神奈さんとアメリちゃん

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第三百四十三話 ほほえま児童公園、三たび!

公開日時: 2021年9月6日(月) 21:01
文字数:2,536

「おねーちゃん!」


 十時頃、仕事に打ち込んでいると、ダンスゲームに打ち込んでいたアメリちゃんから突如声をかけられました。


「ほい、なんでしょ?」


「公園で遊びたい!」


 ダンスを中断し、矢印が流れていく画面を背に両拳を胸に当て、お願いしてくる。


 ふむ、と窓の外を見てみる。かすかにゆったり雲が流れているだけの、実にいい天気。


 ベッド脇に移動して窓を開けると、気温もほど良く暖かで、爽やかな風を感じる。


 うん! こんな日にお出かけしない手はないね!


「よっし! お出かけしましょう!」


「やったー!」


 バンザイした後、ゲームを終了させ、外着に着替え始めるアメリちゃん。こらこら、さすがにそれはカーテン閉めてから。


 私は、「よろしければおいでください」と、挨拶と皆さんに児童公園に向かう旨をLIZEに残し、着替えとメイクを始めるのでした。


 お昼の材料がないから、帰りに例のスーパーに寄ろうっと。バッグとお財布も持っていきましょ~。



 ◆ ◆ ◆



 本日の移動手段は自転車。いやー、風が気持ちいいなあ!


 とうちゃーく!


 自転車を邪魔にならないところに停め、奥に進んでいくと「猫耳のおねーちゃんだー!」と、未就学児と思しき子供たちに囲まれるうちのお嬢様。


 ふふ、うちのおチビさんも、さらにちっちゃい子供にとってはお姉ちゃんなんだね。ほほえま!


 今日は土曜日なので、小学生らしき子供たちからも「あれ、例の猫耳の……」と、もの珍しそうに見られる。そういえば、このぐらいの年齢の子とは猫耳オープン後、あまり遭遇する機会がなかったなあ。


 などと考え事をしていたら、「アメリおねーちゃーん!」と手を振りながら、見覚えのある人影が砂場から走り寄ってきました。この児童公園でできた人間のお友達、ともちゃんです。


「おお~! ともちゃーん!」


 仲良く手を握って、るんるんと腕を振る二人。ほ、ほほえま~!


「こんにちは。お久しぶりです」


 すると、こちらも見覚えのある方が。ともちゃんのお母さんだ。


「こんにちはー。お久しぶりです。その節は、アメリがお世話になりまして」


 互いにお辞儀。


「うちの子、あれからアメリちゃんに会いたいってずっと言ってまして。会わせてあげられて良かったです」


「あ~、すみません。あれからなかなか、こちらに来る機会がなくて」


 後頭部を撫でて恐縮。


 肝心の二人のほうを見ると、砂場でさっそく遊び始めたようです。


 お母さんと砂場のそばに向かいながら、世間話。私が連載持ちの漫画家であることを話すと、「今度、拝見してみますね」と嬉しいお言葉をいただく。


 すると、「神奈さーん!」と、聞き覚えのある声が。声のしたほうを見ると、優輝さんと久美さん、ミケちゃん、白部姉妹が自転車を停めて(久美さんは徒歩だけど)、こちらにやってくるのが見えました。


「こんにちはー。いらっしゃったんですね」


「はい。ノーラちゃんが『運動したい!』と乗り気で」


 良きかな良きかな


「で、ウチがトレーナーってワケ」


「クミ姉すげーんだぞ! 足で走ってるのに自転車よりはえーの!」


 瞳キラキラノーラちゃん。やっぱり、運動のできる人に憧れるんだね。


「あたしは、久美さんがノーラちゃんにつきっきりになるので、ミケの付き添いです」


 そんなわけで五人とも、ともちゃんのお母さんと相互にのんびりと自己紹介を済ませました。あー、もう! ほのぼのの極み! 良きかな良きかな


 久美さんと白部姉妹は雲梯うんていに移動して運動とその見守りを始め、優輝さんとミケちゃんもスマホをBGMにストリートライブを開催し始めたので、再びお母さんと立ち話。


 ともちゃんご一家のお名前は、近井ちかいさんだそうで、公園の割とすぐそばに住んでるとのこと。


 そういえば、クロちゃんは来ないのかな? 近井さんに「失礼します」とお断りしてLIZEをチェックすると、クロちゃんはまりあさんと一緒に、F駅そばの将棋教室に見学に行ってるとのこと。ほえ~!


 本気で棋士を目指してるんだなあ。なれるといいなあ。


 とりあえず、クロちゃんの事情はわかったのでスマホをしまい、近井さんと雑談再開。


 近井さんはなんとなく専業主婦だと思ってたけど、Webデザイナーだそうでちょっとびっくり。まあ、私もパッと見で漫画家に見えないし、そんなもんか。


 せっかくだからと、この機に連絡先を交換してみました。


 おっと、すっかりおしゃべりに夢中になってしまった。うちの愛娘は、今何してる感じでしょ。


 砂場を見ると、よくわからない謎生物……物体? の立像が建ってました。Oh、ジス・イズ・アート。


 砂場にはともちゃん以外の子も集まっていて、アメリを中心に謎アートの生成に励んでいます。このあたりで、砂アートブームが来るかも。


 と、そんなこんなでほのぼの過ごしていると、近井さんのポケットからスマホのアラームが。取り出し、確認する彼女。


「すみません。そろそろお昼の用意しないといけないので失礼しますね」


 頭を下げられるので、こちらも下げ返す。そっか、もうそんな時間か。私たちも買い物行かないとな。


「ともちゃーん、またねー!」


 近井さんに連れられていくお友達に、バイバイするアメリ。ともちゃんもまた、「またねー」と手を振り返す。


「優輝さん」


 ノリノリでミケちゃんのパフォーマンスを応援している彼女に話しかける。


「はい?」


「お誘いしておいてなんですけど、私たちお昼の買い物しないといけないので、お先に失礼しますね」


「ああ、もうそんな時間ですか。あたしたちは、もう少し遊ばせていきますね。では、また」


 互いにお辞儀し、別れを告げる。


 雲梯から鉄棒に遊具を変えたノーラちゃん組ともお別れの挨拶をし、砂場に再度向かう。


「アメリちゃーん。お買い物の時間ですよー」


「おお? もっと遊んでちゃダメ?」


「うーん。いいけど、そのぶんお昼ごはんが遅くなっちゃうよ?」


 「うにゅう」と考え込むお嬢様。


「わかった。じゃあみんな、また遊ぼーねー!」


 砂場のお友達に手を振り、水道で手洗いとスコップ&バケツの水洗い。ミケちゃんやノーラちゃんともお別れを済ませ、新しく友達になった子たちの話をしながら自転車置き場へと向かうのでした。


 それにしても、あっという間に人気者になったねえ、うちの子は。やっぱり愛嬌があるよね、アメリって。


 そんなことを考えながら、自転車を漕ぎ始めるのでした。

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