神奈さんとアメリちゃん

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第百六十四話 神奈、反省する

公開日時: 2021年4月25日(日) 15:01
文字数:2,376

やって参りました! 懐かしの……ってほどでもないけど、いつものスーパー!


 おなじみの店内BGMに包まれ、チラシチェーック!


 さすがにもう、お正月用品は下火ね。相変わらず、お餅は頑張ってるけど。あとは、明太子とチーズがお安い……。ふむ。


 実は私、反省していることがあります。それは、アメリを辛味から遠ざけすぎていたこと。


 先ほど、優輝さんのサルサソースピザを美味しそうに食べているのを見て、試させる前から勝手に予防線を張っていたのを、これは良くない親のやることだったと自省したのでした。


 失敗はさせてもいい。失敗したとき、安心して戻れるべき場所たるのが親の努めというもの。


 まあ、サルサごときで大げさだけど、自分の心得違いを恥じた次第です。


「ねえ、アメリ。グラタン好きよね?」


「うん!」


 にぱっとお陽様のような笑顔を返してくる。


「じゃあ、明太もちチーズグラタンっていうの試してみる?」


「おお? 何それ?」


「マカロニの代わりにお餅使って、あとは明太子……これね。これと、チーズで味付けしたグラタン。アメリ、辛いの平気そうだから、どう?」


「食べてみたい!」


 画像を見せながら説明すると、好感触。やはり、体験させることって重要よね。ハバネロなんかは、さすがにやりすぎだと思うけど。


 というわけで、明太子とシュレッドチーズをかごにイン! お餅はまだたくさん残ってるので不要。


 あとは、常備品である牛乳、パン、卵も投入~。


 マスペとコーラはさっきいただいたし、飲み物は特にいいかな。


 なんだか、久しぶりのお買い物にしてはあっさりしすぎだけど、多く買えばいいってもんでもないしね。


「アメリは、お小遣いとお年玉の範囲で買いたい物、何かある?」


「んー、これだけ買ってく!」


 「うめえ棒」コンポタ味三つを手に取る彼女。大量のお年玉に慢心しないその姿勢、素晴らしいわね!


 では、お会計して帰りましょ~。



 ◆ ◆ ◆



 ただいまっと!


 手洗いとうがいを済ませ、荷物を冷蔵庫に。


 寝室に戻り、単行本表紙のレイアウトをする。単行本化作業があるので、このあたりからお仕事を始めないと今月は厳しい。先月といい、結構ハードね。


 でも、単行本印税は漫画家におけるボーナス! ただの年末進行に比べたら、実に心躍るというもの!


 ふふふ。ベッド買い替えて、あと何買おっかなー。おっと、取らぬ狸の皮算用。まずは着実に、お仕事を片付けていきましょ。


 今巻には由加とミキのエピソードが最後のあたりに入るので、せっかくだから表紙はこの二人にしよう。私とアメリの構図は、今までやり尽くしたしねー。


 あと、私のポリシーとしていわゆるおまけページは、なるべく充実させる方針を採っている。


 ここは原稿料の出る部分ではないので、タイトルロゴなんかで済ませてしまう作家さんも多いけど、おまけが目当てで単行本を買う読者さんというのは確実に存在する。何なら、私もその一人だし。


 なので、こういった部分でもきっちり楽しんでいただこうと思うのです。


 さて、由加がミキを抱っこしてるもの。由加がミキと遊んでるもの。私と由加がアメリ&ミキと遊んでるものの三案のラフをさくっと作り、真留さんに送信する。どれがビビッと来るか、彼女のご意見を賜りましょう。


 返事が来るまで、プロット作成。今度から、かくてる改めみるきーハウスの四人とミキとの交流をしばらく描く予定。まりあさんたちの出番はもうちょっと後になる。次から次に新キャラ出したら、読者さん混乱しちゃうからね。


 お、返信来た。


「やはり新キャラですので、由加とミキをメインに据えた上でキャラ性を考慮し、二人で遊んでいるものが好ましいと感じました」


 ですって。らじゃー! 了解の旨を返信。


 続いてプロット作業も進めていく。うん、快調! 今回はアメリを連れて向こうに遊びに行き、ゲーム制作チームであることを教えてもらう……という筋書き。よっし、こんなもんかな? 送信っと。うーん、もうすぐ六時。真留さん見てくれたかしら?


 まあ、ちょうど一区切り付いたところで、晩ごはんでも作りましょーか。


「アメリー。ごはん作るよー」


「おおー!」


 漢字の書き取りをしていた彼女を連れて、キッチンへ~。



 ◆ ◆ ◆



 さあ! レシピ動画セット! 三分でクッキングする脳内BGMスイッチオン!


「アメリちゃん、アメリちゃん。この耐熱皿にお餅を並べてちょうだいな」


 耐熱皿の底面にハケでサラダ油を塗り、お餅を手渡す。


「おお~! 任せて!」


 しゅびっと挙手して、お餅を並べていくアメリ隊員。


 一方私は、明太子を包丁で割いて、卵を露出させる。


「できた!」


 アメリが作業を終えたので、お餅の上に明太子をスプーンで削ぎ落としながら塗っていき、さらににその上にシュレッドチーズをまんべんなくかけていく。


 あとは、オーブンでチン! わあ、お手軽ぅ!


 出来上がるまでの間、アメリと一緒に恐竜のうんちく動画を見る。


 そうそう、アメリとノーラちゃんは先ほどかくてるハウスで、恐竜趣味について見事に意気投合していました。今度、互いの図鑑を貸し合おうという話になった模様。良きかな良きかな


 そうして過ごしていると、グラタンが出来上がり~。わあ、美味しそう~。


 刻み海苔をまぶし、完成でーす!


「じゃあ、いただきますしようか」


 お茶を配り、エプロンを外して対面に座る。


「いただきます!」


 ぱくっ! あら、美味しい! お手軽な割にいい感じ!


「美味しい!」


 アメリのほうも、キラキラ瞳を輝かせてご満悦。


「辛さは平気?」


「うん!」


 やっぱり、結構辛いの平気なんだなあ。可愛い子には旅をさせよ、か。しみじみ。


 こうして明太もちチーズグラタンも美味しく食べ終わり、お片付け&歯磨き。


 真留さんもギリギリ会社にいたようで、明日二時にこちらに打ち合わせにいらしたいとのこと。もちろん、返事はOK!


 さーて、ストレッチと入浴を済ませたら、アメリちゃんの知的好奇心を満たしてあげましょうっと。

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