候補に」


 そういって、抱える彼女。


 さあ、困った。私だけ決まってないじゃない。なんかないかなー。皆さんと手分けして、いい感じのを探す。


「あ、これなんかどーです?」


 優輝さんが出してきたのは、腹部から要部にかけて、飛び跳ねるイルカの模様が入った、青白基調のグラデーション水着。


「ええー……派手すぎません?」


「そんなことないですよー。神奈さんスタイルいいですもん。似合いますって!」


 サムズアップする彼女。


「うーん。とりあえず、試着してみて……ですね」


 というわけで、交代で試着。残りのメンバーがボックスに首を突っ込んで塩梅を見る。


 まず、優輝さん。服の上からだから確実なことは言えないけど、彼女の場合背が高くてスレンダーだから、とても似合っている。サイズも丁度いいようだ。


 続いて、久美さん。みんなで悩んだだけあって、彼女が懸念していた子供っぽさが出ていなくてグッド!


 まりあさん。完璧ですねえ。クロちゃんの黒と合わせると、コントラストがとてもいいかもしれない。


 近井さん。似合ってらっしゃる。子持ちとは思えないおしゃれさ。一人で歩いてたら、ナンパされちゃうかも?


 で、肝心の私ですが……。


「どうでしょう?」


 これをオススメした優輝さんに、まずは尋ねてみる。


「うん、見立て通り! 似合ってますよー」


 とりあえず、彼女からは合格が出ました。審査員交代。


「おー、似合ってんじゃん! ストレッチを教えたかいがあるってもんだな!」


 久美さんもマル判定。でも、すみません。最近はストレッチじゃなくて、ダンスとボクササイズばっかりで……。


 まりあさん、近井さんからもマルをいただき、自分が思ってるより、まだまだこういうのが似合うんだな、と新たな発見でした。


 というわけで、無事決まってお会計。一階のクレープ屋さんでくつろいでいたアメリたちと合流します。


「アメリの面倒を見ていただいて、ありがとうございました、クレープ代、いくらでしょう?」


「いえいえ。いいですよ、これぐらい。おごらせてください。それより、皆さんの水着見るの、楽しみです。海を楽しみにしておきますね」


 ふふ、と微笑む由香里さん。


「すいません。このお返しはいずれ」


 恐縮して、頭を下げる。


「ほんと、気にしないでくださいよ。ところで、あたしので良かったら、帰ったら見せようか?」


「うーん、後のお楽しみにとっとく。それより久美さん、競泳水着とか買ってないでしょうね?」


こいつ優輝に止められた。まー、たまにはこういうおしゃれなのも、いいかもな」


 紙袋を掲げる久美さん。


「ところで皆さん、もうひとつ大事なこと忘れてません?」


 優輝さんがちっちっちっと指を振る。はて?


「クロちゃんの誕生日ですよ!」


 宇多野姉妹と、近井さんとともちゃん除く一同、「あっ」と声を出す。


 先月五月、まりあさんの誕生日だったのに、クロちゃんにプレゼントを渡したものだから、ついクロちゃんの誕生日を祝い終わった気になってた!


 そこをしっかり覚えてるあたり、さすがイベント大好きガール!


「覚えていてくださり、ありがとうございます。厚かましくて、切り出しにくかったのですけど」


 恐縮するまりあさん。そして、クロちゃん。


「クロちゃん、お誕生日近いんですか」


「はい。来月七月十五日を、誕生日ということにしてあります」


 近井さんと、そんな会話を交わされる。


「じゃあ、クロちゃんのプレゼント買わないとですね!」


 ぽんと手を打つ近井さん。


「ですです。せっかくですから、これから買いに行きましょう!」


 かくして、優輝さんの音頭取りで本日第二イベントのため、「クロちゃんのプレゼント買い隊」が結成されました!

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