「いやー、あたしもお弁当会行きたかったですねえ」
朝、優輝さんとなんとなしに通話することになり、そんな話をされてしまいました。
「すみません、クロちゃんを呼ぼうとアメリが言い出したことから、なし崩し的にああなってしまったもので」
「あー、いいんですいいんです。桜の開花が近づいたら、ぜひお花見してお弁当を食べましょう!」
本当に屈託がないなあ。そういや、この「なし崩し」の使い方って誤用なんだっけ。まあいいや。
うちがもっと広かったらなあ。かくてるハウスぐらいとはいわないけれど、もうちょっと人をお招きしやすい住まいだと良いのだけど。かくてるの皆さんと知り合うまでは、こんなに一気に友人が増えると思わなかったものね。
しかし、あれからすこぶる調子が乗って、プロットが十パターンほど出来てしまった。これ以上作ってもさすがにあれだな。真留さんに送信してしまって、完全フリーの一日を過ごしてみますか。
「アメリー。お散歩してみない?」
「おお? いいよー」
クレヨンでお絵かきしていた彼女が、顔を上げる。
「今日は、アメリの気の向くままに歩いてみよう。変なところに行きそうになったら止めるけどね」
「はーい!」
元気でよろしい! それじゃあ、お着替えしましょー。
◆ ◆ ◆
「さあ、右と左どっち行く?」
まずを家を出て、開口一番問う。道路を越えて直進すると、白部さんのお宅。イコール行き止まり。
「んー、右~!」
「はいはい」
出口から右なので、手をつないでかくてるハウスの前を通り、更に進むと十字路に出ました。あ、斜向いに梅が咲いてる~。
「さあ、どっちに行く?」
「んーと……真っ直ぐー!」
こんな感じでアメリの気の向くまま歩くことしばし。スマホがあるから、帰り道は迷わないでしょう、多分。
「おお~? なにこれー?」
アメリが指差す方を見ると、格子の向こうに戦闘機。自衛隊の基地のそばに来たのか。
「あれ戦闘機っていってね、すごく速く空を飛ぶの。まあ、あれはレプリカ……偽物だと思うけど」
「へー」と感心するお嬢様。その後も適当にうろちょろしていると、F公園に着きました。このへんで一番広いからねー。適当にこっちに向かって歩いてたら、ここに着くか。
「休憩所でソフトクリームでも食べる?」
「うん!」
二人でチョコソフトをいただく。寒空アイスというのもまたオツだね。
歩き疲れたので、しばし談笑。勉強のこととか、お友達のこととか。あとは、動画で見た魚や猫の話。良くも悪くもアメリの繰り出せる話題はこのぐらいで、本当ならもっと広い世界のことを色々知りたいだろうにな、と考えてしまう。
私にできる範囲で、アメリに色んな体験をさせてあげよう。改めて、そう心に誓うのでした。
「さて、帰ろうか」
「おお~? もう帰っちゃうの?」
「うん。これ以上遠くへ行くと帰り道がわかりにくくなるし、アメリも自分が思ってるより疲れてるはずだよ」
「そっかー」と、ちょっとしょんぼりしながら同意するお姫様。では、ナイトがエスコートしましょうぞ。
◆ ◆ ◆
「たっだいまーっ!」
心地よい疲労感に包まれ、帰宅! アメリも、ちょっと疲れ気味に「ただいまー!」と言う。
時刻はもうすぐお昼。今から買い物ってのも半端だな。何か出前でも取ろうかしら。夜と明日の分は買い出しに行くつもりだけど。
「アメリちゃん、なにか食べたいものはありますか」
ピザ屋、お蕎麦屋さん、クマドナドル、ファミレス、お寿司屋さん、釜飯屋さんのチラシを並べる。ふふふ、お金入ったばっかりだからね。お寿司も怖くないのですよ。
「おお! ケイティちゃん!」
彼女が目をつけたのは、子供向けのおもちゃが付いてくることで有名な、クマドナドルのラッキーセット。今回は、ケイティちゃんがおもちゃのようで、それに強く反応したみたい。
ただ一点、ちょっと困ったことが。この配達、千五百円以上じゃないと受け付けてくれないのよね。で、ラッキーセットが五百円。あと千円も、何買えばいいのかしら……。
一番お高いのが、分厚いお肉が倍の「肉厚ビーフセット」だけど、これでも七百九十円。微妙に足りない。そもそも、こんなおっきなパティ二枚も入ったハンバーガーのおばけのさらにセット、食べ切れないし。
メニューとにらめっこしながら、頭の中で計算をこねくり回してみる。まず目についたのが、サラダ。二百八十円は割高だけど、アメリにもお野菜食べてほしいし、これを二つ頼もう。これで、千六十円。これにエッグチーズバーガーセットが五百円で条件クリア! ふう。
さっそくスマホから注文する。ハンバーガーを待つ間、アメリは今朝中断したお絵かきの続き、私はスマホでニュース閲覧。アメリも、そのうちこういうの見るようになるんだな。暗い話ばっかりだけど、アメリだっていつまでも子供ではないのよね。
しばらくそうして過ごしていると、インタホンが鳴りました! 配達のお兄さんから商品を受け取り、アメリをダイニングに呼ぶ。
「おお~! ケイティちゃん! ケイティちゃん!!」
アメリ、ケティちゃんフィギュアに大興奮。
「嬉しいのはわかるけど、後にしよう。お野菜も食べようね。いただきます!」
「はーい! いただきます!」
ぱくっ。実に学生時代食べ慣れたこの味。ファストフードといえばここってことで、よく友達と入ったものです。上京してからは経済的事情もあって自炊が多くなり、収入が安定してからも自炊メインの生活は変わらずにいる。
アメリは大好きなハンバーガーとコラ・コーラ。そして、サラダとポテトフライを堪能。うんうん、いい食べっぷりですこと。元気元気。
ちなみに私のドリンクはホットレモンティー。コーヒーでも良かったんだけど、うちにいっぱいあるからね。
こうして美味しく食べ終わり、ごちそうさま。
アメリはそれはもう丹念に手を洗って、ケイティちゃんフィギュアで遊び始めました。良き哉良き哉。
さーて、この後は何しようかなー?
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