神奈さんとアメリちゃん

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第百八十話 ミケ、反省する

公開日時: 2021年4月25日(日) 23:01
文字数:2,411

「おねーちゃん、クロとお電話したい!」


 ミケちゃんアタックの翌朝、もっそもっそと朝食のハニーバタートーストを食んでいると、対面のアメリがそんなことを切り出してきた。


「んー……? 別にいいけど、ご飯食べ終わって、頭がしゃっきりしてからでいーい?」


 ふわあ、と大あくび。


「うん! 楽しみ!」


 にこにこお陽様笑顔のアメリ。


 ほんじゃー、頑張って頭しゃっきりさせますか。ふわあ……。



 ◆ ◆ ◆



「おはようございます。実はアメリがクロちゃんにお話があるそうで、代わっていただけますと。はい、よろしくお願いします。……おはよう、クロちゃん。アメリがお話したいんだって。代わるね」


 最初にまりあさんを経由する必要があるのでまず彼女を通し、それぞれ子供たちにバトンタッチする。おっと、イヤホンイヤホン。


「おはよー、クロ! 今日、遊ばない? ……大丈夫だよ、ちゃんとミケとノーラも誘う! だから安心して! うん、うん。じゃあ、これから二人に声かけてくるね!」


 アメリがスマホを返してくる。


「あのね、これからクロが遊びに来る! でねでね、その前にミケとノーラも誘ってくる! お出かけしていい?」


 へえ。さっそくフォロー作戦ってわけね。朝だし、お隣さんとお向かいさんぐらいならアメリ一人でも大丈夫かな? このぐらいの距離でいちいちついて行くのも、過干渉な気もするし。


「いいよー。でも、白部さんのところに行くときは車に気をつけるんだよ」


「わかった!」


 アメリがいそいそと着替え始める。あ、子供たちが来るなら私もスウェットじゃアレよね。着替えましょ。



 ◆ ◆ ◆



「ただいまー! あのね、ミケとノーラ、あと少ししたら来るって! あと白部せんせーも!」


 アメリがとてとてと寝室に戻って来た。


「おかえり。じゃあ、おもてなしの準備しないとね」


 とはいえ、もうすぐ来るんじゃお菓子買いに行ってる時間ないよね。コンビニなら間に合うかな?


「あ! あのね、優輝おねーちゃんが『ミケにお菓子と飲み物持たせるのでお構いなく』って伝えて欲しいって言ってた!」


 あら、ありがたいこと。


 では、引き続き原稿を描きながら待ちましょうか。


 しばらくかりかりと筆を走らせていると、インタホンの呼び鈴が。さて、一番手は誰かな?


「おはよー、神奈おねーさん。あの……昨日はごめんなさい!」


 応対すると、開幕ミケちゃんがお詫びしてくる。


「おはよう。大丈夫よ、私もアメリも別に気にしてないから」


「あの後、優輝にお説教されて……。ミケ、お姉ちゃんシッカクだわ……」


 うーん、しょげちゃってるなあ。


「とりあえず、インタホン越しの立ち話も何だから、今迎えに行くね」


 というわけで門へ。すると、ちょうど白部さんとノーラちゃんがお向かいから出てくるところが目に入りました。


 とりあえず、ミケちゃんとお話してましょうかね。


「改めておはよう、ミケちゃん。大丈夫よ。失敗しない人なんていないから。大事なのは、反省と成長すること。多分、優輝さんもそう言ってたんじゃないかな?」


「おはよう。うん、優輝もそんな感じのこと言ってた」


 優輝さんの性格だと、怒る・叱るというより説得するはずだからね。


「おはようございます。ミケちゃんもおはよう」


「おーっす! おっはよー!」


 白部さんたちも合流。


「どうしたの、ミケちゃん。なんか元気ないね?」


 白部さんがミケちゃんの、珍しい気弱な様子を心配する。


「あー、昨日ちょっと。あまり触れてあげないでいただけますと」


「わかりました」


 その一言だけで、白部さんは承知していただけたご様子。


「あ、手ぶらも何だと思いましたので、こちらをどうぞ」


 白部さんが、何かが入ったビニール袋を渡してくる。


「あら、ありがとうございます」


「そうだ、おねーさん。優輝から『お詫びも兼ねて』って」


 ミケちゃんも、紙袋を渡してくる。


「ありがとう。あとでお礼言わないと。とりあえず、立ち話も何ですので中へどうぞ」


 三人を寝室に通し、いただき物を開ける。ミケちゃんからはおなじみコラ・コーラ一.五リットルとマスペ五百ミリボトル一本ずつ。それとクッキー。白部さんの手土産は一リットル紙パック入りのリンゴジュースでした。


 ミケちゃんとアメリにはコーラを、白部さんとノーラちゃんにはリンゴジュースを注ぎ、クッキーをお皿に空けて寝室へと運ぶ。


「どうぞー」


「ありがとうございます」


 白部さんに続き、子供三人もお礼を述べる。まあ、みんなのいただき物出しただけなのだけど。


 クロちゃんを待っていることを伝え、折りたたみ机を囲みしばし雑談に興じる私たち。白部さんは、アメリの包丁の扱いの上達速度に興味津々。やはり、仕事柄そこが気になるのねー。


 ややすると、インタホンの呼び鈴が。クロちゃんかな?


「ちょっと、出てきますね」


 リビングでインタホンに応対すると、果たしてクロちゃんでした。門まで迎えに行く。


「おはようございます……」


「おはよう」


 うーん、やっぱりちょっと元気ないな。


「ミケちゃんね。昨日のこと反省してたよ。だから、クロちゃんもあまり自分を責めちゃダメ」


「ありがとうございます。ボク、ミケとぎくしゃくしないか心配で……」


「うーん、大丈夫だと思うよ。自然体でいこう」


「はい」


 そういうわけで、クロちゃんも寝室に通す。


「あ、クロ……。おはよう」


 ばつが悪そうなミケちゃん。


「おはよう。皆さんも、おはようございます」


 白部さんがいるので、丁寧に挨拶するクロちゃん。やはりこちらも気まずい感じ。


「はいはい、二人ともこれ以上引きずらない! 楽しく遊びましょう」


 二人とも、「はい」と返事する。


「あら、これはちょっと大人数ですね。すみません、猫崎さん。ベッドに腰掛けさせていただいてもよろしいですか?」


「あ、はい。ご自由にお使いください」


「ありがとうございます」


 そうおっしゃり、ベッドに腰掛け愛用のノートPCを立ち上げる彼女。今日は、四人の観察に徹するみたいね。私も仕事机に着席。


 ちょっとぎくしゃくした感じの出だしだけど、どうなりますことやら。

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