本日は曇り。ノーラちゃんは今日も練習に出るようで、連日スマホを買い損なったようです。習い事も大変ね。
今日も近井さんと待ち合わせをして、公園でアメリたちを遊ばせています。
「このまま梅雨が上がってくれるといいんですけどねえ」
「夜から、また雨が続くらしいですよ」
困りましたね、というニュアンスを込めた表情で、互いに顔を見合わせる。
まあそれでも、とりあえず今日も子供を、お外で遊ばせられて良かった。引きこもりっぱなしじゃ、気が滅入っちゃうもんね。
「うちも、車を置くスペースのある家にすればよかったですねえ。子供が生まれてみると、車がないと意外と不便で」
「あー、わかります。うちの場合、アメリは猫だったわけですけど、やっぱり獣医さんやペットホテルに運ぶときは車の便利さを痛感しましたもの。実家でも、何かのときによく乗せてましたし」
親二人が益体もないおしゃべりに興じている中、例によって二人は砂遊び。昨日よりは砂が乾いてるね。
今日は、ともちゃんがおままごとセットを持ってきていて、二人でおままごとをしています。
「はい、おとーさん。おにぎりができましたよ」
「おお? どうすればいい……?」
おままごと初体験アメリちゃん、泥団子に困惑。
「食べたふりをして」
「おお~……むしゃむしゃ。おいしいよ、おかあさん」
遊び方をアドバイスされ、さっそく実践。良き哉良き哉。
ふふ、おままごとに関しては、ともちゃんが先輩だね。
「こんにちはー」
背後から子供の声。振り向くと、エイイチくんとミコちゃんでした。みんなでご挨拶返し。
「エイイチくんたちも、おままごとやろー?」
アメリちゃんキラキラお目々でお誘い。
「えー……小三にもなっておままごとはちょっと……」
渋るエイイチくん。
「ダメ……?」
アメリちゃん、今度はうるうるお目々。
エイイチくん、「あー……」とか「うーん……」とかうなりながら、あちこち視線をさまよわせ、逡巡。
「ちょっとだけなら……」
さんざ迷った末に、恥ずかしそうに承諾しました。ふふ、アメリちゃんのお願いには、逆らえない魔力があるのですよ。
「じゃあ、エイイチくんがおとーさん。アメリちゃんがおかーさん、ミコちゃんがおねーさんね!」
さっそく、仕切り始めるともちゃん。末は優輝さんか、由香里さんか。
「おお……? おかーさんはおとーさんに、どういうことをすればいいの?」
夫婦のやり取りというものを、よく知らないアメリちゃんが困惑なう。
「えっとね。ごはん作ったり、お出かけのキスしたりするの」
「友美~!」
頬を真っ赤に染め、手で顔を覆う近井さん。あらあら、ラブラブなんですねえ。
「わかった! キスすればいいんだね!」
「アメリちゃんも、真に受けないでー!」
アメリの容赦ない天然ぶりに、近井さんパニック寸前。
エイイチくんも顔が真っ赤だ。
「キスはなしで、ごはん作ったりとかだけにしてくれるかな?」
混乱してる近井さんに代わり、提案。「わかったー!」とアメリちゃん承諾。
「みんなー、ごはんができましたよー。ふわあ~」
さっそく潰した泥団子を用意して、食事シーンを始めるアメリちゃん。って、何そのあくび?
「おかーさん朝弱いから、トーストぐらいしか作れなくてごめんねー。ふわわわ~」
「待って、ちょっと待って! それ、私の真似!?」
「うん! おねーちゃんを参考にしてみた!」
今度は、私が頬を熱くし、顔を覆う番になりました。
「えーとですね、これはですね。その、ワタクシたしかに、大変朝が弱いのですけれども……」
しどろもどろで弁明。うう、きょとんとしてる子供たちと、近井さんの視線が……。
「ほんとに、漫画の通りだったんですね……」
近井さんの何の気なしの追撃が痛い。
「ハイ。アレハ、フダンノワタシヲ、マンマエガイテルンデス……」
穴があったら入りたい。あうう。
「だからね、朝ごはんはアメリ作るようになったの!」
「あ~!! ごめんなさい、ごめんなさい!」
もう、どうリアクションしたものやら。
「えーと、アメリちゃん。猫崎さんの様子がちょっと大変だから、朝に弱いのは、なしでいこうか」
「はーい!」
近井さんのフォロー。アリガトウゴザイマス……。さっきは、内心あらあらなんて思ってスミマセンデシタ……。
ともかくも、不穏な要素は取り払われ、キスも朝に弱いのもなしで、平和なおままごとが展開されるのでした。やれやれ。
「一時はどうなることかと思いました」
「私もです」
近井さんと、困り顔を見合わせる。子供の観察眼って怖いね。
やがて、おままごとも無事終わり、帰宅の時間が近づいてきました。
「じゃあね、二人とも」
「おおー、またねー」
「ばいばーい!」
子供たちが名残惜しそうに別れの挨拶。
私も、近井さんとお別れのご挨拶をする。
「アメリ。最後にあれ、ちょっとやってく?」
ブランコを指差す。
「やるー!」
とてててと、走っていくアメリちゃん。転ばないでねー。
「よし、押すよー。そーれ!」
着席したので、ゆっくり、そして少しずつ力を込めて押していく。
「おお~!」
宙を舞う感覚に興奮する愛娘。
そういえば、最初にここで遊んだ遊具がこれだったね。懐かしいな。
そして、まりあさんと出会って。
あの日、この公園に来ようと思わなかったら。あのベンチで休もうと思わなかったら。私たちの運命は、どう変わっていたのだろう。
人生は、選択の連続だ。そして、それはやり直すことができない。
今のところ、私たちは最良の選択をし続けていると思う。
様々なものに感謝を!
そんな気持ちになるのでした。
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