「お疲れ様でした。二人もまた明日ね」
勉強会もお開きになり、三人にぺこりとお辞儀。
アメリも、「また明日ー! ばいばーい!」と、ケイティちゃん傘の下で手を振る。
三人からも別れの挨拶とお辞儀をいただき、それぞれの家へと帰っていく。
「ふー。バッチリ勉強できた?」
「うん!」
満面の笑顔を浮かべる愛娘。さすが、白部先生。良き哉良き哉。
「じゃ、お夕飯作ろうか」
連れ立って、屋内へと戻る。
明日は体育館でスポーツ。クロちゃんが参加するかは、まだ未確定だけど、白部姉妹とミケちゃんは内定済み。
今日は、コロッケにでもしましょうか。さすがにイチから手作りは辛いので、冷食を揚げるけど。
◆ ◆ ◆
あ~、美味しかった~!
コロッケもたまに恋しくなるわよね。じゃがいもの調理法としては、肉じゃがと双璧なんじゃないかしら?
アメリも、「美味しかった~」と大満足。良き哉良き哉。
あ、そうだ。明日のスポーツウェア用意しないと。
「アーメリちゃん、歯磨きして寝室行きましょ~」
「はーい」
というわけで、移動~!
◆ ◆ ◆
「えーと、この段だったと思うんだけどな……?」
衣類タンスをがさごそ。普段のスウェットじゃ干物すぎるし、白Tデニムは動きやすいけど、スポーツに向いてるかというと……。
たしか、むか~し運動を始めようと思って、三日坊主でタンスの肥やしになった、スポーツウェアがあったはず……。
がさごそ。がさごそ……。
お? これでは?
じゃん! と広げると、ゆったりした灰色のスポーツウェアが出てきました!
いやー、久しぶりだねえ、チミィ!
まだ入るかなあ?
……お、入る入る。ありがとう、我が体質と運動ゲーム!
アメリのスポーツウェアはないから、外出着で代用だね。ショートパンツだし、それほどおかしいことはないでしょう。今度、スポーツウエア買ってあげよう。
さて、明日の予行演習というわけでもないけど、おなじみのボクササイズでもしますかー。
◆ ◆ ◆
「おはよーございま-す」
「おはよー!」
九時半、生涯学習センターのロビーに集合! 椅子に、久美さん、ミケちゃん、クロちゃんが腰掛けてました。
「おはよーさん」
「おはよー」
「おはようございます」
ご挨拶返しをいただく。白部さんたちはまだみたい。
「やはり、優輝さんはいらっしゃらないんですか?」
今日は来られないと、前日伺ってはいたけれど。
「あいつ、ちょっと仕事が山場でね。じゃあ誰が保護者代理するかつったら、スポーツといえばウチでしょってなった」
なるほど。それを理解したところで、もう一つ気になったのが……。
「クロちゃん、来ないかと思ってた」
「お姉ちゃんが、たまには運動してきなさいって」
そうね。彼女、将棋盤に張り付く生活してるだろうし。
「逆に、まりあさんは今日、いっらっしゃらないのね?」
「皆さんがいますし、信頼して一人で行かせてもらえました。あと、仕事もありますから」
ほむ。宇多野姉妹は、順調に親離れ・子離れが進んでる感じかあ。
「あ、そうだ。今、スマホ持ってる?」
「はい。……これです」
黒の、渋いスマホがじゃじゃーん!
「おー、すごいすごい。やっぱり、アプリとか使わせてもらってるの?」
「LIZEと、検索エンジンと、動画サイトと、将棋ソフトですね。おかげで、あまり将棋盤を使わなくなりました」
「あら、そうなんだ」
パチンパチンと音を立てて駒を打つ、彼女のイメージが崩壊してしまった。
「世の中、強い人が多いですね。とても勉強になります」
おお、きりりとした表情が、可愛くも美しい。
「ミケだって、お姉さんだから一人で来れたのよ? 久美まで来なくても良かったのに」
「スポーツを舐めちゃいけないぜ。経験者の指導がないと、怪我の元だからな。怪我で踊れなくなったら、ヤだろ?」
「まあ、それはそうだけど……」
ぐうの音も出ないミケちゃん。ダンスを習う彼女にとって、指導者という存在の大切さが、身にしみるのだろう。研究畑とはいえ、お医者さんも一緒だし、心強いね!
「すみませーん、遅くなりました!」
おっと。そんなことを考えていたら、ちょうど白部姉妹登場!
互いに挨拶を交わし、さっそく、奥の体育館側へと移動。
土足厳禁なので、上履きのない私とアメリは裸足に。これも、今度買ったほうがいいなあ。
「で、今日は何をしましょう?」
「これなんかどう?」
久美さんがスポーツバッグから取り出したのは、二本のラケット。
「テニスですか?」
「んにゃ、バドミントン。由香里の私物でさ、あいつ、昔買ってみたはいいけど、結局続かなかったらしくて。『良かったら使って』って」
あはは、由香里さんにもそういうとこあるんだ。いや、スポーツウェアをタンスの肥やしにしていた私が、笑えた立場じゃないけどね。でも、親近感湧くな。
料金を受付で支払う。アメリたち猫耳人間の利用について、少し係員さんの間で話し合いになったけど、市外子供料金で利用OKという形に落ち着きました。市内の子供料金・五十円が、百円になる程度なので、大差なくてありがたい。
これで、最大二時間の利用が可能に。それじゃ、時間ももったいないし、やっていきましょー!
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