神奈さんとアメリちゃん

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第四百八十話 アメリちゃんのリボン

公開日時: 2022年1月29日(土) 21:01
文字数:2,450

 LA・LA・LA、お買い物~。お買い物~。お買い物ったら、お買い物~。


 陽気な脳内ソングを、声に出さねど歌いつつ、駅前でアメリちゃんとお買い物なう!


 お手々つないで、らん・らん・らん。


「おお~。お姉ちゃん、ごきげん!」


「まーねー。ほとんど、机にかじりつく生活してたからねー」


 読み切りの仕事は、担当が川内せんだいさんから真留さんに代わったとき、自分から「やらせてください」とお願いしたもの。


 まだ新人であった真留さんは、相当悩んだそうだけど、その末にOKを出してくれた。


 この頃すでに、「あめりにっき」一本でも食べていけるだけの売上はあったけど、より稼ぎたいというより、色んなものを描いてみたかったのだ。


 実際、猫又物を筆頭に、読み切りでは多様なものを描いてきた。そして、その多様の一つになるのが、今回の読み切り、「猫耳幼女育児日記」。


 自分の手応えも、真留さんの反応も悪くない。いや、かなりいい。これは、いけると踏んでいる。


 猫アメリの死を思い出しながら描くのは、かなり辛かったけど、アメリは今こうして、そばにいてくれている。この子が勇気をくれた。


「ありがとう、アメリ」


「おお? うん」


 突然感謝され、戸惑う愛娘。そんな彼女に、ふふ、と微笑む。


「じゃあ、シャンデリアイタリアンファミレス行こっか!」


「おおー! カタツムリ!」


 るんたったと、おなじみの店に、おなじみの料理を食べに行くのでした。



 ◆ ◆ ◆



「カタツムリ、美味しかった~!」


 エスカルゴを今回も二皿満喫したアメリちゃん、超ゴキゲン! 良きかな良きかな


「じゃあ、リボンの材料を、手芸屋さんで手に入れましょ~」


 かつて超有名デパートが入っていて、その跡地にできたショッピングモールに向かう。


 位置的には、駅前南部のショピングモール「フォレスト」の真横。


 今年の五月に大型電気店が入り、そこからさらに追うようにテナントが集まり、今に至った次第。


 本来なら、フォレストにも手芸店があったのだけど、そこは閉店してしまいました。世知辛いですねえ……。


 それはさておき。エレベーターを降り、洋服屋さんを突っ切って店舗にイン!


 わあ、布布ワールド! 可愛いのを中心に、いろんな布がたーくさん! ジッパーやフェルトキット、がま口のパーツなんかも売っています。


「すみませーん」


 レジで、店員のお姉さんに話しかける。


「はい……あっ! 猫耳ちゃん! ……と、すみません。失礼しました」


「あはは。なんか、うちの子たち人気者みたいですね」


 ほかにお客さんもいなかったので、私が気さくに話しかけると、彼女も微笑む。


「はい。出会うと幸運が訪れるって話題で。あの、今日会ったこと、友達に話してもいいですか?」


 口に手を添え、小声で尋ねてくる。


「どうぞどうぞ。もはや、隠し立てしませんから。あ、本題忘れてました。この子の頭囲を測って欲しいんです」


「何を作られるんですか?」


「リボン付きヘアバンドを、作ってあげようかと思いまして」


 「わかりました」と、アメリの頭でメジャーを一周させる彼女。


「四十九.九ですね。色と柄は、どういったものをお求めでしょうか」


「そうですねえ……アメリ、希望ある?」


 不思議そうに店内を眺め回している、愛娘に問う。


「薄紫でケイティちゃんの!」


「あー、ごめんねー。ケイティちゃん、ないの。猫の顔の白抜きで良かったら、あるんだけど」


 中腰で、アメリに話す彼女。


「それでもいーよー!」


「……少々お待ち下さい」


 お姉さんが、布を手に戻って来ました。


「これとか、どうでしょう?」


 言葉の通り、薄紫の地に、白抜きで猫の顔のシルエットが浮かんでいる。


「どう?」


 そのまま、質問をアメリにパスする。


「いいと思う!」


「では、これでお願いします」


「かしこまりました。リボン付きヘアバンドですと……」


 メジャーを取り出し、測る店員さん。


「これだけあれば、必要な量になりますかと」


「わかりました。必要なぶん、裁断していただけますか?」


「かしこまりました」


 鮮やかな手付きで、切り分けていく彼女。


 こうしてお会計を済ませ、互いに手を振りながら退店。「幸運の猫耳ちゃん」と交流できて、嬉しそう。


 何の気なしに階の案内を見ていると、ここにも本屋さんが! へー。寄っていこうかな?


「アメリちゃん。本、買っていく?」


「うん!」


 アメリに、子供向け科学読本をプレゼント。ダークエネルギーとか調べちゃう子だけど、こういうのも、まだまだ好きなようだ。


 私自身も、ファッション誌を購入。秋の流行ファッションを先取りします。……まあ、由香里さんあたりに誘われないと、資料としてしか使わない、干物なんですけどね。


 今度、またブティック巡りご一緒しようかな。


 百均で両面テープも買い、だいたい欲しいものは揃ったかな。帰宅~。



 ◆ ◆ ◆



「おねーちゃん、これがリボンになるのー?」


「そだよー。飲み会までに仕上がるかな? まあ、そのときは続きは明日でいっか」


 ハサミで布を微調整して、リボンとヘアバンドの元を作る。


 折りたたんで、アイロンかけかけ~。ふう。


 ひだを作りーの、まち針で止めーの、縫い付けーの……。


「よいしょお!」


 ミシン先生、押し入れから登場! 何年ぶりに会ったかしらね。


 カタカタ……。


「アメリ、暇でしょう。スマホなり、さっきの本なり見てたら?」


 じーっと、私の手元を見ている愛娘に気づき、提案する。


「見てるの面白いから、見てるー」


「そう?」


 アメリちゃん注視の中、作業続行。ゴムを通して……よっし、ヘアバンド部分完成!


 あとは、リボンを作るですよ。


 こちらも、アイロンかけて、両面テープで止めて……。で、バンドを通して、真ん中を止めてっと。垂れ付きリボン完成~! 合体!


 おお、まだ夜までは余裕がありますね。


「アメリちゃん、着けてみよう」


「おお~」


 装・着!


 か……可愛い~!!


「スマホッ!」


 ガバっと手繰り寄せ、激写開始! いつものごとく、色々なポーズをリクエスト!


 やーん! 可愛い、可愛~い!


 可愛いを連呼しながら、撮影ボタンをひたすらタップ!


 撮影会は、例によって一時間に及んだのでした。ごめん、アメリ。また調子に乗っちゃった……。にゃふん!

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