「それでは、お疲れ様でした~」
三家の分岐点である白部家の前で、別れを告げる私たち。
「いやー、これからやっと買い物行けますよー」
伸びをしながら、お陽様の光をうんと浴びる。
「え、この後お買い物ですか?」
由香里さんがちょっと不安そう。
「ええ。さすがにそろそろ、生鮮食品が恋しいですし」
すると由香里さん、「危ないことないでしょうか?」と考え込んでしまう。集団行動した公園と違って、私とアメリ二人きりだから心配なのかな。
「せめて、車を使ったほうが良いのではないかと」
と続ける。ふーむ、まあたしかにご心配ごもっとも。
「わかりました。車で行きますね」
「なんなら、ウチがついて行こっか? 最近家事サボりまくったからな。買い出しついでに」
久美さんの援護射撃。
「ありがたいお申し出ですけど、ご迷惑じゃありません?」
「今さらだぜ、神奈サン。それに、迷惑だなんて思ってないよ」
「姉さんがついててくれるなら心強いっすね。でも、お酒はほどほどにしてくださいっすよ」
「善処する」
最後の言葉を聞いて、ついぷっと吹き出してしまう。
「え? 今の笑うとこあった?」
「すみません。総理の頼りない会見を思い出してしまって……」
理由を説明すると、一同「あー」と得心がいった模様。
「じゃあ、同伴させてもらうんで、出かける用意ができたら言って」
「うち、お昼の材料が保存食しかないので、今からでも行こうかと思ってまして」
「へー。んじゃー、行こっか」
というわけで、一度別れ、エコバッグを持って久美さんとお出かけする次第となりました。
◆ ◆ ◆
「ウチさ、基本買い物って任されないんよね」
道中、久美さんが話しかけてくる。
「そうなんですか?」
「ほら、ウチ徒歩勢じゃん。で、買い物が基本多いからってんで外されるんよ」
あー、なるほど。
「キロ単位だからねー、我が家の買い物。五キロぐらいなら筋トレ代わりに持つけどなー」
「大家族ですものねー」
とか話してるうちに、いつものスーパーに到着!
「ここのBGM、面白い作りしてるよなー」
と、音楽家らしいコメントをこぼす久美さん。
「ですよねー。何か妙に耳に残るんですよ」
などと言いつつ、スマホチェーック!
今日は、ホタルイカ、レタス、キャベツなどがお安い。
「久美さん、今日のセールはこんな感じですよ」
「へー、ホタルイカ……。ポン酒できゅっといきてえねぇ」
実に酒飲みらしい第一声。ともかくも、最終的に落ち合うことにして別行動。
うちも、せっかくだからホタルイカにしよう。
久美さんもホタルイカ狙いだから鮮魚コーナーに一緒に行くかと思ったけど、違う方向へ。あっち、リカーコーナーがあったっけね。わかりやすいなー。
カートを押して歩くと、アメリに皆さんの視線が集中! もう、慣れましたとも。
「おお~、赤ちゃんイカ!」
ホタルイカを見て、目をまん丸にするアメリ。耳が動いて可愛い。これよねー、猫耳の醍醐味って。
「あー、これはちっちゃいけど大人のイカさんなのよ」
説明すると、「おお~」と感心。
「今日のお昼はこれにしようね。あとはお野菜ぶんも……わかめのお味噌汁でいいか。あとは夜だなー」
お昼はホタルイカってことで和だから、中か洋でいきたいねー。なんかキャベツも食べ飽きたから、レタスでいいレシピないかしら。検索~。
へー、レタスのごま和え。これ、お昼に回そうかな。ほかには……。ほほう、レタスとアンチョビのスパゲッティーとな? これ面白そうねー。よし、晩ごはんはこれにけってーい!
レタスをかごに入れた後は、缶詰コーナーでアンチョビとオニオンスープ缶をゲット。
あとは……。
「何か買いたいものある?」
「うめえ棒とコーラ!」
ほいほい。あとはおなじみ三種の神器ですかねー。うちはこんなもんかしら。お会計済ませて、トランクにとりあえず入れときましょ。
◆ ◆ ◆
「おまっとさーん! トランク開けてくれー」
車内で時間つぶししている旨は伝えてあるので待っていると、ややあって久美さんが来ました。
てか、すごい大荷物ね……。かくてるの皆さんのお買い物って、いつもこんな感じなのかー。とりあえず、トランクを開ける。
「ふー、調子に乗って酒買いすぎた」
あら、大荷物のかなりがお酒なのね。善処とは一体……。
「あ、言っとくけどふつーに食料もたくさん買ってるかんね」
心を読まれた。
「出していいですか?」
「おけ」
というわけで、発進!
「ウチでも結構キツい量だなー。そりゃ運ぶのを頼まれるわけだ」
独り言を言う久美さん。
「そうなんですか?」
「うん。優輝たちがよく荷物ひいこら運んでるからさ、買い物に行かないぶんいつも家に運ぶの手伝ってんのよ」
「なるほど」と頷く。
「まー、大家族なりの苦労ってやつだね。今日は日用品頼まれてないから楽なほうよ」
あー、これでトイレットペーパーとかあったらそりゃ大変だ。
そんな会話をしていると、かくてるハウス前に着きました。
「じゃ、今日はどーも」
「いえいえ、今までのお返しと思っていただければ」
大荷物を抱え一礼する久美さんに頭を下げ返し、えっちらおっちらと邸内に入っていく彼女を後に、帰宅するのでした。
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