月曜。やはり三十日からの一連の騒動もあり真留さんとの打ち合わせは明日になりそう。まあ、このぐらいなら誤差の内でしょう。
お昼と晩の買い物も済ませ、今日もスーパーで注目株のアメリちゃんでした。
さすがに、ことここらあたりに至ると、車での移動なら久美さんの護衛は大げさでしょうという話になり、二人で行ってきた次第です。
それにしても、アメリのよく動く耳としっぽの可愛いこと! 我が子ながら、ラブリーすぎません? 屋外でもこれを堪能できるようになったのは素晴らしいことだわ。
そんな反芻メモリアルはさておき、デスクでプロットに打ち込んでいると、突如スマホが鳴りました。
はて、どなたでしょう? と送信者を見ると優輝さん。
「こんにちはー。どうされましたー?」
「こんにちは。唐突なんですけど、前飲み会やろうなんて話してたじゃないですか。せっかくだから、今日いかがですか? 白部さんはご同意されてます」
「飲み会ですか。いいですねー。でも、アメリどうしましょう。大人の宴席にいても楽しくないですよね」
「あー、子供たちなら由香里に面倒みてもらおうと思ってます」
なるほど。彼女呑めないもんね。
「なんだか、私たちだけで悪いですねー」
「まあ、由香里もそのへんは織り込み済みですし、子供と遊ぶの楽しいって言ってますから」
仕事の割当を脳内電卓で弾いてみる。さすがに深夜に及んだりしないだろうし、明日までに仕上げられるかな。
「では、私も参加で」
「やったー! じゃあ、六時から始めましょう。アメリちゃんのごはんは、こちらでご用意しますよ」
「あら、悪いですね」
「まあ、ものはついでってやつです」
というわけで、夜から飲み会です。楽しみですねえ。お花見では車だから呑めなかったものね。
「アメリちゃーん。六時になったら、お隣でお姉ちゃん、飲み会します。なので、向こうで由香里さんたちと遊んでてね」
「おお? 飲み会?」
「お酒飲むの。前、優輝さんと約束しててね」
「わかった!」と応えるアメリちゃん。
さて、仕事にスパートかけますかー。
◆ ◆ ◆
六時になったので、かくてるハウスにお邪魔しています。
さっそく、皆さんとご挨拶。
「一応、お尋ねするんですけど、やはりまりあさんは欠席ですか?」
まりあさんとクロちゃんの姿が見当たらないので、優輝さんに尋ねてみる。
「ええ。一応お声がけはしたんですけど、自粛されまして。まあ、無理に誘うものでもないですからね」
何ぶんまりあさんの性格だから、無礼講な間柄とはいえ、呑むたびに派手にやらかしてきたので自重も無理ない。
「じゃ、みんなはこっちでご飯食べましょうね」
由香里さんが自家製お子様ランチを手にダイニングから出てくる。
再度往復し、自分のぶんはちょっとだけ量多めなお子様ランチ。
「じゃあ優輝ちゃん、こっちはこっちで楽しくやらせてもらうね」
「世話かけるね。じゃ、行きましょーか」
「アメリをよろしくお願いします」
白部さん共々、由香里さんにお辞儀し、ダイニングに向かう。
すると、久美さんがちょうどお刺身を配膳してるところだった。
「よっ! こんばんは!」
気さくにご挨拶してくる彼女に、ご挨拶返しする私と白部さん。
「美味そうだろー。初鰹だぜ。生姜ダレもいいけど、七味マヨポン酢が絶品でさ、個人的なお勧めはこっち。これで食べたい人は言ってくれよな」
上機嫌で、コレクションの日本酒を注いで回る。
「ありがとうございますー。美味しそうですねー」
「おう。今日は飲兵衛の面目躍如ってことで、ウチがアテ作らせてもらうぜ。ささ、遠慮せず掛けて掛けて」
彼女に促され着席。
「よし、準備オッケー。そんじゃ、全員着席したところで……かんぱーい! &いただきまーす!」
久美さんの掛け声で、皆飲み始める。まずはお酒だけで。おっと、これはスッキリ辛口!
「上物なんだぜ、それ。こういうときにこそ、出したいってもんよな!」
彼女は案外優輝さんとキャラが近いかもしれない。「みんなで愉しむ」が根本にある。
そして鰹だけど、久美さんお勧めの方法で試してみる。うちでもこれに近いのは以前やったことがあったっけね。うん、やはり美味しい。そして、これに辛口の日本酒が合うんだなあ。
で、お酒が進むと話も弾むもので。ここ最近の猫耳人間に関する順風で盛り上がりなう。
「いやー、マスターアジアさつきちゃんとしては、ここで姉さんに続いて何か一品作りたいっすねえ」
「やめとけやめとけ。ウチぐらい強くないと、手元が危ないぜ」
仰る通り、みんな頬が桜色なのに、久美さんだけ全く平気。まさに酒豪。
「つーわけで、次はアレ作るか」
冷蔵庫に向かう彼女。肉と思しきものを取り出し、焼き始める。同時にタレを調合している模様。
「はーい、おまっとさん。サムギョプサルだぜー。こいつはマッコリでいこう」
おお、マッコリとか意外と飲む機会がなかったなー。ほんとに、久美さんは世界中のあらゆるお酒が好きなんだろうなあ。
「やっぱり、斎藤さんってカクテルも作れたりするんですか?」
「おう。本職には及ばねーけど、手習い程度には」
白部さんの素朴な疑問に答える彼女。
「なんなら、なんか作ろうか?」
「そうですね……。アップルサイダーで何かお願いしてもいいですか?」
「りょーかい。あれでいってみっか」
バーボンと書かれた瓶を取り出し、何やら色々混ぜ合わせてシェイカーでシャカシャカ。おお、これは見応えがある!
「どうぞ。アップルサイダー・バーボンだぜ。まんまだな。イギリス風のだから、サムギョプサルに合うかわからんけど」
「ありがとうございます~。あら、美味しい~」
美味しそうに飲み干す白部さん。なんだか、私もオーダーしたくなってきた。
「あの、マスペで何かできますか?」
「あるぜ、とっておきのやつ!」
そう言うと、パッソアと書かれたラベルのお酒とマスペを軽くシェイクしてカクテルグラスに注いでくださる。
「お待ちどう。マスペにはパッソアがすごく合うんだ」
へー。ごくっ……あら、爽やか! パッソアの風味なのだろう。柑橘系の香りが実に合う。
「美味しいですねえ~!」
感動を口にする。
「同じマスペ飲みに言ってもらえるのは、最高の褒め言葉だぜ」
サムズアップする彼女。
こうして、楽しい飲み会は久美さん大活躍で進行。
「いやー、もう飲めないし食べられないですね~。ごちそうさまでした」
「お粗末! 愉しんでもらえたようで良かったぜ」
そう言う久美さんは、ケロリとした表情で私に振る舞ったのと同じ、マスペとパッソアのカクテルを飲んでいる。ほんと、つくづく酒豪だなー。
「それでは、お暇しますね。今日は、楽しかったです」
ちょっとふらつくけど立ち上がり、リビングに向かう。
リビングでは、アメリたちがダンスゲームに興じているところだった。時計を見ると八時。結構長居しちゃったな。
「アメリちゃーん、帰りますよー」
「おお~。おねーちゃん、お顔真っ赤ー」
「ふふふ、ですよねー」
ハイになって熱い頬を擦る。
「送っていきますね」
由香里さんが立ち上がり、私たちと白部さんたちを先導してくださる。お世話かけます。
こうして彼女に見送られて帰宅。帰るとばたんきゅーでした。
おやすみなさい。
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