休憩も十分取ったので、二巡目開始です!
今度は逆回りでぐるっと見ていこうという話になりました。
「ルリ姉! これ、テレビで蹴ってたやつだな!」
「それはサッカーボールっていって、サッカーっていうスポーツやるためのものだよ」
ノーラちゃんが興味を示したのはサッカーボール。
「おー! アタシもやってみてー!」
「うーん、ノーラちゃんの場合は……」
白部さんが難色を示す。ノーラちゃんの長いスカートではとてもサッカーは無理だ。かといって、しっぽを晒すわけにもいかない。
「えー……」
明らかに不平そうなノーラちゃん。アクティブな彼女のことだから、さぞやりたいだろうなあ。
「なあ、ノラ子。サッカーは無理だけど、こっちなんかどうだ?」
隣の露店で、久美さんが野球のボールとグラブを手に取る。
「おー? それもテレビで見たことあるな!」
「ウチでよかったら、暇なときキャッチボール付き合うぜ?」
「ほんとか!? ルリ姉! やりたい、やりたい!」
ぴょんぴょん飛び跳ねそうな勢いで、白部さんに食いつくノーラちゃん。
「うん、じゃあ買っていきましょうか」
グラブとセットで買うということで、これまた少し値引きでご購入。ノーラちゃんが、「えへへー」と嬉しそうにグラブをはめて見つめる。
「うん、ノラ子が買うならウチも買わなきゃだな。もう片方の、買った!」
久美さんが、もう一個あったグラブをご購入。これまた、ちょっとお値引き状態で買うことができました。
「せっかくだから、私も何か買っていきたいですね……」
そういえば、白部さんはまだ何も自分のものを買っていない。
移動しながら物色を続けると、彼女が屈み込み、一冊の本を手に取った。
それは、「うどんのめがみさま」。
「あれ、この本の作者……」
まりあさんを見つめ、そっと本を元に戻す白部さん。本人の目の前で中古品を買うほど失礼なムーブもないものねえ。
「あ、わたしのことはお気になさらず。どうぞどうぞ」
しかし、そこは心優しいまりあさん。白部さんに快く購入を促す。
白部さんはかなり悩んだ末、「では、失礼します……」と、申し訳なさそうにうどんのめがみさまをご購入。
「なんだか、本当にすみません」
「いえいえ。多くの方に楽しんでいただくのが、一番の喜びですから」
恐縮する白部さんと、気を使わせまいとするまりあさん。
「でも、白部さん。ノーラちゃん……その、言いにくいんですけど、まりあさんのご本に興味なかったはずでは?」
「あ、いえ。私自身が宇多野さんのご作品のファンになってしまいまして。息抜きに読むと、すごく気持ちが休まるんです」
素朴な疑問を呈すると、彼女はそう答えた。
「ありがとうございます。そう仰っていただけると、作者冥利に尽きますね」
口元に手を当て、うふふと微笑むまりあさん。そんなまりあさんのご様子で、中古である件は本当に気になさっていないのだなと、白部さんも安堵された模様。
あまり長居しても迷惑なので、さらに露店を巡っていく。
「あら、これきれいですねえ」
まりあさんが、美しい花柄のバレッタを手に取る。こちらも、値札の価格でお買い上げ。本当に、太平洋のように心の広いお方だなあ。
ミケちゃんも、可愛らしい白のポシェットを優輝さんに買ってもらいました。
私は私で、折りたたみ式座椅子を購入。最近、子供たちががよく遊びに来るものね。アメリだけ座椅子というのも、申し訳ない。私のほうは、これまたちゃっかり値引きしてもらいました。
そんなこんなでフリマもだいたい巡り終わり、久美さん以外一同ヘトヘト。時刻も、すでに二時を回っていた。
「せっかくだから、また食堂でごはん食べていきます? なんだか、自炊するのも疲れてしまって」
優輝さんが、肩を揉みほぐしながら提案する。今日のお昼当番なのかな? 特に優輝さん、帰りも自転車だものね。
「ん、ウチは構わんよ」
久美さんが賛成し、ほか一同からも特に反対はなく、またもや先ほどの食堂で遅いお昼と相成りました。
めいめい、好きなものを購入。私とアメリはたこ焼き+焼きそばな、たこ焼きそば。
「うっはー! 姉さん、今度は牛丼っすか!?」
牛丼を食む久美さんに、さつきさんが舌を巻くどころか驚愕する。
「悪いか?」
「いや、いい悪いというより、ただもうびっくりっすよ。ほんと、よくそれだけ食べて太らないっすね。羨ましいっす」
かたやさつきさんは、ラーメンにしたご様子。
「お前も走ればいいんだよ。今度、一緒に走ろうぜ」
「いやー。自分、インドア派なもんで」
あははと、後頭部を撫でる彼女。
「その栄養が、身長にいったらよかったんすけどねえ……あた!」
すねを押さえて、さつきさんがうずくまる。どうも、軽く蹴っ飛ばされたらしい。本当に、どつき漫才じみたコンビだこと。
「おお~! おねーちゃん、たこ焼きと焼きそばが一緒に食べれるのいいね!」
もっきゅもっきゅと、交互にたこ焼きと焼きそばを食べながら瞳を輝かせるアメリ。
「そうだね」
ふふと微笑み、キャスケット越しに頭を撫でる。
今日も楽しかったな。もうすぐ、さつきさんと久美さんのお誕生日とクリスマス! さらに盛り上がること請け合いの一週間後を、心に思い描くのでした。
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