「……なー、神奈ー。起きなさーい」
体がゆすられる。いつものもみもみアタックじゃない? てか、この声はお母さん?
「んあ~……」
だらしなさMAXな声を出し、うっすら目を開けるとお母さんとアメリの顔が目に入る。
頭上の充電器に立てかけてあるスマホに目をやると、まだ七時。
「あと一時間だけ寝かせて~」
陽光が眩しいので、もぞもぞと布団を被る。
「そこはせめて、あと五分とかでしょう普通。まったくこの子は、ほんと朝弱いんだから……」
呆れ声に続き、お母さんに布団を引っ剥がされる。
「さーむーい~!」
「さ、起きた起きた。今日はアメリちゃんを水族館に連れて行くんだから、早く出ないと」
「おお~! おねーちゃんおはよー! 今日は、お魚さん見るんだよ~!」
しゅびっと挙手するアメリ。
「えー、お昼からとかでいいじゃん~」
「あそこ、四時半までしかやってないんだから、早く行かないと遊ぶ時間なくなっちゃうわよ」
あー、そういやそうでした。記憶が確かなら、車で片道一時間だったかな。
「んー……。可愛いアメリのためならやむなし~。おはよーございまぁ~す」
のそっと上半身を起こす。でもまだ、うつらうつら。
「顔洗って、ダイニングいらっしゃい。せっかくだから、みんなで朝ごはんにしましょ」
「ふぁ~い。ふわあ~……」
大あくびしながら、もう一段階意識がしゃっきりするのを待つ。私、前世が夜行性動物だったのかしらねー?
◆ ◆ ◆
「お父さん、おはよー」
顔を洗って、ダイニングでお茶を飲みながらアメリとお話していたお父さんに、グッドモーニング。
「おはよう、神奈。相変わらずだねえ」
「相変わらずデス……」
着席し、船を漕ぐ。
「それじゃ、寝ぼすけさんも起きてきたことだし、ごはんにしましょうか」
お母さんが、配膳を始める。
今日の朝ごはんは、トーストにハムエッグとサラダ。そして、牛乳とオニオンスープ。いかにも「朝!」ってカンジ。
「いただきまーす……」
みんなが元気にいただきますする中、一人だけ激低テンションでいただきますを言う。
そして、のっそのっそ、ちまちまと食事を口に運ぶ。
朝にこんなバラエティあふれる食事、ほんと実家様々です。
お父さんとお母さんはアメリと談笑しながらごはんなう。私も混ざろうとするけど、どうにも頭が回らない。
「しかし、水族館なんて久しぶりだなー。高校以来かも」
顎を動かしていると少しずつ頭が回転を始め、なんとか会話に混ざれるようになった。
「もう、そんな経つかー。あそこも随分変わったのかなー?」
感慨深げなお父さん。
「おお~! 楽しみ!」
アメリが拳を突き上げ、元気はつらつな声を上げる。
「ごちそうさまでした」
とにかく朝はスローモーな私が最後に食事を食べ終わり、歯磨きタイム。続いて、着替えとメイクをするのでした。
では、水族館にGO~!
◆ ◆ ◆
お父さんが運転する車に乗り、後部座席で睡眠不足 (※私基準)を解消するべく休む。
その間、お母さんはアメリの要望を聞きながら、スマホを手に回る予定を立てているようだ。
そして、小一時間強ほど経って到着~。この頃には、さすがの私も完全覚醒!
「おお~! これが水族館!?」
「そだよー。いやー、懐かしいねー」
というわけで、ゲートイン。
「おお~! ひらたさんだー!」
入ってすぐのマンボウ水槽に、さっそく大興奮のアメリ。水槽にべったり触りそうになるので、当てて引き戻す。
「こらこら、水槽にお触りはダーメ」
「おお~……ごめんなさい」
昔来たときと感じ変わってるなー、マンボウ水槽。
アメリが満足するまでマンボウを見た後は、イルカショーを見学!
売店で購入した簡易レインコートを羽織り、ダイナミックなジャンプに歓声を上げる。無論、アメリはこれまた大興奮!
うわっ、水しぶきが! いやー、これは大迫力だ。
イルカショーを堪能したあとは、ペンギンエリアへ。
よちよち歩くペンギンにまたまた大興奮な彼女。
「おおお……! 可愛い!!」
「なんか、後でお散歩するみたい。向こうの通路だけど」
「おお~! 見たい!」
お馴染み、キラキラアイ。
「うん、後でね。隣のプールではイルカにごはんあげたり、握手できるって」
「おお!? やりたい!」
ご要望に応え移動し、係員のお兄さんからレクチャーを受ける。
まずは握手。
「おお!? おお! おおおお!!」
興奮のあまり、もはや言葉にならないアメリ。ほほえま。
続いて餌やり。
「食べたー!」
アメリまたもや大興奮。しっぽが立たないように注意して見てないと。
さらに、体にお触り。
「おおお~!!」
もはや、何か限界状態に達しつつあるアメリ。いやー、お魚好き(イルカは魚じゃないけど)は知ってたけど、ここまでとは。
恍惚とするアメリの手を引き、次のアトラクション・アザラシプールへ。
「あ。アザラシのお触りタイム、もうすぐ始まるみたい」
「おお~! 触りたい!」
プールでアザラシをお触り。アメリはもう、「おお……!」を連呼するだけの存在となりました。
続いて、海洋館へ。こちらでは、壁面いっぱいに加え、地面にまで水槽が広がっている。
アメリの様子を見ると、ポカーン状態。
「どしたの? だいじょぶ?」
「お、おお! すごい!!」
体を揺すると、こっちの世界に帰ってきたようだ。そして、崩壊した語彙力ですごい、すごいとブツブツ言いながら歩き回る。
様々なものを愉しんでいると、もうすぐ十一時。
「混み合う前に、ごはんにしない?」
「そうしようか」
お父さんたちも同意し、水族館南部にある展望レストランに向かうのでした。続く!
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