神奈さんとアメリちゃん

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第五十九話 ハイテンション・スキヤキ!

公開日時: 2021年4月18日(日) 15:31
文字数:2,223

「終わったああああああっ!!」


 ファイルを保存し、ペンを置く。天ぷら祭りから早四日めの夕刻、ついに脱稿!


 あとはこれを真留さんに送って最終チェックをしてもらい、特に直すところがなければ一週間ほどフリーになれるという寸法。


 マイペースかつ筆の速さを維持できるのは、やっぱ自分でもすごい強みだと思う。


 送信、送信……っと。


「アメリいいい! お仕事終わったよおおお! 褒めて褒めて~」


「おお~! おねーちゃん、偉い!」


 背後でぬいぐるみ遊びをしていたアメリに抱きつき、昂りのあまり頬ずりしながら褒め言葉を求めてしまう。いつもとは逆に、頭を撫で撫でされる。


 真留さんの最終チェックが残ってるからまだ完全突破ではないんだけど、やっぱり気分的には完全にハイ!


「さーて、そろそろお夕飯だけど今日は何にしようかなー。セルフ打上げ会ってことでちょっと贅沢にいきたいよね!」


 アメリをさらにぎゅーっと抱きしめた後、すっくと立ち上がり右人差し指を頬に当てて思案する。


 とりあえず、訊くだけ訊いてみようか。


「アメリー。何か今日食べたいのある?」


「おねーちゃんが作るの、全部大好きだからなんでもいーよ!」


 満面の笑顔で、嬉しくも一番困る返答をされてしまった。


「うーん……よし! 例によってスーパー行ってから決めよう!」


 というわけで、いつものパティーンと相成りました。



 ◆ ◆ ◆



 さあさあ、相変わらず妙に印象に残る店内BGMを聴きながら、スマホでチラシチェック!


 今日はずばり、国産牛肉が割引大セール! 焼き肉がまず思い浮かぶけど……なんかグッと来ないな。少し前に二回もバーベキューをいただく機会があったせいかもしれない。


 じゃあ、しゃぶしゃぶは? 美味しそうだけれど、せっかくお仕事がはけたんだし、もうちょっと凝ったものにしたい。


 と・な・る・と。ここはズバリ、すき焼きでしょう! いかにも「祝」って感じするし!


 メニューが決まれば、あとは具を買うのみ! まず肝心の主演俳優・牛肉。これは、ちょっといいやつを買っちゃおう。続いて、すき焼きのたれ。あとは、ネギ、しらたき、焼き豆腐、しいたけ、白菜、春菊、牛脂といった助演俳優たちもかごにイン! 卵は、こないだ天ぷらに使ったのが残ってるからそれでOK。


 それじゃ、お会計済ませて帰りましょ~。



 ◆ ◆ ◆



 ただいまーっと帰った後は、具材を冷蔵庫に入れ、お米を水に浸して一旦寝室へ。


 お、真留さんから返信が来てる。


 「原稿、確かにいただきました。このまま掲載で問題ありません。お疲れ様でした」との文面。


「よおおおっし!」


 ガッツポーズ!


「あーめり、あーめーり~! やったよー、通ったよ~! 完全にお仕事終わりだよおお~」


 アメリの手を取り、ブンブン横に振ってはしゃいでしまう。


「お、おお~? 良かったねー、おねーちゃん!」


 勢いに気圧されながらも、喜びを分かち合ってくれる彼女。


「ふっふっふっ。これでアメリと気兼ねなく遊べるよ~! 何して遊ぶ~?」


「んーとね、じゃあ文字と算数のお勉強!」


「おお、お勉強でいいのかい? 欲のない子じゃのう。ふぉっふぉっふぉっ」


 我ながら明らかにテンションがおかしいので、落ち着いて深呼吸。すううううう……はあああああ……。


「よし! 私は正気に戻った! じゃあ、お勉強しましょう~」


 まずは算数。足し算引き算は二桁までなら十分にできるみたい。そろそろ三桁について教えてもいいね。


 ひらがなとカタカナは、九割方マスターした模様。あと一息!


 うちの子ったら天才じゃないかしら!? などと、親バカ全開なことを思ってみたり。


 そんな感じでお勉強を教えていると、スマホのアラームが三十分経過を知らせる。


「じゃあ、今日もアメリにお手伝いしてもらおうかな!」


「おおー!」


 いざ、キッチンへ!



 ◆ ◆ ◆



 まずは、炊飯器のスイッチをピッとね。


「では、アメリちゃんには春菊とえのきとネギのカットをお願いしちゃおうかな。洗うから、ちょっと待っててね……よし! えのきは根っこを切るだけでOK。春菊は一口サイズに切ってね。ネギは、こんな感じで斜めに切るの」


 お手本を一度見せてから、持ち手を向けてキッチンばさみを渡す。


「頑張る!」


 おお、いい気合ですこと。私のほうは、お豆腐、しいたけ、白菜、そしてお肉を包丁で切っていく。


 熱したお鍋に牛脂を溶かし塗り、ネギとお肉を両面焼き。弱火にした後、すき焼きのたれを注いで豆腐、しいたけ、えのき、しらたきを投入! 春菊は火が通り過ぎると苦味が強くなるのでぎりぎりまで投入を控える。


 あとは、それぞれの小鉢に生卵を割り入れ、カラザを取って準備OK!


 お米も炊けたので、蒸らし時間中に春菊をお鍋に投入! ほどよく火が通る頃には、ちょうど良くお米も蒸れていることでしょう。


 蒸し終わったらお米を切って、コンロの火を止め、テーブルの鍋敷きの上に鍋を置いて飯をよそう。


「でっき上がり~! じゃあ、いただきますしよう。いただきます!」


「いただきます!」


「お肉とか、その卵をまぶして食べるんだよ~」


 どれどれ、いただきましょうか。


 まずはお肉。……うん、やはりいいお肉だけあって、なかなか美味しい! 続いて春菊。苦すぎない程度に火が通っていて、グッド!


「アメリは春菊平気?」


「ちょっと苦いけど、へーき! すき焼きって美味しいね!」


 初すき焼きにご満足いただけたようで、実に良かった。


 あっという間に、お鍋の中身もお茶碗の中身もすっかり空に。


「ごちそうさまでした!」


 二人で合掌しつつ合唱。


 さーて。明日からのフリーな一週間、何をしようかな!

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