神奈さんとアメリちゃん

退会したユーザー ?
退会したユーザー

第十八話 念願のドミグラスソース・オムライス!

公開日時: 2021年4月17日(土) 10:31
文字数:2,993

「ごしゅ……おねーちゃん、ここ、こないだのお店と違うよ?」


 「アール・サイン」一階のお店へ連れて行くと、アメリが怪訝けげんな顔をする。


「こないだのお店とは違うけど、ここもオムライス屋さんなんだよ~」


 こちらのお店は「LAKULU」。「パルの木々」とは別系統のオムライスチェーン店だ。


「ここも美味しいよ」


 というわけで、早速入店。席に案内され、メニューに目を通す。


「あ、アメリ向けのがあるよ」


 そう言って、メニューを向こうに向けて指差す。そこにはいわゆるお子様ランチ的立ち位置の「おこさま こねこ」という猫型プレートの写真が乗っていた。可愛いカップに入ったスープとかゼリーとか、とにかくデザインが可愛い。


「これならアメリも十分食べ切れると思うし、私がドミグラスソースの頼むから少し分けてあげるね」


 すると、アメリは「おお~!」と興奮。パルの木々では未練タラタラだったものね。アメリに少し分けてあげる前提となると、私はこのパン・サラダ付きのドミグラスオムライスプレートかな。


 注文して雑談することしばし、二つの料理が運ばれてきました。


「じゃあ、アメリ。いつもの。いただきます」


「いただきます!」


 しかしアメリ、ゼリーを前に何だかまごついている。


「これどうやって食べるの?」


「それと、そのスープはスプーンですくって食べるんだよ」


 食べ方を教えると「おお~! おいしい!」と大喜びで食べ始める。良きかな良きかな


 さて、私の方はまずはオムライスをひとすくい。うーん、コクのあるドミグラスソースが絡まって、チキンライスと相性抜群!


 そしてサラダ。これもシャキシャキしてておいしい。パンもふっくら。うっかりアメリのぶんを残すのを忘れないようにしないとね。


「ご……おねーちゃん、それ食べていい?」


「どうぞー」


 ひと口残したオムライスをアメリに差し出す。彼女がそれを食べ、輝いた瞳をこちらに向けてくる。念願がかなって良かったねえ、アメリ。


「ごちそーさまでした」


「ごちそーさまでした!」


 私がごちそうさまで締めると、アメリも続く。


 さあ、あとは「るるる」を残すのみ!



 ◆ ◆ ◆



 やって来ました、懐かしの……ってほどでもないけど、子供服売り場!


「ご……おねーちゃん、今日は何買うの?」


「私、アメリはパンツルックのほうが似合うと思うのよ。まずはそれ系の部屋着と、あとは外出用の秋物かな」


 というわけで、まずは部屋着コーナーを物色。すると、アメリに似合いそうな紫のショートパンツが。


「ねえねえ、こういうのどう? スカートより動きやすくなると思うよ」


「いいと思う!」


 おお、お気に召しましたかお嬢様。これに合わせるトップスも選んでもらうと、案の定黒猫がプリントされた白いシャツをチョイスしてくる。でも、お姉さんとっても似合うと思うわ。


 というわけで、この二つに加え、似たようなもうワンセットの計四着をゲット。


 続いて秋物だけど、カーディガン羽織るだけでぶっちゃけ事足りるのよねえ。まあ、本人アメリの意見も訊いてみましょ。


「アメリー、これから寒くなってくるから長袖が必要になるけど、カーディガンでいい? ちゃんとした長袖がいいなら、そっち買うけど」


 店員さんを呼んで、先ほどの部屋着も含めて試着。


「可愛い……!」


 まずは部屋着。似合う、やっぱりショートパンツが絶対的に似合う! さすがアメリ! そこに痺れる、憧れるぅ! うわー、写真めっちゃ撮りたい。お尻を手直ししてしっぽ出せるようにしたら完璧よね!


