神奈さんとアメリちゃん

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第二百六十九話 神奈の得た答え

公開日時: 2021年6月23日(水) 21:01
文字数:2,196

「ではアメリちゃん、ごはんを作っていきましょー」


「おおー!」


 今日も拳を突き上げ、元気なお嬢様。良きかな良きかな


「まずはこれ。絹さやの筋を取りましょう。こうやってヘタを折って……ゆっくり下に引くのね」


 すーっと筋が取れる。


「で、反対側からも……っと。この筋を取っておくと、とっても食べやすくなるの。じゃあ、やっていきましょう」


 二人で筋取り。なかなか大変だけど、手分けすればそのぶん作業が楽だね!


 ……ふう、筋取り終了!


「お疲れ様~。次は、じゃがいもとかを一口大に切っていくよー」


 じゃがいもと人参を皮剥きして一口大に切っていく。玉ねぎはくし切りに。


「で、お肉さんも食べやすい大きさに切っていくですよ」


 続いて、濡れキッチンペーパーとラップで包み、じゃがいもと人参をレンチン。あちち。


「アメリシェフ。中火でお肉とお野菜を炒めててもらえますか」


「わかった!」


 そちらはアメリちゃんに任せて、私は調味料の用意。


 水三カップ、白だし大さじ二杯。これが調味料A。お砂糖大さじ四杯、料理酒とうすくち醤油大さじ三杯、みりん大さじ二杯。こっちが調味料B。


「アメリー。交代~」


「はーい」


 炒められた具材に調味料Aを入れ、沸騰させアク取り。アクが取れたら、調味料Bを入れて落し蓋&弱火でコトコト。タイマーを十五分にセット!


 お米も切っておいて……と。


「ふう。休憩です、シェフ」


「おお~」


 二人で寄り添って動画を眺める。ああ、落ち着くなあ。やっぱりアメリは私のオアシスだよ。


 タイマーが鳴ったので、一旦火を止め、チューブバターをひと絞りちゅーっとイン! 再度動画視聴タイム。


 そろそろ冷めたかな? というところで弱火で再加熱。同時に別の手鍋にお湯を沸かし始め、厚揚げを一口より少し小さいぐらいに切って、冷凍ネギ少々と一緒に投入! タイマーも五分にセット!


 沸騰したら火を止め、だし入りのお味噌を溶かす。これでお味噌汁も完成~。


 タイマーが鳴ったので、肉じゃがの火を止め、ごはん、お味噌汁とともによそう。


「じゃーん、洋風肉じゃがでーす。一応、洋食ってことで。じゃ、いただきましょ。いただきます!」


「いただきます!」


 おお、あの肉じゃががしっかり洋風な感じに! これは新機軸!


「美味しい!」


「ね!」


 二人でにっこり。お味噌汁もいい塩梅。こうして、今日の晩ごはんも美味しく食べ終わったのでした。



 ◆ ◆ ◆



 とまあ、これで終わったらいつもの平和な一日だったのだけど。


「すみません、皆さんに折り入ってご相談したいことが……」


 LIZEを立ち上げ、グループチャットにアメリからの子離れの悩みについて書き込む。持つべきものは、六人の友!


「お心がけは立派ではあると思うのですけど……」


 と、まずお返事をくださったのはまりあさん。


「そう、急がれなくてもいいのではないでしょうか?」


 え? 以外な方向。ダメっぷりを叱責されると思っていたのに。


「神奈さん、アメリちゃんの転生から半年しか経ってないじゃないですか。そう、互いの自立を急がなくてもいいと思いますよ?」


 目からウロコ。まさかの予測と真逆のご回答。


「そうですね。ミケもそうですけど、まだ小さい子ですから、過保護なぐらいでちょうどいいと思いますよ。子供なんて、巣立ちが来たら勝手に離れてくもんだと思います」


 こちらは優輝さん。


「……そういうものでしょうか」


 むしろもっと甘え合っちゃえ! という趣旨のご回答に困惑してしまう。


「あー……私のせいかもしれませんね」


 白部さんが、以前猫耳人間の思春期について話し合ったことを述べる。


「なるほど、それで焦っちまったってワケか」


 久美さんがうなずき猫スタンプとともに話に加わる。


「猫崎さん。データが豊富なわけではないですが、猫耳人間の思春期の訪れは遅いですから、焦らなくて大丈夫だと思いますよ。むしろ、今から無理に距離を取ろうとしないほうがいいと思います」


「そういうものですか?」


「私も心理学は専門ではないですけど、児童精神科医の従姉妹が言っていた話なんですが……。承認欲求というのが子供にはあって、これは親の庇護を十分得られたと実感すると満たされるんです。逆に、これが満たされないまま成長すると、いわゆる承認欲求をこじらせた状態になって、後々悪影響を及ぼすんです」


 はー……。そんな話が。なんというか、さすがお医者様一族。


「なので、今はアメリちゃんの承認欲求を満たしてあげることが自立を促すことより大事……といいますか、承認欲求を満たしてあげることが、相互の自立につながると思いますよ」


 新たな知見が、いくつも降り注ぐ。私は何を、独り相撲取っていたんだろうか。


「ありがとうございます。私、ちょっと変な風に先走りすぎていたみたいです」


「いえ。私が中途半端にお話しして、思春期のことを説明しきらなかったのが良くなかったみたいで。余計な不安を与えてしまってすみません」


「いえいえ、そんな! きちんとお話を深く伺わなかった私が悪いんです!」


 互いに謝り合うこと少々。「まあまあ。神奈さんの焦りが解けて良かったってことで!」というさつきさんの一言で、この流れに一区切り着きました。


「では、不肖・猫崎神奈、アメリを構い倒してきます!」


「はい。ぜひそうしてあげてください」


「アメリ~ッ! だーい好きー! 愛してるよーっ!」


「おおっ!? 急にどうしたの、おねーちゃん!?」


 白部さんの後押しを受け、がばっとアメリに抱きつき頬ずりするのでした。

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