神奈さんとアメリちゃん

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第百五十七話 お魚さんに会いに行こう! ―前編―

公開日時: 2021年4月25日(日) 11:31
文字数:2,215

「……なー、神奈ー。起きなさーい」


 体がゆすられる。いつものもみもみアタックじゃない? てか、この声はお母さん?


「んあ~……」


 だらしなさMAXな声を出し、うっすら目を開けるとお母さんとアメリの顔が目に入る。


 頭上の充電器に立てかけてあるスマホに目をやると、まだ七時。


「あと一時間だけ寝かせて~」


 陽光が眩しいので、もぞもぞと布団を被る。


「そこはせめて、あと五分とかでしょう普通。まったくこの子は、ほんと朝弱いんだから……」


 呆れ声に続き、お母さんに布団を引っ剥がされる。


「さーむーい~!」


「さ、起きた起きた。今日はアメリちゃんを水族館に連れて行くんだから、早く出ないと」


「おお~! おねーちゃんおはよー! 今日は、お魚さん見るんだよ~!」


 しゅびっと挙手するアメリ。


「えー、お昼からとかでいいじゃん~」


「あそこ、四時半までしかやってないんだから、早く行かないと遊ぶ時間なくなっちゃうわよ」


 あー、そういやそうでした。記憶が確かなら、車で片道一時間だったかな。


「んー……。可愛いアメリのためならやむなし~。おはよーございまぁ~す」


 のそっと上半身を起こす。でもまだ、うつらうつら。


「顔洗って、ダイニングいらっしゃい。せっかくだから、みんなで朝ごはんにしましょ」


「ふぁ~い。ふわあ~……」


 大あくびしながら、もう一段階意識がしゃっきりするのを待つ。私、前世が夜行性動物だったのかしらねー?



 ◆ ◆ ◆



「お父さん、おはよー」


 顔を洗って、ダイニングでお茶を飲みながらアメリとお話していたお父さんに、グッドモーニング。


「おはよう、神奈。相変わらずだねえ」


「相変わらずデス……」


 着席し、船を漕ぐ。


「それじゃ、寝ぼすけさんも起きてきたことだし、ごはんにしましょうか」


 お母さんが、配膳を始める。


 今日の朝ごはんは、トーストにハムエッグとサラダ。そして、牛乳とオニオンスープ。いかにも「朝!」ってカンジ。


「いただきまーす……」


 みんなが元気にいただきますする中、一人だけ激低テンションでいただきますを言う。


 そして、のっそのっそ、ちまちまと食事を口に運ぶ。


 朝にこんなバラエティあふれる食事、ほんと実家様々です。


 お父さんとお母さんはアメリと談笑しながらごはんなう。私も混ざろうとするけど、どうにも頭が回らない。


「しかし、水族館なんて久しぶりだなー。高校以来かも」


 顎を動かしていると少しずつ頭が回転を始め、なんとか会話に混ざれるようになった。


「もう、そんな経つかー。あそこも随分変わったのかなー?」


 感慨深げなお父さん。


「おお~! 楽しみ!」


 アメリが拳を突き上げ、元気はつらつな声を上げる。


「ごちそうさまでした」


 とにかく朝はスローモーな私が最後に食事を食べ終わり、歯磨きタイム。続いて、着替えとメイクをするのでした。


 では、水族館にGO~!



 ◆ ◆ ◆



 お父さんが運転する車に乗り、後部座席で睡眠不足 (※私基準)を解消するべく休む。


 その間、お母さんはアメリの要望を聞きながら、スマホを手に回る予定を立てているようだ。


 そして、小一時間強ほど経って到着~。この頃には、さすがの私も完全覚醒!


「おお~! これが水族館!?」


「そだよー。いやー、懐かしいねー」


 というわけで、ゲートイン。


「おお~! ひらたさんだー!」


 入ってすぐのマンボウ水槽に、さっそく大興奮のアメリ。水槽にべったり触りそうになるので、当てて引き戻す。


「こらこら、水槽にお触りはダーメ」


「おお~……ごめんなさい」


 昔来たときと感じ変わってるなー、マンボウ水槽。


 アメリが満足するまでマンボウを見た後は、イルカショーを見学!


 売店で購入した簡易レインコートを羽織り、ダイナミックなジャンプに歓声を上げる。無論、アメリはこれまた大興奮!


 うわっ、水しぶきが! いやー、これは大迫力だ。


 イルカショーを堪能したあとは、ペンギンエリアへ。


 よちよち歩くペンギンにまたまた大興奮な彼女。


「おおお……! 可愛い!!」


「なんか、後でお散歩するみたい。向こうの通路だけど」


「おお~! 見たい!」


 お馴染み、キラキラアイ。


「うん、後でね。隣のプールではイルカにごはんあげたり、握手できるって」


「おお!? やりたい!」


 ご要望に応え移動し、係員のお兄さんからレクチャーを受ける。


 まずは握手。


「おお!? おお! おおおお!!」


 興奮のあまり、もはや言葉にならないアメリ。ほほえま。


 続いて餌やり。


「食べたー!」


 アメリまたもや大興奮。しっぽが立たないように注意して見てないと。


 さらに、体にお触り。


「おおお~!!」


 もはや、何か限界状態に達しつつあるアメリ。いやー、お魚好き(イルカは魚じゃないけど)は知ってたけど、ここまでとは。


 恍惚とするアメリの手を引き、次のアトラクション・アザラシプールへ。


「あ。アザラシのお触りタイム、もうすぐ始まるみたい」


「おお~! 触りたい!」


 プールでアザラシをお触り。アメリはもう、「おお……!」を連呼するだけの存在となりました。


 続いて、海洋館へ。こちらでは、壁面いっぱいに加え、地面にまで水槽が広がっている。


 アメリの様子を見ると、ポカーン状態。


「どしたの? だいじょぶ?」


「お、おお! すごい!!」


 体を揺すると、こっちの世界に帰ってきたようだ。そして、崩壊した語彙力ですごい、すごいとブツブツ言いながら歩き回る。


 様々なものを愉しんでいると、もうすぐ十一時。


「混み合う前に、ごはんにしない?」


「そうしようか」


 お父さんたちも同意し、水族館南部にある展望レストランに向かうのでした。続く!

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