ずんずん、ずんずん。猫耳ちゃんのお通りですよー!
最初、中央護送船団方式でアメリたちを中心に囲って移動しようという話も出たのだけど、普通に通行の邪魔なのと、「それじゃ何のために勇気を振り絞ったかわからない」という話になり、 まず危機管理職・久美さんが先頭、それにアメリ&ノーラちゃんが続き、以下適当という塩梅。
何度か通行人とすれ違うと、一様にぎょっとされます。そりゃびっくりするでしょうね、ナマ猫耳。私もびっくりしたもの。
途中、女子中高生と思しき二人組とすれ違うと、「あれ、噂の猫耳ちゃんだよ!」「この辺に住んでたんだー」ときゃあきゃあいう会話が通り過ぎていく……と思いきや、その二人たたたと追ってきて、「写真撮っていいですか!?」と尋ねてくる。
なにしろ、アメリの猫耳のお披露目が今日の目的だから、「はい、構いませんよ。ただ、顔は隠してもらえますか?」という条件付きで承諾する。
「こうしたら隠せるよね」「私は多分大丈夫っぽい」と、手をかざしながらスマホを構え、パシャリ。「失礼ですが、一応見せていただけますか?」と確認すると、上手いこと手で顔は隠してくれたようです。
「ありがとうございましたー」と、お礼を言い去っていく二人。いやあ、隠しごとがないって気が楽だね!
そんなこんなで、公園にとうちゃーく!
日曜なので未就学児とその親御さん以外にも、小学生と思しき児童がおり、私たちが中に入っていくと、一様にびっくり。うん、もう慣れた。
まりあさんたちが先にご到着されていたので、皆でご挨拶。
「おねーちゃん!」
アメリが明るい表情で語りかけてくるので、「なーに?」と問い返す。
「あのね! お帽子ないの、すっごく音がよく聞こえる! お外ってこんなにいろんな音がするんだね!」と、瞳をキラキラ。
なんだか私まで嬉しくなって、彼女の頭をよしよしと撫でる。
児童公園初デビューのノーラちゃんは、白部さんに「あれ何?」攻撃を連発なう。
「こんにちはー!」
てててと砂場に駆け寄り、そこで遊んでいた未就学児と思しき女の子と、その親御さんにご挨拶するアメリ。例によって一瞬ぎょっとされたけど、「こんにちは」と笑顔で返される。
「アメリも一緒に遊んでいい?」
にこにこと問いかけるお嬢様。たちまち女の子と意気投合し、トンネル山を作ることになりました。
一方ノーラちゃんは鉄棒に興味を示し、アスリート久美さん指導の下、白部さんにも応援されながらくるりと一回転。二人から拍手が起こる。
「う~……。優輝、ミケも帽子取りたいわ!」
「よし、ミケも猫耳デビューだ!」
ミケちゃんまで脱帽し、歌と踊りの披露を始める。
そんな三人を見て、どうしようかとベンチで思案気味なクロちゃん。そんな彼女を、穏やかな表情で見つめるまりあさん。
あのベンチは、まりあさんと出会うきっかけになった思い出のベンチだ。たまたまこの公園に来て、たまたまご挨拶されて、たまたま風で帽子が飛んでご縁が生まれた。縁は異なものとはよくいったものだ。
アメリの運命は、風で帽子が飛ぶたび大きな変化が訪れている気がする。
そんなことを思いながらクロちゃんたちを見てると、意を決してクロちゃんも脱帽。お母さん方もこれには仰天。まさか、噂の猫耳幼女四人がこのF市の、それも間近に揃ってるなんて思いもしないでしょうものねー。
耳で風を受け、感触を愉しむクロちゃん。つくづく、こういう風流が似合う子だ。
ノーラちゃんは逆上がりチャレンジ中。久美さんに補助されながら、悪戦苦闘。私、結局逆上がりできなかったっけなあ。
ミケちゃんは、優輝さんがスマホで流す音楽に合わせてパフォーマンスを続けている。やんやと盛り上げるお三方。と子供たち。
そして、視線を愛娘に戻すと、トンネル山の上に謎のオブジェができてました。アメリちゃん、またよくわからないものを……。
女の子とは完全に和気あいあい。親御さんも完全に警戒心が解けたようで、和やかに様子を見守っている。
「こんにちは」
親御さんにご挨拶すると、「こんにちは」とご挨拶を返される。
「うちの子、人懐っこいですよね」
この言葉で、アメリの保護者が私だと理解したようだ。
「あの、テレビで会見見ました! あの方ですよね? 本当に、普通の女の子なんですね」
「はい。猫の耳としっぽがあって、ほんとにただそれだけの明るい子なんです」
笑顔で返す。
その後も、お母さんと談笑。アメリのイメージアップの一端は、私にかかっている。スマイル、スマイル!
「それにしても……」
公園を見渡す彼女。
「猫耳人間の子が、この街にこんなにいたんですね」
「はい。私も出会いを重ねていって、驚きました」
お母さんともすっかり打ち解け、のんびりトーク。ああ、なんて平和なんだろう。この当たり前が、やっと手に入ったんだ。
◆ ◆ ◆
「おねーちゃん!」
アメリが笑顔で話しかけてきたので、「なーに?」と応える。
「ともちゃんとお友達になった! また今度一緒に遊ぼうって!」
「そっかー。良かったねー」
それぞれの頭を撫でる、私とお母さん。
「すみません。そろそろお昼食べさせないといけないので、お先に失礼しますね」
お母さんが、申し訳無さそうに切り出す。
「はい。今日は、ありがとうございました」
互いにお辞儀する。アメリとともちゃんも、「バイバイ」と別れの挨拶。
「みなさ~ん、そろそろお昼ですよー」
優輝さんやまりあさんたちに呼びかけると、こちらへいらしました。
「やー、早いですねー。もう、そんな時間ですか」
優輝さんがスマホで時刻を確認する。
「公園再デビュー、大成功です!」
「では、帰りましょうか」
というわけで、ぞろぞろと帰途につく。まりあさんたちは反対方向だけど。
アメリは人間のお友達ができ、ミケちゃんは公園のスターになり、ノーラちゃんは運動、クロちゃんは風情を満喫。なんて素晴らしい日曜日だろう!
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