神奈さんとアメリちゃん

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第四百六十四話 海でBBQ!

公開日時: 2022年1月13日(木) 21:01
更新日時: 2022年1月13日(木) 21:45
文字数:2,488

 ぺたぺた、ぞろぞろと優輝さんについていくことしばし。おおう、BBQの設備がいっぱいですよ! ていうか、ビーチからずいぶん外れるのね。


 肝心の彼女は、受付で何やら話しています。


「予約の確認が取れましたので、三人を待ちましょう」


 設備を囲んでしばし雑談にふけっていると、優輝さんが手を振り振り。向こうを見ると、由香里さんたちがこっちにやって来るのが見える。


「これ、現地で買ったほうが楽じゃなかったか?」


 クーラーボックスを二つ降ろし、久美さんが深く息を吐く。計三つ+炭と炉とは大荷物ですねえ。


「お疲れ様です。誰だっけ、うちから持ってこようって言い出したの」


 四人が、それぞれ輪のように指差し合う。


「あっはっはっ。全員ギルティ有罪かー」


 からからと笑う優輝さん。今はサングラスを畳んで胸元にかけており、素顔を晒してイケメン度がさらにアップしています。


「ま、時間と料金がもったいないんで、さくさくいっちゃいましょう。火はあたしが起こすんで、三人は具材のほうを」


 「りょうかーい」といって、炊事施設に向かう残りのお三方。


「あの、私も何か手伝いましょうか?」


「あー、いえいえ。氷からビニール上げて、具材カットして串に刺すだけですからね。それには及びません。お子さんたちの相手をしてあげていてください。やはり、親に構ってもらえると安心しますから」


 炭に火を点けながら、私たちを見上げる優輝さん。鮮やかな手並みだなー。さすが、キャンパー。


「あの、これ冷やしていただいてもいいですか?」


 まりあさんが、レジ袋から缶を二つ取り出す……って!


「ビール!?」


 近井さんご一家を除く、皆が驚愕。


「違いますよー。ノンアルのです~」


 あ、ほんとだ。ノンアルコールって書いてある。みんな、ほっと一息。


「あの、皆さん何をそんなに驚かれたんでしょう?」


「あー、それは……あはは……」


 親子ちかこさんに問われるも、まりあさんの名誉に関わることだからなあ。どうにも言いよどむ。


「わたし、めちゃくちゃお酒弱いんですよ。その上、酒癖も悪くて、ご迷惑かけてばかりで……。でも、こういう場で雰囲気だけでも味わいたいなあって、ノンアルの買ってきたんです」


 自白する当人。一同、「なるほど」とノンアルの持参に納得。


「おまっとさーん。火は?」


「完璧です」


 久美さんと優輝さんが、塩梅をやり取りする。


「じゃあ、焼いていきましょう」


 おお、お肉だけではなく、エビ、イカ、ホタテなんかも! さすがかくてるの皆さん、海気分満載だ!


「すみません、ごちそうになってしまって」


「いえいえ。楽しくやれるのが一番ですから!」


 朗らかに微笑む優輝さん。


 うちからも持って行きたかったけど、クーラーボックスないのよねえ。今後に備えて、クーラーボックスぐらい買っといたほうがいいかな。


 空いた氷入りのボックスには、代わりにまりあさんのノンアル飲料缶がイン。


「泳ぐ予定の人は、酒飲まんでね。ウチも、遠泳したいから今日はこいつ」


 と、マスペを印籠のように掲げる久美さん。


「斎藤さんのおっしゃるように、飲酒後に海に入らないでくださいね。危ないですから」


 白部先生も、禁忌を念押し。


「あたしは、ビールいただきましょうかね」


 プシュ、とビール缶を開ける優輝さん。


「お前、海来て、入らないで帰るのかよ!?」


 これには、久美さんもびっくり。


「入るは入りますよ~。あれやりたいんですよ。やったな、こいつぅ~、ばしゃばしゃっての」


 ベタベタなシチュエーションを語りながら、カラカラ笑う優輝さんに、やれやれと首を振り肩をすくめる久美さん。


「というわけで、相方募集です。早いもの勝ちで」


 一同周りを見回すも、どうしようという感じ。ここはひとつ、と思い切って挙手!


「お、神奈さん! さすが!」


 何がさすがなのか、わからないけど。


「いやー、漫画家としては、一回やってみたかったんですよね、それ」


 なるほど、なるほどと。うなずく提案者。


「姉さん、自分らもどっすか?」


「そういう、恥ずかしいのはパス。ていうか、泳ぎてえ」


「つれないっすねー」


 おやおや、凸凹コンビは成立せず。


「じゃ、わたしとやる?」


「お。さすが由香里ちゃん! 気配り名人っすねー! じゃあ、頼むっす!」


 代わりに、由香里さんとペア成立したようです。


「それはそれとして、焼けましたよー。食べましょう!」


 というわけで、由香里さんが希望者に望む食品の串を渡してくれます。


「私、ホタテいいですか?」


「はい、どうぞ~」


 ぱくっとな。うーん、美味しい! 海で海産物BBQってのもオツねえ。アメリも、ホタテにしたようです。


「美味しいね!」


「うん!」


 キラキラお陽様笑顔のアメリちゃんに、笑顔で返す。


 ミケちゃんは、当然のようにエビ三昧。ほんと好きなのね、エビ。


 クロちゃんは、いわゆるポッポ焼き状態のイカをいただいてます。


 ノーラちゃんは、ガッツリ肉!


 ともちゃんも、ホタテ組。


 いやー、五者五葉だなあ。


「そろそろ冷えたでしょうか?」


 まりあさんが、飲料の具合を気にする。


「……大丈夫だと思いますよ。どうぞ」


 冷え具合を確認した優輝さんが、缶を手渡す。


「ああ……憧れていたシチュエーション……。いただきます」


 プシュ、という景気のいい音に続き、まりあさんがぐいっといく。今まで、アルコールではトラブル続きでしたからねえ。さぞ嬉しいことでしょう。


「うふふ、美味しいです~」


 すごく上機嫌な彼女。……なんだろう、この妙な胸騒ぎは。


「もう一本いきますね~」


 早くも二本目! 何かがおかしいと、本能が告げる!


「あの、まりあさん。まさか、酔ってないですよね?」


「酔ってないですよぉー。やだなー。うふふふふふ」


 絶対酔ってるゥ~!! まさか、ノンアルで酔う人がいるなんて……。


 一同、困り果てて顔を見合わせる。近井さんたちは、ハッピーまりあさん初体験。


「ノンアルも、わずかーにアルコール入ってるからなー。しかし、この量でねえ……」


 空き缶を手に取り、ため息をつく久美さん。


 演歌を歌いながら、ノリノリでダンスを始めたまりあさんを、とりあえず席に座らせる。近井家の皆さん、ご愁傷様です……。


 とりあえず演歌をBGMに、気を取り直してBBQを再開する我々でした。やれやれ。

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