神奈さんとアメリちゃん

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第二百五十一話 お散歩アメリちゃん

公開日時: 2021年6月2日(水) 21:01
更新日時: 2021年6月5日(土) 21:55
文字数:2,383

「いやー、あたしもお弁当会行きたかったですねえ」


 朝、優輝さんとなんとなしに通話することになり、そんな話をされてしまいました。


「すみません、クロちゃんを呼ぼうとアメリが言い出したことから、なし崩し的にああなってしまったもので」


「あー、いいんですいいんです。桜の開花が近づいたら、ぜひお花見してお弁当を食べましょう!」


 本当に屈託がないなあ。そういや、この「なし崩し」の使い方って誤用なんだっけ。まあいいや。


 うちがもっと広かったらなあ。かくてるハウスぐらいとはいわないけれど、もうちょっと人をお招きしやすい住まいだと良いのだけど。かくてるの皆さんと知り合うまでは、こんなに一気に友人が増えると思わなかったものね。


 しかし、あれからすこぶる調子が乗って、プロットが十パターンほど出来てしまった。これ以上作ってもさすがにあれだな。真留さんに送信してしまって、完全フリーの一日を過ごしてみますか。


「アメリー。お散歩してみない?」


「おお? いいよー」


 クレヨンでお絵かきしていた彼女が、顔を上げる。


「今日は、アメリの気の向くままに歩いてみよう。変なところに行きそうになったら止めるけどね」


「はーい!」


 元気でよろしい! それじゃあ、お着替えしましょー。



 ◆ ◆ ◆



「さあ、右と左どっち行く?」


 まずを家を出て、開口一番問う。道路を越えて直進すると、白部さんのお宅。イコール行き止まり。


「んー、右~!」


「はいはい」


 出口から右なので、手をつないでかくてるハウスの前を通り、更に進むと十字路に出ました。あ、はす向いに梅が咲いてる~。


「さあ、どっちに行く?」


「んーと……真っ直ぐー!」


 こんな感じでアメリの気の向くまま歩くことしばし。スマホがあるから、帰り道は迷わないでしょう、多分。


「おお~? なにこれー?」


 アメリが指差す方を見ると、格子の向こうに戦闘機。自衛隊の基地のそばに来たのか。


「あれ戦闘機っていってね、すごく速く空を飛ぶの。まあ、あれはレプリカ……偽物だと思うけど」


 「へー」と感心するお嬢様。その後も適当にうろちょろしていると、F公園に着きました。このへんで一番広いからねー。適当にこっちに向かって歩いてたら、ここに着くか。


「休憩所でソフトクリームでも食べる?」


「うん!」


 二人でチョコソフトをいただく。寒空アイスというのもまたオツだね。


 歩き疲れたので、しばし談笑。勉強のこととか、お友達のこととか。あとは、動画で見た魚や猫の話。良くも悪くもアメリの繰り出せる話題はこのぐらいで、本当ならもっと広い世界のことを色々知りたいだろうにな、と考えてしまう。


 私にできる範囲で、アメリに色んな体験をさせてあげよう。改めて、そう心に誓うのでした。


「さて、帰ろうか」


「おお~? もう帰っちゃうの?」


「うん。これ以上遠くへ行くと帰り道がわかりにくくなるし、アメリも自分が思ってるより疲れてるはずだよ」


 「そっかー」と、ちょっとしょんぼりしながら同意するお姫様。では、ナイトがエスコートしましょうぞ。



 ◆ ◆ ◆



「たっだいまーっ!」


 心地よい疲労感に包まれ、帰宅! アメリも、ちょっと疲れ気味に「ただいまー!」と言う。


 時刻はもうすぐお昼。今から買い物ってのも半端だな。何か出前でも取ろうかしら。夜と明日の分は買い出しに行くつもりだけど。


「アメリちゃん、なにか食べたいものはありますか」


 ピザ屋、お蕎麦屋さん、クマドナドルハンバーガーチェーン店、ファミレス、お寿司屋さん、釜飯屋さんのチラシを並べる。ふふふ、お金入ったばっかりだからね。お寿司も怖くないのですよ。


「おお! ケイティちゃん!」


 彼女が目をつけたのは、子供向けのおもちゃが付いてくることで有名な、クマドナドルのラッキーセット。今回は、ケイティちゃんがおもちゃのようで、それに強く反応したみたい。


 ただ一点、ちょっと困ったことが。この配達、千五百円以上じゃないと受け付けてくれないのよね。で、ラッキーセットが五百円。あと千円も、何買えばいいのかしら……。


 一番お高いのが、分厚いお肉が倍の「肉厚ビーフセット」だけど、これでも七百九十円。微妙に足りない。そもそも、こんなおっきなパティ二枚も入ったハンバーガーのおばけのさらにセット、食べ切れないし。


 メニューとにらめっこしながら、頭の中で計算をこねくり回してみる。まず目についたのが、サラダ。二百八十円は割高だけど、アメリにもお野菜食べてほしいし、これを二つ頼もう。これで、千六十円。これにエッグチーズバーガーセットが五百円で条件クリア! ふう。


 さっそくスマホから注文する。ハンバーガーを待つ間、アメリは今朝中断したお絵かきの続き、私はスマホでニュース閲覧。アメリも、そのうちこういうのニュース見るようになるんだな。暗い話ばっかりだけど、アメリだっていつまでも子供ではないのよね。


 しばらくそうして過ごしていると、インタホンが鳴りました! 配達のお兄さんから商品を受け取り、アメリをダイニングに呼ぶ。


「おお~! ケイティちゃん! ケイティちゃん!!」


 アメリ、ケティちゃんフィギュアに大興奮。


「嬉しいのはわかるけど、後にしよう。お野菜も食べようね。いただきます!」


「はーい! いただきます!」


 ぱくっ。実に学生時代食べ慣れたこの味。ファストフードといえばここってことで、よく友達と入ったものです。上京してからは経済的事情もあって自炊が多くなり、収入が安定してからも自炊メインの生活は変わらずにいる。


 アメリは大好きなハンバーガーとコラ・コーラ。そして、サラダとポテトフライを堪能。うんうん、いい食べっぷりですこと。元気元気。


 ちなみに私のドリンクはホットレモンティー。コーヒーでも良かったんだけど、うちにいっぱいあるからね。


 こうして美味しく食べ終わり、ごちそうさま。


 アメリはそれはもう丹念に手を洗って、ケイティちゃんフィギュアで遊び始めました。良きかな良きかな


 さーて、この後は何しようかなー?

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