神奈さんとアメリちゃん

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第二百七十七話 ノーラとの一日 その三

公開日時: 2021年7月1日(木) 21:01
更新日時: 2021年8月25日(水) 18:10
文字数:2,067

「ノーラちゃん、何かリクエストあーる?」


 毎度おなじみ、いつものスーパーにやって来ました! 年単位で耳に馴染んだ店内BGMが、癖になっていて心地よい。


 いつもだったらとりあえずチラシチェックから入るんだけど、今日はノーラちゃんにまずはお伺いを立てましょう。


「んー……鶏肉さっき食べたしなー。何がいいだろ?」


 腕組みして首を傾げ、うんうん唸る彼女。


「お魚美味しいよ!」


 アメリが横からプッシュ。


「カン姉。魚でどういうのが美味いと思う?」


「そうねえ。ノーラちゃん、洋食、和食、中華だったらどれが一番好き?」


「んー? どれも好きだぞー」


 ノーラちゃんからも、アメリみたいな力強いお言葉をいただいてしまった。


「アメリは希望ある?」


「何でもいーよー!」


 本家本元からも力強いお言葉。困ったね。それじゃ、最近の傾向から決めますか。


 洋食はさっき食べたでしょう? すると、和食か中華か。で、中華は昨夜食べたから、和食かなー。


「とりあえず、鮮魚コーナー行ってみようか」


 カートを押しながら、三人で鮮魚コーナーへ向かう。


 三月が旬ってことで、サワラにメバル、鯛、ニシン、カマスなんかが並んでいる。あとは、アサリ、ハマグリ、カキ。各種イカとか。


 ふむ。サワラとメバルは、ついこないだいただいたばかりだし……貝は砂抜きが時間かかるし。


「ねえ、二人とも。ビビッときた魚ある? イカでもいいけど」


 顔を見合わせた後、冷蔵ワゴンを眺め回すお嬢様たち。


 あれどう? これどう? なんて言いながらわちゃわちゃ相談してるのをのんびり眺める。ほほえま。


「カン姉、この魚って美味いかー?」


 ノーラちゃんが手にとったのはニシンのパック。


「ニシンか。美味しいよ。ちょっと小骨が多いけどね」


 小声で再び相談に入る二人。


「「これにするー!」」


 意見がまとまったようです。良きかな良きかな


「りょうかーい。煮物と塩焼き、どっちがいい?」


 また、わちゃわちゃひそひそ相談。可愛いねえ。


「「煮物!」」


 ほいほい。じゃあそれで。あとは、副菜とお味噌汁でも作りましょうかねえ。


 このスーパーではちょっとした下処理を無料でやってくれるので、頭と尻尾を落とすのをお願いし、青果コーナーへ。


「ノーラちゃん、野菜の好き嫌いはあるかな?」


「んー……食べたことないの多いから全部はわかんねーけど、セロリとかいうのはダメだった……」


 ふむ。あの臭いは人を選ぶね。実は私も、あれだけはダメだったりする。ミネストローネに入ってると食べられるんだけどねー。


 まー逆に言えば、それ以外は特に好き嫌いないってことかな? 春野菜で何か美味しいものは……。キャベツがおひたしにもお味噌汁にもいいねえ。和食の範疇でしょう。


「よし、キャベツのおひたしとお味噌汁作るね。次はジュースですよー」


 「おおー!」と盛り上がる子供たち。リンゴジュースとコラ・コーラを買って、三種の神器もかごに入れ、ニシンを受け取りお会計! お菓子はまだうめえ棒が結構残ってるし、要らないかな。



 ◆ ◆ ◆



 ただいまの後は、執筆作業再開。二人の会話をBGMに、すいすい筆を走らせる。


「ノーラ、ちょっと九九のテストしてみようよ!」


「えー、自信ねーなー」


 おやおや。アメリ先生の抜き打ちテストが始まるようですよ。


 先生からコピー用紙をお願いされたので、数枚手渡す。


「今、問題作るからね!」


 こつこつ、すらすらと鉛筆を動かす音。そして私の、たまにキーを叩く音。さらに二人が、うめえ棒をさくさくかじる音だけとなる。


「できた!」


 ベッド横のサイドテーブルから時計を持っていくアメリ。


「スタート!」


「うおっ」


 さあ、テスト開始! 再び、こつこつ、すらすらと鉛筆の走る音と、アメリ先生の「おおっ」とか「あっ」とかの小さい声が聞こえるだけになる。アメリ先生、態度でヒント出しちゃダメですよ~。


 そんな時間が過ぎていき。


「終わりー!」


「だー! 疲れたー!」


 終わったようです。


「じゃあ、採点するね」


 さあ、ノーラちゃんの点数やいかに!?


「六十点!」


「やったー!」


「あらー! すごいじゃない、おめでとう!」


 思わず二人の方に椅子を向け、拍手を送る。「ふへへ~、頑張ったからな~」と照れるノーラちゃん。可愛いなあ。


 アメリたちに比べたら少し勉強の歩みは遅いけど、それでも驚異的な学習速度だ。ほんとにすごいな、猫耳人間って。


「頑張ったノーラちゃんに花マル描いてあげて」


「うん!」


 赤ペンを渡すと、くるくると描く先生。百点満点じゃないけどいいよね。子供は褒めて伸ばすもの!


「わー。嬉しい~! ふへへ~」


 テスト用紙を掲げ、とろけた表情で眺めるノーラちゃん。ほほえまですねー。


「そういえばノーラちゃん。キャッチボールのほうはあれから上達した?」


 勉強で対になる(?)スポーツをふと思い出し、尋ねてみる。


「クミ姉から、すごく筋がいいって褒められたぞ! もう、だいたい捕れる!」


 へー。そりゃ大したもんだ。久美さんも付き合いがいいというか、ほんと子供好きよねー。


 こんな感じでほのぼのした時間は過ぎていき、炊飯タイム。今日はノーラちゃんがいるので一合強を炊く。


 さーて、もうひと仕事頑張るぞい!

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