帰り際、近所のスーパーへやって来ました!
初めてのスーパーに、アメリ大興奮。「あれ何?」攻撃が、ガンガン飛んでくる。
レジやパンや、野菜について説明しながら、店内を巡っていく。
さて、何を食べさせてあげたらいいものやら。人間食初体験のアメリに選ばせても、へんてこな買い物になりそうだし。
猫だし、お魚とかいいんじゃないかしらなどと思ったけど、スプーンがやっと最低限使えるようになったこの子に、お箸を使わせるのは無理よね。
フォークならどうだろう? ナイフは、まだちょっと危ないかな。あと、人間食OKと宇多野さんに太鼓判をもらっても、いきなりしょっぱすぎるものはダメかなーとも思うし。
スプーン、あとはせめてフォークを使うだけで済むもの……。あ、そういえば。スマホを起動し、お店のチラシを確認すると、小麦粉と牛乳、そして鶏むね肉がセール。これは、グラタンかホワイトシチューにしなさいという、天のお達し! まだ暑いし、消去法でグラタンかな。
「ねえ、アメリ。グラタン食べたい? こういうのなんだけど」
グラタンの調理&実食動画を見せると、「おお~!」と食い入るように見入る。
「食べたい! 食べたい!」
「よーし、じゃあ今日はグラタンね」
さあ、買うべきものは決まった。小麦粉、マッシュルーム缶、マカロニ、牛乳、シュレッドチーズ、鶏むね肉。ついでに、朝食用の食パンを買い物かごに放り込んでいく。猫にとって猛毒である、玉ねぎを入れるとき一瞬躊躇したけれど、宇多野さんを信じてIN!
そういえば、アメリにも何かお菓子買ってあげたほうがいいのかな? んー……まあ、カリカリがなくなるまであれをおやつ代わりにして、なくなったらそのとき、人間用おやつを食べさせてみよう。
とはいえ、試しにちょっとだけ買ってみるか。自分用のおやつも欲しいし。氷菓コーナーのワゴンから、ゴリゴリくん・ソーダ味というアイスを二つかごに入れる。パッケージのゴリラがトレードマークの、夏の人気者だ。
よし、こんなもんかな。調味料も、とくに足りないのはなかったはず。お会計を済ませ外に出ると、再び蒸し暑さに襲われる。
「はい」
ゴリゴリくんの中身を手渡す。
「これはね、アイスていって、ぺろぺろ舐めるおやつなの。溶け始めたら、かじって食べたほうがいいけどね」
「冷たい!」
言われた通りに、ひと舐めしたアメリが驚く。でも、味は気に入ったようで、ちょっとずつ舐めていく。特におかしな様子もなく、美味しそうに味わっている。疑うわけじゃなかったけど、やっぱり宇多野さん情報は正しかったみたいだ。
自分も包装を破り、ゴリゴリくんを味わいながら、手をつなぎ家路に向かう。
「う~~~!」
突然、アメリの苦しそうな声が聞こえる! まさか、宇多野さん情報が間違ってたの!?
「どうしたの? 大丈夫、アメリ!?」
屈んで問いかける。
「頭痛い~」
こめかみを押さえて、悶絶している。持っているアイスを見ると、だいぶ量が減っていた。
ああなんだ、ただのアイスクリーム頭痛か。ほっとひと安心。
「少ししたら収まるよ。溶けちゃわない程度に、ゆっくり食べようね」
改めて手をつなぎ直し、再度家路につくのでした。
◆ ◆ ◆
「ただいまー!」
家は留守だけど、習慣と気分というやつで、ただいまを言う。今まで私を出迎えてくれていた家族は、今、横で手をつないでるけどね。
アメリが脱ぎ散らかしたサンダルを、お小言少々とともに揃え、手洗い、うがいを済ませて台所へ直行。パンは冷蔵庫に入れて、ほかの食料は調理台に並べる。
汗で体がべたつくので、先にお風呂にしようかとも思ったけど、火を使うからどうせまた汗をかくし、調理後にしよう。まだ、アメリ一人で入らせられないし。
さあ、アメリのために作る初の愛情手料理、がんばるぞー!
◆ ◆ ◆
脳内に、三分でクッキングする例のBGMが鳴り響く。さてさて、スマホを調理台に立てかけて、動画を見ながらお料理しましょ。アメリは寝室で南海映像を見ながら、がぶがぶと格闘中。
動画ではマッシュルームではなくしいたけを具材におすすめしてるけど、私マッシュルーム派なのよね。
まずは、お湯を沸かしてマカロニを茹でる。その合間にマッシュルームを縦半切りに、玉ねぎを二、三ミリ幅に半月切りにしまして~。
続いて、オリーブオイルでひと口サイズにカットした鶏肉を炒めて~。一分後に玉ねぎも投入! 透明感が出るまで炒めていく。
小麦粉とバターをまぶして、弱火にシフト。牛乳を三分の一ほど混ぜてはとろみをつけ、を繰り返し……。
ちょうど、キッチンタイマーがマカロニの茹で上がりを知らせてくれたので投入! 塩コショウで味を整えて耐熱皿に移し、チーズをかけて十五分ほど強火のオーブンへIN!
ふう、汗だく。
「アメリー。お風呂入りましょー」
寝室に呼びかけると、アメリがおずおずと出てくる。やった、ちゅ~ゆなしでも応じてくれた! やっぱアメリも、汗かいてて気持ち悪いもんね。
以前に比べたら、かなりスムーズに入浴が済むようになった。ありがたや、ありがたや。
お風呂から出てくる頃にはグラタンも焼き上がっていたけど、冷めてしまっているので電子レンジでチン。よし!
「お待たせー。待望のグラタンですよ~」
グラタンを、お皿によそって分ける。
「こうやってね、ふーっふーって冷ましてから食べるのよ。熱いから気をつけてね」
猫耳人間が猫舌なのかは知らないけれど、お手本としてまず食べてみる。うん、我ながら上出来!
「おー! おいしー!」
おお、アメリも大喜びだ。良き哉、良き哉。
「ぐーらぐら・たんたん。ぐーらたん・たん♪」
アメリが、へんてこなオリジナルソングを口ずさみながら、スプーンを口に運ぶ。子供らしい可愛さに、ついぷっと吹いてしまう。
「どーしたの?」
アメリが不思議そうにこっちを見るので、「なんでもないよ」と返すと、一緒に歌いながらグラタンを食べるのでした。
◆ ◆ ◆
お皿を食洗機に放り込んで、お仕事なう。ネームは無事通り、猫アメリの入浴格闘記の下書き中。懐かしいなあ。あんなにお風呂苦手だった子が、すっかりお風呂好き……でもないけど、割と抵抗なく入ってくれるようになって。
んー……小休止。コーヒー牛乳のおかわり入れてこよ。と思って席を立つと、突っ伏すように倒れているアメリが視界に入る!
「大丈夫!?」
慌てて駆け寄ると、すやすやとした寝息が聞こえる。なんだ、疲れて寝落ちしちゃったのね。しかし、女の子座り状態で前のめりで寝るとか、器用な寝方だこと。
ベッドに横にさせ、毛布をかける。
「おやすみ」
さーて、コーヒー牛乳で、もうひと仕事がんばるぞ~!
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