神奈さんとアメリちゃん

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第百四十話 フリマを楽しもう! ―後編―

公開日時: 2021年4月24日(土) 19:31
文字数:2,083

休憩も十分じゅうぶん取ったので、二巡目開始です!


 今度は逆回りでぐるっと見ていこうという話になりました。


「ルリ姉! これ、テレビで蹴ってたやつだな!」


「それはサッカーボールっていって、サッカーっていうスポーツやるためのものだよ」


 ノーラちゃんが興味を示したのはサッカーボール。


「おー! アタシもやってみてー!」


「うーん、ノーラちゃんの場合は……」


 白部さんが難色を示す。ノーラちゃんの長いスカートではとてもサッカーは無理だ。かといって、しっぽを晒すわけにもいかない。


「えー……」


 明らかに不平そうなノーラちゃん。アクティブな彼女のことだから、さぞやりたいだろうなあ。


「なあ、ノラ子。サッカーは無理だけど、こっちなんかどうだ?」


 隣の露店で、久美さんが野球のボールとグラブを手に取る。


「おー? それもテレビで見たことあるな!」


「ウチでよかったら、暇なときキャッチボール付き合うぜ?」


「ほんとか!? ルリ姉! やりたい、やりたい!」


 ぴょんぴょん飛び跳ねそうな勢いで、白部さんに食いつくノーラちゃん。


「うん、じゃあ買っていきましょうか」


 グラブとセットで買うということで、これまた少し値引きでご購入。ノーラちゃんが、「えへへー」と嬉しそうにグラブをはめて見つめる。


「うん、ノラ子が買うならウチも買わなきゃだな。もう片方の、買った!」


 久美さんが、もう一個あったグラブをご購入。これまた、ちょっとお値引き状態で買うことができました。


「せっかくだから、私も何か買っていきたいですね……」


 そういえば、白部さんはまだ何も自分のものを買っていない。


 移動しながら物色を続けると、彼女が屈み込み、一冊の本を手に取った。


 それは、「うどんのめがみさま」。


「あれ、この本の作者……」


 まりあさんを見つめ、そっと本を元に戻す白部さん。本人の目の前で中古品を買うほど失礼なムーブもないものねえ。


「あ、わたしのことはお気になさらず。どうぞどうぞ」


 しかし、そこは心優しいまりあさん。白部さんに快く購入を促す。


 白部さんはかなり悩んだ末、「では、失礼します……」と、申し訳なさそうにうどんのめがみさまをご購入。


「なんだか、本当にすみません」


「いえいえ。多くの方に楽しんでいただくのが、一番の喜びですから」


 恐縮する白部さんと、気を使わせまいとするまりあさん。


「でも、白部さん。ノーラちゃん……その、言いにくいんですけど、まりあさんのご本に興味なかったはずでは?」


「あ、いえ。私自身が宇多野さんのご作品のファンになってしまいまして。息抜きに読むと、すごく気持ちが休まるんです」


 素朴な疑問を呈すると、彼女はそう答えた。


「ありがとうございます。そう仰っていただけると、作者冥利に尽きますね」


 口元に手を当て、うふふと微笑むまりあさん。そんなまりあさんのご様子で、中古である件は本当に気になさっていないのだなと、白部さんも安堵された模様。


 あまり長居しても迷惑なので、さらに露店を巡っていく。


「あら、これきれいですねえ」


 まりあさんが、美しい花柄のバレッタを手に取る。こちらも、値札の価格でお買い上げ。本当に、太平洋のように心の広いお方だなあ。


 ミケちゃんも、可愛らしい白のポシェットを優輝さんに買ってもらいました。


 私は私で、折りたたみ式座椅子を購入。最近、子供たちががよく遊びに来るものね。アメリだけ座椅子というのも、申し訳ない。私のほうは、これまたちゃっかり値引きしてもらいました。


 そんなこんなでフリマもだいたい巡り終わり、久美さん以外一同ヘトヘト。時刻も、すでに二時を回っていた。


「せっかくだから、また食堂あそこでごはん食べていきます? なんだか、自炊するのも疲れてしまって」


 優輝さんが、肩を揉みほぐしながら提案する。今日のお昼当番なのかな? 特に優輝さん、帰りも自転車だものね。


「ん、ウチは構わんよ」


 久美さんが賛成し、ほか一同からも特に反対はなく、またもや先ほどの食堂で遅いお昼と相成りました。


 めいめい、好きなものを購入。私とアメリはたこ焼き+焼きそばな、たこ焼きそば。


「うっはー! 姉さん、今度は牛丼っすか!?」


 牛丼を食む久美さんに、さつきさんが舌を巻くどころか驚愕する。


「悪いか?」


「いや、いい悪いというより、ただもうびっくりっすよ。ほんと、よくそれだけ食べて太らないっすね。羨ましいっす」


 かたやさつきさんは、ラーメンにしたご様子。


「お前も走ればいいんだよ。今度、一緒に走ろうぜ」


「いやー。自分、インドア派なもんで」


 あははと、後頭部を撫でる彼女。


「その栄養が、身長にいったらよかったんすけどねえ……あた!」


 すねを押さえて、さつきさんがうずくまる。どうも、軽く蹴っ飛ばされたらしい。本当に、どつき漫才じみたコンビだこと。


「おお~! おねーちゃん、たこ焼きと焼きそばが一緒に食べれるのいいね!」


 もっきゅもっきゅと、交互にたこ焼きと焼きそばを食べながら瞳を輝かせるアメリ。


「そうだね」


 ふふと微笑み、キャスケット越しに頭を撫でる。


 今日も楽しかったな。もうすぐ、さつきさんと久美さんのお誕生日とクリスマス! さらに盛り上がること請け合いの一週間後を、心に思い描くのでした。

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