「ノーラちゃん、何かリクエストあーる?」
毎度おなじみ、いつものスーパーにやって来ました! 年単位で耳に馴染んだ店内BGMが、癖になっていて心地よい。
いつもだったらとりあえずチラシチェックから入るんだけど、今日はノーラちゃんにまずはお伺いを立てましょう。
「んー……鶏肉さっき食べたしなー。何がいいだろ?」
腕組みして首を傾げ、うんうん唸る彼女。
「お魚美味しいよ!」
アメリが横からプッシュ。
「カン姉。魚でどういうのが美味いと思う?」
「そうねえ。ノーラちゃん、洋食、和食、中華だったらどれが一番好き?」
「んー? どれも好きだぞー」
ノーラちゃんからも、アメリみたいな力強いお言葉をいただいてしまった。
「アメリは希望ある?」
「何でもいーよー!」
本家本元からも力強いお言葉。困ったね。それじゃ、最近の傾向から決めますか。
洋食はさっき食べたでしょう? すると、和食か中華か。で、中華は昨夜食べたから、和食かなー。
「とりあえず、鮮魚コーナー行ってみようか」
カートを押しながら、三人で鮮魚コーナーへ向かう。
三月が旬ってことで、サワラにメバル、鯛、ニシン、カマスなんかが並んでいる。あとは、アサリ、ハマグリ、カキ。各種イカとか。
ふむ。サワラとメバルは、ついこないだいただいたばかりだし……貝は砂抜きが時間かかるし。
「ねえ、二人とも。ビビッときた魚ある? イカでもいいけど」
顔を見合わせた後、冷蔵ワゴンを眺め回すお嬢様たち。
あれどう? これどう? なんて言いながらわちゃわちゃ相談してるのをのんびり眺める。ほほえま。
「カン姉、この魚って美味いかー?」
ノーラちゃんが手にとったのはニシンのパック。
「ニシンか。美味しいよ。ちょっと小骨が多いけどね」
小声で再び相談に入る二人。
「「これにするー!」」
意見がまとまったようです。良き哉良き哉。
「りょうかーい。煮物と塩焼き、どっちがいい?」
また、わちゃわちゃひそひそ相談。可愛いねえ。
「「煮物!」」
ほいほい。じゃあそれで。あとは、副菜とお味噌汁でも作りましょうかねえ。
このスーパーではちょっとした下処理を無料でやってくれるので、頭と尻尾を落とすのをお願いし、青果コーナーへ。
「ノーラちゃん、野菜の好き嫌いはあるかな?」
「んー……食べたことないの多いから全部はわかんねーけど、セロリとかいうのはダメだった……」
ふむ。あの臭いは人を選ぶね。実は私も、あれだけはダメだったりする。ミネストローネに入ってると食べられるんだけどねー。
まー逆に言えば、それ以外は特に好き嫌いないってことかな? 春野菜で何か美味しいものは……。キャベツがおひたしにもお味噌汁にもいいねえ。和食の範疇でしょう。
「よし、キャベツのおひたしとお味噌汁作るね。次はジュースですよー」
「おおー!」と盛り上がる子供たち。リンゴジュースとコラ・コーラを買って、三種の神器もかごに入れ、ニシンを受け取りお会計! お菓子はまだうめえ棒が結構残ってるし、要らないかな。
◆ ◆ ◆
ただいまの後は、執筆作業再開。二人の会話をBGMに、すいすい筆を走らせる。
「ノーラ、ちょっと九九のテストしてみようよ!」
「えー、自信ねーなー」
おやおや。アメリ先生の抜き打ちテストが始まるようですよ。
先生からコピー用紙をお願いされたので、数枚手渡す。
「今、問題作るからね!」
こつこつ、すらすらと鉛筆を動かす音。そして私の、たまにキーを叩く音。さらに二人が、うめえ棒をさくさくかじる音だけとなる。
「できた!」
ベッド横のサイドテーブルから時計を持っていくアメリ。
「スタート!」
「うおっ」
さあ、テスト開始! 再び、こつこつ、すらすらと鉛筆の走る音と、アメリ先生の「おおっ」とか「あっ」とかの小さい声が聞こえるだけになる。アメリ先生、態度でヒント出しちゃダメですよ~。
そんな時間が過ぎていき。
「終わりー!」
「だー! 疲れたー!」
終わったようです。
「じゃあ、採点するね」
さあ、ノーラちゃんの点数やいかに!?
「六十点!」
「やったー!」
「あらー! すごいじゃない、おめでとう!」
思わず二人の方に椅子を向け、拍手を送る。「ふへへ~、頑張ったからな~」と照れるノーラちゃん。可愛いなあ。
アメリたちに比べたら少し勉強の歩みは遅いけど、それでも驚異的な学習速度だ。ほんとにすごいな、猫耳人間って。
「頑張ったノーラちゃんに花マル描いてあげて」
「うん!」
赤ペンを渡すと、くるくると描く先生。百点満点じゃないけどいいよね。子供は褒めて伸ばすもの!
「わー。嬉しい~! ふへへ~」
テスト用紙を掲げ、とろけた表情で眺めるノーラちゃん。ほほえまですねー。
「そういえばノーラちゃん。キャッチボールのほうはあれから上達した?」
勉強で対になる(?)スポーツをふと思い出し、尋ねてみる。
「クミ姉から、すごく筋がいいって褒められたぞ! もう、だいたい捕れる!」
へー。そりゃ大したもんだ。久美さんも付き合いがいいというか、ほんと子供好きよねー。
こんな感じでほのぼのした時間は過ぎていき、炊飯タイム。今日はノーラちゃんがいるので一合強を炊く。
さーて、もうひと仕事頑張るぞい!
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