神奈さんとアメリちゃん

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第四百十五話 暗記多すぎよね

公開日時: 2021年11月23日(火) 21:01
文字数:2,141

「そういえば、『松風盆栽』いるじゃない? あの子って、クロちゃんの中では男の子、女の子どっちなの?」


 三時になり、二度目の休憩タイム。私も仕事を一休みし、談笑の輪に加わっています。


 そこで、例によって湧いてしまった素朴な疑問を、ぶつけてみることに。


 ちなみに、三時ということでおやつにおせんべいを出しています。クロちゃんがせっかく来てくれているし、クッキーはさっき出したからね。お茶も、全員緑茶。もちろん、クロちゃんは濃ゆいの。


「松風ですか? ボクの中では男の子ですね」


 まあ、予想通りか。松風なんて名前で女の子だったら、ちょっとあれだし。


「じゃあ、松風くんとして。彼、元気してる?」


「はい。ただ、長雨で手入れできなくて困ってます。お姉ちゃんも、花壇の手入れができなくて参ってるみたいです」


 ふーむ。うちの庭で育てててるというか、生やしてるのは芝生ぐらいだけど、屋外園芸勢にとっては切実な問題だね。


 逆に、うちのトマトとバジルは室内で育ててるから、そのへんは気楽だな。うちのトマトの木も、だいぶ大きくなったものです。実、早く成らないかなー?


 アメリの育てている「みどりんポトス」も、元気そのもの。ずいぶん蔦葉がにょきにょき伸びました。ポトスの丈夫さは、アメリみたいな子供が育てるのにちょうどいいかも。白部さんに感謝だね!


 ほかに、クロちゃん関連の話題といえば……。


「話変わるけど、クロちゃんって将棋の強さ、今どのぐらいなの?」


「棋力ですか? まだ試合はしていないので、教室的にはわからないですけど、アプリでは三段の称号をもらってます」


 ううむ、数字で言われてもピンとこないな。


「それって強いの?」


「先生によると、非女流でプロを目指すなら、あと二段欲しいレベルだそうです。ボク、女流じゃなくて、男性に混じって指したいんで。ただ、アプリでの順位付けですから、正確な棋力は教室の試合の結果次第ですね」


 女流? 頭脳競技の世界にも、男女別けがあるんだ。まあ、競技人口が男女で圧倒的に違うだろうから、そうなるのか。ただ、クロちゃんの口ぶりからすると、女性が男性の世界に混ざるのはできるのね。


 詳しくはわからない世界だけど、一歩一歩、プロへの門戸へ近づいているというのだけは、なんとなく伝わった。


 クロちゃんとお話していると、くいくいと裾を引っ張られる。


 その主は、アメリちゃん。


 ははーん、クロちゃんとばかり話してるから、やきもち焼いちゃったか。可愛いなあ。


「アメリ、お勉強はどのぐらい進んでる?」


「小数っていうの習ってる!」


 ほほー。


「どのぐらいまで理解できてる感じ?」


「えっとね、足し算と引き算をさっきやってた!」


 おおー!


「すごいね! ありがとうございます、白部さん」


「いえいえ。本当にスポンジみたいに知識を吸収するので、すごく教えがいがありますよ」


「ミケだって負けてないわよ!? 同じとこ教わってるもん!」


「おー、ミケちゃんもすごいね!」


 に対抗意識燃やしちゃうあたり、やはりプライドが高い。でも彼女の場合、それが向上心になっているからいいことだ。


「ボク的には、四年の漢字覚えてくれると、パズルの作りがいがあるんだけどな」


「う……それだってちゃんとやるわよ! だから、待ってなさいよね!」


 ミケちゃん、テンション高いな。対象的に……。


「頭がフットーしそーだぞー……」


 ノーラちゃんは、机に突っ伏してへばってました。


「ルリ姉~。体育館行きてー。運動してえ~」


「週末ね。文武両道っていってね、勉強できることも大事よ」


「暗記が多すぎるんだー。恐竜とか、そういうので楽しく覚えたいぞー」


 それは同感。日本の学校教育、暗記多すぎよね。私は日本史取ったけど、年号ラッシュに人名ラッシュの暗記祭りは、二度とやりたくない。漢字覚えなくていいぶん、世界史にすれば良かったかな、なんてしょうもない後悔もしたっけ。


「そうね。楽しく勉強できる方法、帰ったら練ってみるね」


 そう応える白部さんも、暗記で苦労した口かなー?


 大学では、高校までとはガラリと学習方法が変わるそうで。先生から一方的に教わるのではなく、自分から貪欲に知識を求め、研究の成果を発表していくのが重要なんですって。やっぱり、大学行ってないとピンとこない感覚だなー。


「あー、でも歴史はキョーミあるぞー! あの山丸岡城資料館で見たような鎧着て戦ってたとこ、勉強してー!」


 はは、ノーラちゃん……。歴史こそ、暗記祭りですよっと。


「あ、少し休憩時間を長く取りすぎたかな。では、再開ね」


 「はーい」と、子供たち。


「では、私も仕事に戻ります」


 お茶とおせんべい一袋を手に、デスクに着席。


 来月末までには、次々号の連載と読み切り、両方の原稿ができてなければならない。そう考えると、あまりうかうかしてられる状況でもない。


 袋の中でおせんべいを割りながら、気合を入れる。


 とにかく、仕事をこなしつつ生活もしっかりと! 読者の皆さんに、「作者急病のお知らせ原稿落としました」を見せることだけは避けないとね!


 そんな羽目になったら、特に自責の念からお手伝いに来てくださった優輝さんが、後悔と絶望でどうにかなりかねない。


 おせんべいをかじりながら、すいすい筆を走らせる。途中、芦田さんと佐武さんに進捗を問うと、お二人とも順調なようだ。


 子供たちもお勉強頑張ってるし、私も頑張るぞー!

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