神奈さんとアメリちゃん

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第三百八話 春といえば、いちご狩り!

公開日時: 2021年8月2日(月) 21:01
更新日時: 2021年8月5日(木) 20:56
文字数:2,816

 日曜日の朝。食後にぼーっとデスクで考え事なう。


 真留さんからの返信待ちで、ぽっかりと一日の空白時間ができてしまった。


 どうしようかな。水族館はお正月に行ったし、動物園か遊園地にアメリちゃんを連れて行ってあげるってのも悪くない。


 ……あ! ありましたよ、春ならではのイベントが!


 さっそく、LIZEで皆さんに呼びかけ。さすが、全員朝がお早い。即座にご挨拶が返ってきます。


「唐突ですけど、いちご狩りに行きませんか?」


 そう。春といえばいちご。みんなでいちご狩りを楽しもうというご提案なのです!


「や。これはあたしとしたことが、失念していました。たしかに時期ですね! くう~! イベントプランナーの名が廃るなあ! ぜひ行きましょう!!」


 なんだか妙に「やられた!」感がこもった優輝さんのお返事。イベント大好きガールの血が騒いで仕方ない感じね。


「いいですね~。去年はクロちゃんに体験させてなかったので、初体験させてあげたいですね!」


 まりあさんもノリノリ。


「私たちもぜひ。ノーラちゃんに、楽しい体験させてあげたいです!」


 白部さんもノってきた!


「で、いつにします?」


「今日……とかダメでしょうか?」


 優輝さんの問いに、ノープランな突発的アイデアであることがバレてしまう。


「うちはかまわないですね。そこらへん、自由業のありがたさで。まりあさんと白部さんはいかがですか?」


「わたしも大丈夫です」


「私もです」


 おお、スパッと話がまとまった! 良きかな良きかな


「で、場所はどちらでしょう?」


 白部さんから、質問を受ける。


「あー……これから調べます。少しお時間をください」


 というわけで、しばし検索エンジンと格闘。すると、いい感じのとこがありました!


「M市の大森果樹園さんとかいかがでしょう? 車で三十分弱、近所には十分な数のコインパーキングもあるみたいですよ。予約も不要みたいです」


 F市にも良さそうなところがあったのだけど、要予約なことと、近隣駐車場の弱さで候補から外している。


「検索してみます……。あー、ここですね。いいと思います!」


 優輝さんから太鼓判をいただき、ほかのお二人も賛同。順調!


「時間は、何時にしますか?」


 今度は、まりあさんから質問。


「そうですね……準備に雑に一時間として、一時間半後に現地集合しましょう。まりあさんは、言い出しっぺですから私がお連れしますね」


「ありがとうございます。よろしくお願いします」


 というわけで話がまとまり、支度を始めるのでした。



 ◆ ◆ ◆



 近くのコインパーキングに駐車すると、見慣れたバンと軽がありました。皆さんもこちらの駐車場を使ってるのか。で、先に着いてしまっている。急ぎましょ。


 まりあさんたちと、とてとて目的地に向かうと、ビニールハウスが見えてきました!


 ハウスの前には皆さんがすでに集まり、おしゃべりなう。


「お待たせしましたー!」


「あー、いえいえ。あたしらもちょっと前についたとこです」


 優輝さんが気さくに返してくださり、受付へ。


「いらっしゃいま……せ。こほん、ええと、いちご狩りですか?」


 八つの猫耳を見て、一瞬固まる農園関係者と思しき男性。はは、何だかこのテのリアクションも慣れてきたな。


「はい。みんなでいちご狩りを楽しもうかと」


 彼はすぐさま平常運転に戻り、「食べ放題ではなく、すべて量り売りであること」「切り取ったものはきちんとバスケットに入れていただきたいこと」「ハチが飛んでいるが、刺激しなければ無害なこと」、あとは実の切り方などを説明し、ハサミとバスケットを貸与してくれる。


 それにしても、ハチが飛んでるのかー。


 土耕栽培と高設栽培の二種類があるらしいけど、土耕のほうが味が良いという説明と、小さい子がいることから、土耕のビニールハウスに案内してもらう。


「おお~!」


 感激の声を上げるアメリ。一面いちごが茂り、言葉通りハチが飛んでいる。


「すごいねー。ハチさん花の旅だ!」


 いつぞや話して聞かせた、即興紙芝居を思い出すアメリちゃん。ふふ。


 さっそく、手近な株を物色。あら、白いちご!


「見てください、白いのがありますよ!」


 未熟なわけではなく、たしかこういう品種があったはずだ。皆さんも、興味深げに「ほんとですね」なんて言いながら覗き込む。


「せっかくだから、これまずは採ってみようか」


「うん!」


 アメリちゃんと一緒ににちょきん!


 さらには、やたら巨大なのとか、いかにもいちごって感じのいちごとか、いろんなものを摘んでいく。


 しばらくいちご狩りを楽しんでいると、さすがにバスケットもだいぶ重くなってきました。


「やー、大漁ですねえ!」


 優輝さんホクホク。


「さすがミケね! こんなに摘んだわよ!」


 おなじみの、胸反らしドヤ顔ミケちゃん。


「アタシも負けてないぞー!」


 ノーラちゃん、対抗意識満々。


「ボク、こんなにたくさんのいちご手にするの初めて……」


 はにかむクロちゃん。


「おお~! みんなすごいねー!」


 そう感心するアメリも、かなりの量だ。


「ふう、さすがにこのぐらいですかねー」


 あまり山ほどあっても食べきれないし、腰が痛くなってきたので、引き上げを提案する。


 一同同意し、計量&お会計。楽しかった~!


「そこのテラスで食べられるそうですけど、どうしましょうか」


 まりあさんが、この後について相談する。


「駐車場代がもったいないですし、うちにコンデンスミルクもありますし、紅茶も出せますから、うちで食べませんか? 雰囲気を愉しむのは後ろ髪引かれますけどね」


 優輝さんのご提案で、一度かくてるハウスに寄り、そこでいただこうという話になりました。


 とうわけで、家路をたどり各々一度車を停めた後、かくてるハウスに集合!


「いやー、美味しそうですねえ!」


 各自の皿に載った、みずみずしいいちごを前に、優輝さんが期待に胸を膨らませる。


「では、音頭取りは発起人の神奈さんで」


「あ、はい! ええと、今日は突発的な提案に快く応じてくださり、ありがとうございました。では、さっそくいただきましょう!」


 というわけで、いただきますの合唱!


 まずは、あの白イチゴから、ミルクなしで。う~ん、甘酸っぱーい! 美味しいわ~。


「おおー! いちご美味しい!」


 アメリちゃんは初手からミルクでいった模様。キラキラとした瞳をこちらに向けてくる。


「良かったねえ」


 頭を撫でると、「うにゅう」と目を細める。


 皆さん種々様々ないちごを楽しみ、その美味しさに感心することしきり。


「いやー、満腹です。残りは、あとでうちでいただきますね」


「あたしもです」


 みんな大満足。食べきれなかったぶんは各々お土産にし、まりあさんはさつきさんが送っていくことになり解散。


「今日は楽しかったです。また何かあれば、お誘いください」


 まりあさんとクロちゃんがお辞儀して、バンに乗り込む。


 皆で手を振り、お見送り。


「では、私たちもこれで。今日はありがとうございました」


 深々と皆さんにお辞儀し、帰途につく。


 今日も楽しい一日だった! 本当に、充実した一年だなあ。


 しみじみと、感慨にふけるのでした。

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