 続いて白のカーディガンと、同じく白の長袖。これまた可愛い。いやー、甲乙つけがたいな。なので「どっちがしっくり来る?」と本人の感性に問う。


「んー……? このカーディガンとかいうのでいいと思う!」


 りょーかい! では、カーディガンも二着買っていきましょうね。


 というわけで、計六着買って子供服売り場を後にしました。



 ◆ ◆ ◆



「さあ! おもちゃ売り場だよ!」


 とエレベーターの扉が開いたので、テンション高く呼びかけるけど、どうもアメリが元気ない様子。


「大丈夫?」


「疲れた……」


 あらま。そりゃそうか。今回は銀行とビル三棟を股にかける大冒険だったものね。私でもちょっとバテ始めてるんだから、病み上がりのアメリの体力だと限界か。もっとしっかり、気を使わなきゃいけなかったなあ。反省。


「そっかー。じゃあおもちゃはまた今度にして、帰ろうか」


 こくこくとうなずくので、そのままエレベーターから出ずに地下二階の駐車場へ。まあ、六着の服で料金は満たしてるでしょう。


 かくして、家路を急ぐのでした。



 ◆ ◆ ◆



「「ただいまー」」


 二人で声を揃え、ただいまの挨拶。今日の戦果を家に運び、まずはお風呂。続いてスパゲッティーでお手軽に夕食を済ませ、あとはボトムの大改造!


「ねーご主人様」


 針と糸をちくちく通していると、南海映像を音付きで見ていたアメリが声をかけてくる。


「なーに?」


「もっと、ほかのも見てみたい!」


 ふむ。さすがに南海映像ばっかりじゃ飽きちゃうか。それじゃあ……。


「アメリ。数字は読めるようになったかな?」


「少し!」


「よし、じゃあね。これリモコンの数字を色々押してごらん」


 言われた通りに色々押していくと、次々にチャンネルが切り替わる。「おお~!」っと感嘆の声を上げる彼女。いくつか見ていくうち、「スポンジ・トム」という子供向け番組が気に入ったようで、それを夢中で見始める。


 さてさて、作業再開としますか。ちくちくと縫っていき、しっぽ穴無事完成!


「アメリー、できたよー」


「ちょっとまってー!」


 ふむ、今ちょうどいいとこらしい。じゃあ、次回作のプロット(ネームのさらに設計図になる文章)でも書いてますか。


「終わったー!」


 ややあって八時になると、「スポンジ・トム」が終わったらしい。私もキーを叩く指を止めてファイルを保存する。


「じゃあアメリ、これ履いてみようか」


「はーい!」


 そんなわけで猫がプリントされたトップスとショートパンツを合わせると……天使! まさに、マイエンジェル! やだ、可愛いヤバい語彙崩壊!!


 スマホで激写なう!


「いいね、いいねー! 女豹のポーズ・上半身起こし版やってみよう!」


 足を前後にやや開き膝をつき、反るように両手で招きポーズを取ると、アメリも真似する。やば! これはやばい! 破壊力高すぎか! 夢中で撮影ボタンをタップする。やっぱ、リアル猫耳娘のしっぽ最強だわ……!


 かくして、おなじみ新衣装撮影会は例によって一時間以上に及び、気がつけばアメリの就寝時間に。


「ありゃ、もうこんな時間。アメリ、眠る前にベッドでまりあさんの絵本読み聞かせてあげるね」


「楽しみ!」


 パジャマに着替え直し、わくわくと毛布に潜り込む彼女。私もベッドに横になり、広げた絵本をテーブルランプで照らし読み上げる。


「あるところに、クロという黒猫の女の子がいました。クロは怖がりで、とっても気弱。でも、世の中の色んなことに興味がありました……」


 お話は、猫の少女クロが、旅の中で様々な出会いと経験を経て、少しずつ勇気をもらっていくという心温まる内容。まりあさんの人柄がそのまま作品になったような優しい作風だ。


「……ねえ、おばあさん。この川はどこまで続いているの? ……寝ちゃった?」


 気づけば、アメリがすうすうと寝息を立てている。うむ。これはとてもリラックスできる、いい絵本だ。仕事机のライトを点けて本を本棚にしまい、テーブルランプの明かりを落とす。


 プロットをもうひと頑張りしたら私も寝ましょ。

読み終わったら、ポイントを付けましょう!

ツイート