神奈さんとアメリちゃん

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第十九話 クッキーを焼こう!

公開日時: 2021年4月17日(土) 11:01
文字数:2,422

「ご主人様~、ごはん~!」


「……ん。おはよ~」


 アメリのもみもみアタックで起こされ、一緒にキッチンへ向かう。深皿にシリアルと牛乳を注ぎ、珍しくトーストではない朝食を用意する。


 仕事がハケて、次の原稿のプロットも一応完成済み。あとはこれを見せて、担当さんと打ち合わせをする。それまで、つかの間のオフ。


 とはいえ、何しましょうかね。朝の私ではちょっと予定を立てる知恵が回らない。


 アメリが食べ方に困っているようなので、スプーンですくってもそもそと頬張り食べ方を示すと、彼女もそれにならう。例によって、「おお~!」と声が上がる。


「アメリ~。なんかやりたいことある~?」


 大あくびをしながら希望を問うと、「クロのおうち行きたい!」と即答が返ってくる。


 まりあさんちか。たしかに行くなら今かもねえ。向こうの都合次第だけど。


 もそもそ。もそもそ。


 シリアルを食みながら、少しずつ脳みその覚醒を待つ。うむ。例によって、小一時間ほどすると頭が何とかしゃっきりしてきましたよ。


「じゃあ、まりあさんのとこに、手作りクッキー持っていこうか」


「くっきー?」


「さくさくしてて、甘いお菓子だよ。いろんな形のが作れて面白いの」


 ざっくり説明すると、「おお~!」と声を上げ興味を示す。


「よし、思い立ったが吉日ならぬ吉時! 作るのそれなりに時間かかるし、いつものスーパー行こう。と、そーのーまーえーにー……」


 スマホでまりあさんに電話をかける。九時なら起きてるんじゃないかな。


「あ、おはようございます。実は今日、そちらに伺おうかと思いまして、ご都合いかがでしょうか? はい。はい。では、三時頃伺わせていただきます。ご住所は、以前教えていただいたところですよね。はい、では失礼します」


 段取りOK! それじゃあ、着替えてスーパーへGO!



 ◆ ◆ ◆



 いやはや、いつも立ち寄るの夕方だから、朝にここスーパーってのも新鮮だなあ。あー、涼しいこと。


 まずは、ちょうどセール中のたまごと牛乳をゲット。さらに薄力粉と、無塩バター。お砂糖はあるから、あとはココアパウダーにチョコペン。よし、これでクッキーの材料は揃った。


 でもまだ、買うべきものがあるのです。


 牛豚七対三の合挽き肉と、玉ねぎとパン粉と、とろけるチーズ! そして冷凍ブロッコリーとコーン缶!


「ご……おねーちゃん、クッキーってそういうのも入れるの?」


 アメリが不思議そうな顔でかごを覗き込む。


「んーにゃ。こっちは晩ごはんの材料。アメリにすっごい美味しいの、食べさせてあげるからねー」


 何が出来上がるのかと、「おお~!」と期待の声を上げる。


 さて、今度こそお買い物終了。お会計したら、一度うちに帰りましょ。



 ◆ ◆ ◆



 というわけで帰宅。


 さしあたって必要ないものを冷蔵庫に入れたら、三分でクッキングする例のBGMが脳内で流れる中、クッキー生地を仕込んでいきましょー!


 無塩バターは室温で放置しておいて、薄力粉をふるい・・・にかけてボウルに振る。それとは別に卵を二個割って、ハンドミキサーで混ぜ混ぜ。お砂糖もふるい・・・にかけ、これも別のボウルに振るう。


 さてさて。室温に馴染んだバターとお砂糖をハンドミキサーで混ぜまーす。卵も三回に分けて注ぎ入れ、これもミキシング!


 そしてここで薄力粉もイン! ヘラで切るようにさくさく混ぜていきまーす。


 生地っぽくなってきたら、半分に分けて片方にはココアをイン! あとは、手で軽くこねて丸めてー。ラップをかけて冷蔵庫へ!


 続いて、なかなか普段使う機会のないクッキー用の型抜き器を、調理器具置き場の奥から引っ張り出して洗う。よし!


「じゃ、アメリ。しばらく生地を冷蔵庫で寝かさないといけないから、お風呂入ってよっか」


「は~い!」


 作業の様子を興味津々に見守っていたアメリがしゅびっと手を挙げる。生地は三十分~一時間寝かす必要があるので、今のうちにやれることやっちゃいましょ。



 ◆ ◆ ◆



 お風呂上がり。生地が熟成するまでまだもうちょっと時間があるので、アメリの髪をブラシでかす。彼女の髪質はちょっと不思議で、人間よりはあの猫の毛のすべすべした感覚に近い。


 なので、こうして髪を触っていると、猫だった頃のアメリを撫でているような気分になる。髪色もまんまシルバータビーだし。


 そんなのどかな時間を過ごしていると、ちょうどいい頃合いになったので調理再開。


 ラップごと綿棒で伸ばし、五ミリほどの厚さにする。あとはラップを剥がして……。


「アメリー、一緒に型抜きしよう!」


 作業を見守っていた彼女に声をかけると、「おお~?」と興味深げに乗ってくる。


「この型抜き器でこうすると……ほら、ハート型!」


 アメリが「おお~!」と感心の声を上げる。


「猫さんの型とかもあるよ~。こうやってくり抜いて、あとは顔型を押せば……はい、猫ちゃん! 黒いから、絵本のクロちゃんみたいでしょ?」


 お手本を示すと、「やりたいやりたい!」と大張り切り。かくして、二人でチューリップ型、花型、猫型、星型、ハート型、オーソドックスな角型を作っていく。角型には、チョコペンで格子模様を描いて、ちょっとしたアクセントに。


 一通り出来上がったので、型抜き後の余りは適当に丸型クッキーにして、レンジシートを敷いてオーブンにイン! 焼き上がりまで十五分!


 その間、寝室で「くろねこクロのたび」を読み聞かせたり、文字を教えたりしながら時間つぶし。量があるので二度に分けて焼き、出来上がったら冷まして固くなるのを待つ。とりあえず、一個味見。よし! いい出来! いやはや、焼きたての香ばしいこと!


 クッキーが固まった頃にはちょうど二時頃。うーん、我ながらいい塩梅。


 改めてスマホで経路を確認すると、徒歩十五分ぐらいかな? 前回まりあさんが三十分かかったのは準備時間込みだったんだろうな。


 クッキーをラッピング用ビニール袋に入れて、さらにそれを紙バッグに入れ、お出かけの準備。


「アメリー。もうちょっと時間つぶしたら、お出かけするからねー」


 そんなわけで、時間まで引き続きアメリと遊んで過ごしました。

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