「それでは、アメリをよろしくお願いします」
「はい。責任を持ってお預かりします」
お隣さんの玄関で、おねーちゃんと優輝おねーちゃんが、お互いにふかーく、ぺこりとお辞儀。
「それじゃアメリ、いい子にしてるのよ?」
うにゅう。頭撫でられちゃった。えへへ。
「はーい! 優輝おねーちゃん、よろしくお願いします!」
「うんうん。自分のうちだと思って、気楽に過ごしていいからね」
おねーちゃんは帰っていって、アメリはそのままお隣さんにお邪魔!
今日は、みんなでお隣りにお泊まり会なの!
「お泊まり会、楽しみ!」
リビングにミケ、クロ、ノーラ、そしてともちゃんが座って喋ってたので、アメリも座ってお話に加わる。
「なんのお話ししてたの?」
「ミケが、もうすぐ誕生日でしょ? そしたら、NKM33のオーディション受けるのかなって」
クロが、話をまとめてくれる。
「もっちろん受けるわよ! すぐに千多ちゃんに、並んでみせるんだから!」
胸を反らすミケ。でも……顔がこわばってるし、声も上ずってるよ。
「ダイジョーブかー? なんか、自信マンマンには思えないぞー」
ノーラも、同じことを思ったみたい。
「ヘーキよ! このミケよ!? みんなのおねーさんよ!? まっかせなさーい!」
胸をドンと叩くけど、相変わらず表情と態度が一致していないよー。
「とも、応援してるからね!」
「ダイジョーブ! うん、ダイジョーブよ、ダイジョーブ!」
自分に、言い聞かせてるみたい。少し、話題変えたほうがいいかも。
「そういえば、クロはアマチュア大会、優勝したんだよね」
「うん。お陰様で。これで、プロに一歩近づいたよ」
はにかむクロ。一方、こわばるミケ。おお……話題選び、失敗しちゃった。
「おーっす、ちびっこどもー。今日も仲がいいなー」
そこに、久美おねーちゃんがやってきた! ご挨拶しながら、「助けて!」と視線を送る。
「ん?」
一同を見回す、久美おねーちゃん。
「ああ……なるほどな。四人で『大航海世代』でもやってたらどーだ? トモ子の相手はウチがするからさ」
「友美だよ、久美おねーちゃん! 覚えてー」
「あ、いや悪い。ナントカ子って呼ぶのは、愛称……ニックネームだと思ってくれ。クロ子、折り紙借りていいか?」
頭を掻く、久美おねーちゃん。ともちゃんには、よわよわだ!
「はい。ご自由に使って下さい」
「よーし、ウチの必殺のな、『お姫様』折っちゃる。一緒に折ろうぜ」
「じゃあ、ミケはゲームの用意するわね」
別々に遊び始める。ともちゃんも、早く大航海世代遊べるようになるといーね!
台所から戻ってきた優輝おねーちゃんが、お菓子と飲み物を配ってくれるので、みんなでお礼。
優輝おねーちゃんも、折り紙に加わりました!
◆ ◆ ◆
今日の晩御飯は、カレー。由香里おねーちゃんが作ってくれたよ!
「いただきます!」
美味しい! 牛さんのカレーだ!
「由香里おねーちゃん、美味しい!」
「ありがとう。いっぱい作ったから、おかわりもあるよ」
「おおー!」
みんなも、お礼を言って、美味しい美味しいって食べてる。
「やっぱり、大人数のときはカレーっすよねえ~。林間学校とか思い出すっす」
さつきおねーちゃんも、美味しそう。
「りんかん学校って何?」
「学校行事っすね。全校生徒で、キャンプするんっすよ」
お水を飲みながら、さつきおねーちゃんが説明してくれる。
「おおー! 楽しそう!」
「楽しいっすよー。優輝ちゃんの、キャンプ趣味の始まりっすもんね」
「うん。思えば、アレで楽しさを覚えたのが始まりだったねえ」
うんうん頷く、優輝おねーちゃん。
「アメリもやりたいな!」
「そのうち、機会があると思うよ。一般学級の子と、合同かはわからないけど」
由香里おねーちゃんが、ノーラのおかわりをよそいながら言う。
こんな感じで、晩ごはんも楽しく進みました!
◆ ◆ ◆
「えーっと、0.5掛ける……」
夜は、みんなで宿題。ノーラがまた、「頭がフットーしそーだぞー!」って悲鳴あげてる。
「どれ。えっと。少数ってさ、たとえば0.7とかだったら、まず最初に、全部十倍しちゃうと楽なんよ。で、最後にその十倍したのを、十分の一してみ」
四人のおねーちゃんが、みんなでお勉強を見てくれてる。ノーラは、久美おねーちゃんがコーチ。
「おー? おお!? おおお! ほんとだ! 計算しやすいぞー!」
「な?」
「さっすがクミ姉! アタシのししょーだ!」
久美おねーちゃんに、がばっと抱きつくノーラ。
「照れるなー。ま、この調子で次も行こうぜ」
二人で手をパチンと合わせて、次の問題へ。
「アメリちゃんは、さっきから質問がないけど、順調ってこと?」
「うん!」
「大したものねー。あ、代わりといっちゃなんだけど、麦茶のおかわり持ってきてあげる」
由香里おねーちゃんに、感心されちゃった。
こうして、宿題タイムも楽しく進んでいきました!
◆ ◆ ◆
お風呂、気持ち良かったー! 前、お泊りしたときも思ったけど、うちのより広くて、手足が伸ばせるのがいいよね!
誰のものかわからなくなるから、脱いだ服はレジ袋と紙袋に入れて、明日お持ち帰り。
「上がったよー」
アメリたちは和室の客間で寝るように言われてるので、そっちでお布団敷いてる。ミケも一緒。みんなパジャマ姿!
「よーし、全員揃ったわね。女が集まって、寝るときすることといえば!」
「「いえば?」」
「恋バナよ! 恋バナ!」
「「恋バナ?」」
ミケ以外の四人で、首を傾げる。
「好きな人の話をするのよ! ミケは、なんといっても千多ちゃんね! もう、カワイイが全部詰まってるの!」
「おお。そーゆーのなら、アメリはおねーちゃん! すごく優しい!」
「アタシは早井キャプテンだな! でも、クミ姉も大好きだ!」
「ボクは……富士田七冠かな。やっぱり、今目指す目標だよ」
「ともは、アメリちゃんが好きー!」
あとで由香里おねーちゃんに教えてもらったけど、このときアメリたちがした「恋バナ」は、本当の恋バナとは、ずいぶん違うものだったみたい。
「でも、まだ意味は知らなくていいかな」って、由香里おねーちゃんは、ふふって微笑んでたっけ。
◆ ◆ ◆
「アメリがお世話になりました……あふ……すいません」
翌朝、おねーちゃんがあくびをしながら、優輝おねーちゃんにご挨拶。
「いえいえ。また、いつでも大歓迎です。では、お二人ともお元気で!」
優輝おねーちゃんに手を振られ、こちらも振り返しながら、自分のおうちにゴールイン!
お泊まりも楽しいけど、自分のおうち、落ち着くね!
「サンドイッチ、すぐ作っちゃうから、学校に行く準備してね」
「はーい!」
昨日着た物を洗濯機に入れて、教科書をランドセルに詰め替える。あ、みどりんにお水もあげないと。
お泊まり会、楽しかったなー。また、みんなとしたいな!
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