今日は平日だけど、白部さんが延び延びになっていたスマホ購入のために出かけるので、おなじみの勉強会はお休み。
休息も込めて、ミケちゃん、クロちゃんが純粋に遊びに来ています。
「今日は、和の遊びをしない?」
「っていうと?」
ミケちゃんがアルピス・ソーダを飲みながらクロちゃんに質問を返す。今日のお菓子と飲み物は、ミケちゃん経由で優輝さんからのいただき物です。ありがたいことに、私もマスペをいただきました。
「ああ、うん。久しぶりにどうかなって思って、お手玉持ってきたんだ。あと、おはじきと、かるたとか」
「そーね。『大航海世代』とボクササイズばかりってのも芸がないし、ミケはいいわよ。アメリは?」
「いいよー」
さくっと話がまとまったようです。
ミケちゃん、本当にアメリに劣等感とか抱かなくなったのね。かといって、プライドが折れたようにも見えないし。やっぱり、いい意味で吹っ切れたんだな。一歩一歩成長していく子供たちに、しみじみ。
そんな私の思案をよそに、クロ先生指導の下、てんてんてんと、お手玉を左右で交互にキャッチして遊ぶ子供たち。
「久しぶりだから、コツが思い出しづらいわね……」
「アメリもー」
「もう一度、垂直上げの練習からする?」
一歩戻ることを提案するクロちゃん。
「そうね。一度基本に立ち返るのも大事だって、昨日のレッスンで教わったわ」
そんなわけで、しばし垂直に投げ上げては受け止め、を繰り返す三人。
というか、ミケちゃんだったかノーラちゃんだったかが、「垂直上げ飽きた」って、左右の手で交互にキャッチするのに切り替えたんじゃなかったかな。
私は小休止ということで、マシュマロをもにゅもにゅ頬張りながら、眺め中。
「そういえばさ、手を動かすと頭の働きが良くなるっていうね」
子供たちに、なんとない雑談を投げかけてみる。「へー」と感心する彼女たち。
「そーなの、おねーちゃん?」
「うん。私も詳しいわけじゃないんだけど。白部さんのほうが詳しいかも知んない」
再び「へー」の三重奏。
「じゃあ、あやとりやってみる? 今日、それも持ってきてるんだ」
「おおー! やろー!」
「ナニソレ?」
あやとりを知らないミケちゃんに、レクチャーするクロ先生。
お手玉はもういいの? まあ、こういうすぐに興味が別に移っちゃうのって子供らしくて可愛いわよね。
「なんとなくわかったわ。やってみましょ」
三人であやとり開始。あのプライドの高いミケちゃんが、素直に先生の教えに従って楽しんでいる。ほんとに、一皮剥けたなあ。
さて、いつまでも見ててもあれだし、みんなの声をBGMにお仕事しましょ。
◆ ◆ ◆
しばらく仕事に打ち込んでると、突然硬いものの上に、同じく細かい硬いものがばらまかれたような音が響く。
何ぞ? と思って三人の方を見ると、あやとりを終えて、おはじきを用意していました。ほほう、今日はレトロ遊びフルコースですか?
例によって、初体験のミケちゃんがクロ先生からレクチャーを受け、試合開始。私も、再度仕事に戻る。
「あーっ! 外したー! あとちょっとだったのにぃ~!」
ミケちゃんの悔しそうな声。高すぎるプライドは丸くなったけど、勝負事になると熱くなるのは相変わらずだねえ。
「ミケは力みすぎなんだよ。肩の力抜くといいよ」
「むう……。次はそうしてみるわ」
先生が的確なアドバイスを出す。一日の長ってやつだねえ。
そして、一巡し。
「当たったー! 見た、見た!? 取れたー!」
今度は大はしゃぎ。可愛いなあ。
「おおー! ミケ、初めてなのにすごい!」
「でしょ、でしょ? ミケってば、スゴイのよ!」
褒められて、すぐ調子に乗っちゃうとこも可愛いな。思わず微笑んでしまう。
◆ ◆ ◆
じゃらじゃらと、おはじきをしまう音が聞こえてくる。お、するとお次は?
「神奈お姉さん。良ければ一緒にやりませんか?」
クロちゃんから声をかけられたのでそちらを見ると、やはりかるたを用意してました。
「あー、一緒に遊びたいのはやまやまだけど……そうだ。詠み役ならやろうか? 仕事の片手間にできるし」
「はい、お願いします」
というわけで、詠み札を受け取りデスクに再着席。シャッフルする。その間に、ルールをミケちゃんにレクチャーするクロ先生。
「なんとなくわかったわ。やってみましょ」
「じゃあ、詠んでいいかな? に。憎まれっ子世にはばかる」
一斉に、「に」、「に」、「に」……と連呼する三人。札を探してるね。
そして、「ハイ!」とクロちゃんの声。
「むうう~! 文字通り、タッチの差で負けたあ~っ!」
「おおー、次頑張ろう!」
相変わらずなミケちゃん。
「お姉さん、次お願いします」
「ほーい。れ。れう薬は口に苦し」
またも、「れ」の連呼。私はその間に、ちょこちょこペンを走らせる。
「ハイ!」
ミケちゃんの声。
「取った、取ったー!」
「おおー。おめでとー、ミケ」
アメリちゃんは、マイペースですねえ。
こうして試合は進んでいき、ラストの札。
「お。鬼に金棒」
「お」連呼。
「ハイ!」
おお、愛娘の声だ。有終の美を飾りましたか。
「みんな、お疲れ様。お姉さんも、ありがとうございました。じゃあ、数えようか」
一番多く取ったのは、やはり慣れてるクロちゃん。次いで、ミケちゃんが二位。残念ながら、うちの子はラスでした。
「むう~、悔しいわね。でも、初挑戦で二位ってすごくない!?」
「うん。十分上手いと思うよ」
「ミケは、反射神経いいんだね!」
密かに、八歳児とは思えぬ語彙を使う愛娘。しかし、アメリもクロちゃんも、人を立てるのが上手いね。
「ふふ。もう一回やっていいかしら?」
「どうですか、お姉さん?」
「いいよー。じゃ、シャッフルするねー」
というわけで、第二ラウンド開始。……クロちゃん、二度目の貫禄勝ち。
「くうう~! あと一枚がー! もう一回! もう一回やりましょ!」
「ミケは負けず嫌いだね。お姉さん、どうでしょう?」
「あー、さすがに仕事に集中したいかな。ごめんね」
申し訳ないけど、今大事なとこなの。
「わかりました。じゃあ、ボクが詠み役やるから、一対一で」
「負けないわよ!」
「おおー。頑張る!」
クロちゃんに詠み札を手渡し、仕事に集中するのでした。
◆ ◆ ◆
「勝ったー!」
ミケちゃんの、嬉しそうな声。
「おお~。負けた」
「二人とも、お疲れ様」
ミケちゃんの勝利で、決着が着いたようです。
さすがに三回もやって疲れたのか、かるたはやめにして、おしゃべりに興じる三人。クロちゃんじゃないけど、お疲れ様。お茶、淹れてきてあげよう。
◆ ◆ ◆
「今日は、ありがとうございました」
「アメリ、神奈おねーさん、またねー!」
夕方の帰宅時間。ぺこりとお辞儀する二人。
「二人とも、また遊びに来てね。じゃあ、アメリ、クロちゃん。車へ」
こうして、宇多野家へクロちゃんを送り、子供たちのほほえまエンジョイタイムは終わったのでした。
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