神奈さんとアメリちゃん

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第百三十話 声優の力ってすごい!

公開日時: 2021年4月24日(土) 14:31
文字数:2,250

アメリの予防接種の抗体も出来ており、松戸医院で来週別の予防接種をしましょうという話になりました。


 道中の「ウェイランディスカウントストア」で雑多な買い物を済ませ帰宅すると、「今週の金曜一時から、渋谷のスタジオで収録予定です」と、スタジオ名とともに優輝さんからのメッセージ。


 そしてカレンダーは進んでいき、現地集合のためドライブと相成りました。まりあさんたちは、私が拾っていくことに。


「声優さんの生収録とか、なんだかこっちが緊張しちゃいますねー」


「そうですね。わたしもテレビの特番でちょっと見たことがあるぐらいですから、興味深いです」


 後部座席のまりあさんとお話なう。


「おお~! せいゆーってなーに?」


「んー? アメリ、スポンジ・トム好きでしょ? ああいうのに、声を入れる人だよー」


「おお? スポンジ・トムがしゃべってるんじゃないの?」


 どうも、キャラクターが直接しゃべってると思いこんでいるアメリ。


「うーん、まあ実際見てみたらわかると思うよ」


「おおー! 楽しみ!」


 良きかな良きかな


「そういえば、クロちゃんはアニメとか見るの?」


「はい。ノラえもんとか、アサリさんとか、そういうのを見てます」


 ほほー、いわゆる国民的アニメね。


「クロちゃんは声優ってわかる?」


「とりあえずは……」


 ほむほむ。クロちゃんには説明不要かな。


 こんな会話を繰り広げながら、目的地のビルに到着!


 「今着きました」とメッセージを送ると、優輝さんから「二階の第二スタジオに来て下さい」とお返事が。


 エレベーターで上がり、少し道に迷いながらも到着! そっと分厚い防音扉を開けると、優輝さんと由香里さん、そして見知らぬ女性が四人、さらに見知らぬ男性が一人いた。久美さん、さつきさん、ミケちゃんがいないな。まあ、後で訊いてみよう。


「こんにちはー。今、大丈夫ですか?」


「あ、どうぞどうぞ。こちら、女性は声優さんたち、男性は収録スタッフの方です」


 優輝さんが、ざっくり説明してくれる。


「はじめまして、猫崎神奈と申します。今日は、収録にご同席させていただくことになりました。よろしくお願いします」


「はじめまして! ひょっとして、『あめりにっき』の猫崎先生ですか!? 私、ファンなんです!」


 声優さんのお一人が、私の名前に反応する。


「あ、はい。たしかに私です」


 すると、握手を求められてしまった。照れくさい。優輝さんも、私について語りたそうにうずうずしてるけど、我慢している模様。


 ともかくも、全員挨拶を交わし終わり、「では、始めましょう」と、収録開始。声優さんたちはガラススクリーンの向こうに入っていき、男性スタッフが機材の操作を始める。


「じゃあ、アメリちゃん、クロちゃん。ここから先は静かにね」


 優輝さんが唇の前で人差し指を立て、二人に小声で言い聞かせると、「おお~……」「わかりました」と、二人も小声で了承する。


 そして、スクリーンに映されたゲーム画面と台本を見ながら、声優さんが演技していく。


「私、あなたがとても他人とは思えないの」


 声優さんが、落ち着いた声でセリフに命を吹き込む。画面に晴美はるみって書いてあって同じセリフを言ってるから、彼女がいつぞや久美さんが言ってたあのキャラかな。


「すみません」


 優輝さんが、挙手して声を上げる。


「晴美なんですけど、もう一……いや、二歳年齢上げてもらえますか?」


 えっ!? 何そのファジーな指示!? でも、声優さんは「わかりました」と承諾。そして、同じセリフを言うんだけど……うわっ! ほんとに声の感じが二歳上がってる! すごい!


 さらに、光莉ひかり……漫画家の女の子役の声優さんが、キスシーンで自分の手の甲にキスしてちゅぱっという音を立てる。へー、こうやってキス音出すんだ……。


 その後も収録は進んでいき、一旦休憩タイムに突入。休憩所の自販機で、飲み物を買う。おお、マスペ! マイ・ソウルドリンク! この自販機、わかってるわー。でも、ダイエット中につき、泣く泣く無糖紅茶をお買い上げ。アメリにも、コーラを買ってあげる。


「いやーすごいですね、声優さんって」


「でしょう? あたしも初めて収録したときは、そのすごさに驚いたもんです」


 コーンポタージュスープを飲んでる優輝さんが、うなずきながら応える。


「わたし、感動しちゃいました。映画やアニメの声も、あんな感じに命を吹き込むんですね」


 まりあさんも同感を示す。


「アメリちゃんたちはどうだったかな?」


「なんかすごかった! スポンジ・トムもああやってるの?」


「そうだよー」


 「へー」と、感心するアメリ。クロちゃんは、何やら言葉にならないようで、「すごかったです……」とだけ言って、ぼーっとお汁粉を飲んでいる。


「そういえば、今日はお二人なんですね?」


「あ、はい。ミケの性格だと、長時間じっとしてるとか無理ですからね。なので、久美さんたちと一緒にお留守番です」


「なるほど」


「優輝ちゃん、そろそろ再開」


 由香里さんが腕時計を見て、ハリーアップを促す。


「おっと、では行きましょうか」


 スープを飲み干し、ゴミ箱に入れる優輝さん。私たちも飲み物を飲み切り、あとに続く。


 こうして、後の収録もつつがなく終わりました。


「お疲れ様でしたー!」


 全員で、頭を下げ合う。


 音声データの入ったメモリや、多分ゲーム映像が入ったディスクを渡してもらう由香里さん。


 収録室を出て窓の外を見ると、すっかり夜。


「どこかで食事でもしていきませんか? せっかく渋谷まで来たことですし」


「そうですね。家に帰ってから作ったら、もうアメリが寝る時間になってしまいますし」


 優輝さんの提案に、一同合意。イタリアンをいただいて帰りました。

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