神奈さんとアメリちゃん

退会したユーザー ?
退会したユーザー

おまけ編・その十一 付き合ってください!

公開日時: 2022年5月18日(水) 21:01
文字数:2,125

「神奈さん、付き合ってください!」


 深々とお辞儀する優輝さん。そんな彼女に微笑みかける、ほかのかくてるの皆さんや、まりあさん、白部さん、親子ちかこさん。そして子供たち。


 ど……どうしましょ。いえね、彼女イケメンだし、すごくいい人だし、私、女同士とか特に抵抗ないしで、あんまり断る理由もないのだけど。


 でも、これはちょっと、唐突すぎるといいますか。


「おねーちゃん! アメリも優輝おねーちゃんに、本当のおねーちゃんになってほしーな!」


 笑顔で一足飛びに、ゴールインを提示するアメリちゃん。


「そしたら、ミケはアメリと本当の姉妹になるのね!」


 ミケちゃんも嬉しそう。


「神奈さん、あたし本気なんです」


 彼女が顔を近づけてくると、心拍数がハネ上がる。


 やー……。これは困った。


 でも、こうして誠実に交際を申し込まれた以上、こちらも誠実に返さないと。


「優輝さん。私の返事は――」



 ◆ ◆ ◆



(ぴぴぴぴぴ……)


 ん……? アラームが鳴ってる……。


 どうも、変な夢を見たらしい。思い返して、顔が熱くなってしまう。


 夢を覚えているというのは、よく眠れなかった証拠だと言うけれど、うちのお姫様の腕が、顔の上に乗っていました。アメリが変な寝相とは、珍しい。


 しかし、変てこな夢のせいか、朝の寝ぼけた感覚がないのは、いいことなのか、悪いことなのか。


「うにゅ……。おねーちゃん、おはよ……」


 愛娘もお目覚め。


 珍しくしゃっきりしてることだし、今日は私が、ちょっと凝った朝ごはん作りましょーっと。



 ◆ ◆ ◆



「ただいまー!」


 おうおう、帰ってきましたよ、愛しのお姫様が!


「おっかえりー!」


 さっそく、愛のハグ。


「学校、どうだった?」


「面白かった! ミケ、お歌ほんと上手!」


「そっかー。今日は音楽の授業があったんだねえ。積もる話をしたいところだけど、お隣に行かなきゃだね。用意しましょ」


「はーい! 着替えてくるねー!」


 着替えを持って、とたとたと脱衣所に向かう娘。


 寝室で着替えればいいのにと思うけど、どうせ洗い物出るもんね。


 そいじゃ、私もズボラなスウェットから着替えますかー。



 ◆ ◆ ◆



 今日は、かくてるハウスでお茶会。到着すると、いつものメンバーが集っていました。


「どうぞ。今日は、クグロフを焼いてみたんです」


 由香里さんの給仕で、波打った、背の高いドーナツのようなお菓子が出てくる。彼女とまりあさんのぶんと、子供たちのぶんだけ、シュガーパウダーがかけられているね。何だろ?


 続いて、ティーポットからお茶を注いでいく由香里さん。


 彼女の作ということで、実に期待が高まりますねえ!


 由香里さんの音頭取りで、いただきますの合唱をし、フォークで切って、口に運ぶ。


 あら、お酒の香りがいい風味! ラム酒ね、これ。ああ、ということは、シュガーパウダーは「ラム酒抜きで作りました」って印かな。


「いかがでしょう?」


 パティシエールが塩梅を尋ねてくるので、満場一致で「美味しいです!」の合唱。


「ありがとうございます。上手くできたみたいですね」


 微笑む彼女。


「ところで神奈さん」


「はい、何でしょう?」


 妙に神妙な顔つきで話しかけてくる優輝さん。


 今朝の変な夢のせいで、なんだか緊張してしまう。


「その……付き合っていただけませんか?」


 !?


 え、えええええ!?


 まさかの正夢!?


 なんか、皆さん微笑んでらっしゃるし。デジャ・ヴュ!


「ええと、お気持ちは嬉しいのですけど、その、レンアイ的にお付き合いとなると、なんというか、返答に困ってしまって、どうお答えしたものか……」


 しどろもどろで、わたわたする。


 すると優輝さん、ぷっと吹き出すじゃない!


「失礼しました。まさか、そっち・・・に受け取られるとは。いえね、子供たちも明日から冬休みでしょう。ですから、近々みんなでロッジで二泊三日ぐらいキャンプしましょうか、なんてお話してたんですよ」


 朗らかに笑みながら、説明する彼女。思わず、脱力。


「いや~。神奈さん、まんざらじゃない感じだったっすねえ~」


 口元に手を当て、ニヤニヤするさつきさん。うあ~! 穴があったら入りたい!!


「あ、あのですね! 思わず珍対応してしまったのには、理由があってですね……!」


 今朝の変な夢を、みんなに話して聞かせる。


「そりゃまた、キグウっすねえ。でも、そーゆー夢見るってことは、神奈さん、優輝ちゃんのコト、アリアリのアリってことっすかね~?」


 あう~。さつきさんが悪ノリしてくるよお~!


「あたしは、神奈さんとそういう意味・・・・・・でのお付き合い、割とアリですよ」


 冗談か本気か、嬉しそうに紅茶を飲みながら、そうおっしゃる当人。


「もーう、優輝さんまで~」


 私の本当の気持ちは、どうなんだろ。いつぞや海でドキッとしてしまったし、今もこうして、ちょっと変な感じだけど。


 ……今は、整理が付かないや。


「とりあえず、用意するものを教えていただければ、キャンプはお付き合いさせていただきます。いいよね、アメリ?」


「うん! 楽しみ!」


「で、別の意味のお付き合いのほうは?」


 もーう、蒸し返さないで、さつきさーん!


「ひとまず、ノーコメントでお願いします」


「りょーかいです! でも、その気になったら、あたしはオッケーですよ!」


 サムズアップして、からからと笑う優輝さん。敵わないなあ……。


 なんだか変な空気の中、お茶会は進み、お開きとなりました。

読み終わったら、ポイントを付けましょう!

ツイート