「ではシェフ、今日はたまごサンドを作ってみましょう!」
「おおー!」
今日チャレンジするのはアメリちゃんだけど、私の脳内で流しちゃいけないって決まりもないので、三分でクッキングするBGM流し中~。
「アメリちゃん、ゆで卵は作り慣れてますね?」
こくこくと頷くお嬢様。
「では、いつもの要領で、ゆで卵三つを十二分茹でてください」
「はーい!」
卵のお尻に爪楊枝でプスッと穴を空け、お水を張った鍋に投入! 点火し、タイマーをセットするシェフ。
「間違ってるとこない?」
タイマーの時間を確認する。うん、問題なっしんぐ!
「完璧よん。じゃあ、時間まで動画でも見てましょうか」
というわけで、アメリのチョイスで深海魚を見ることに。メンダコなる、ある意味可愛いタコが出てきて、アメリ大興奮! こういうのでテンション爆上がりするのが、アメリ博士らしさよねえ。
耳 (?)があって、足についた大きな膜を動かしてふわあっ……ふわあっ……と泳ぐさまは、なかなかにファンタスティック! なるほど。アメリならずとも、これはグッとくるものがあるわ。
二人でメンダコ祭りを開いていたら、ピピピとタイマーが鳴りました。動画に熱中してると、十二分とかあっという間ねえ。
冷水に入れ換え、卵をひび入れさせて、殻を剥くシェフ。
「はい、ここまではバッチリね。次は、この器具で玉子を格子状に切ってみようか」
卵切り器を取り出す。
「おお? どうやって使うの?」
「最初に、一個だけ見本を見せるね」
まず、横向きにすっと切る。これで輪切りになった。続いて、縦向きにスッ。さらに、九十度回転させてスッ。これで、細切れに。
「で、これをボウルに入れると……」
見事に、バラバラになったゆで卵が! 「おお~!」と興奮するアメリちゃん。
「じゃ、やってみよー」
私の動きをトレースして、卵を切断するシェフ。そして、ボウルに投入! 見事バラバラに!
「おー、上手上手! じゃあ、その調子で残り一つも切ってみよう!」
「うん!」
こうして、初めてとは思えないぐらい手際よく、卵を切断していくのでした。
「次は何したらいいの?」
「マヨを入れてかき混ぜるんだよ~。胡椒とお塩もちょっと入れたほうが美味しいと思う」
「わかった!」
マヨをぶちゅ~っと注ぎ、スプーンでこねこね。胡椒とお塩を軽くパッパッ。うん、いいお手並みね。
「いい感じですよ、シェフ。じゃ、昨日のツナサンドの要領で、きゅうり切って、バター塗ってパンの上に置こう」
「らじゃー!」
きゅうりをすとんすとんと斜め薄切りにし、バターを塗った面に置いていく。
「あとは、たまごマヨを昨日のツナみたいに塗って、パンで挟んで、包丁で切れば完成! さあ、やってみよう!」
「頑張るー!」
言われた通りにすると、美味しそうなたまごサンドが完成!
「お見事! これでアメリシェフは、たまごサンドをマスターしました!」
パチパチと拍手。「えへへ」と照れる彼女。可愛いなあ、もう!
「じゃ、紅茶だけど……」
「淹れる!」
「では、シェフにおまかせで」
着席し、配膳を待つと、紅茶とともにサンドイッチが置かれました。
「どうぞ、お客様」
「ありがとうございます、シェフ」
なんて、ほほえま会話。
アメリも対面に座り、二人でいただきますの合唱!
ぱくっ。うん、いいお味! ツナサンドもいいけど、たまごサンドもいいよね!
卵だけでも美味しいけど、きゅうりがあると歯ごたえが生まれてグーよね!
「美味しいですよ、シェフ」
「ほんと!? やったー!」
るんるんと、美味しそうに食べ進める当人。
こうして、アメリシェフのレシピ帳に、新たな一ページが刻まれたのでした。
◆ ◆ ◆
寝室に戻り、筆を走らせる。窓の外を見るまでもなく、ざあざあと大きな雨音が響いている。今年は梅雨が早く到来とかだったら嫌だなあ。
昨日の写真図鑑をめくっているアメリちゃん。外と打って変わって、室内は静かな空間だ。
「おお!」
突然、おっきな声を上げる娘。
「メンダコ!」
とててと走り寄ってくると、手にしたページをじゃん! と見せてくる。そこには、大写しになったメンダコの遊泳写真。
「おー、大きい写真だと見応えあるねえ」
「ねー!」
それだけ話すと満足したのか、またとてとてと座椅子に戻る。
あ、そうだ。お母さんからメッセージ来てるかな? LIZEチェック!
すると、お母さんから「カーネーション、今年もありがとう」というメッセージが昨日の夜届いたようです。そのほかには、私やアメリを気にかけるメッセージがつらつらと。一日チェックが遅れちゃったな。
とりあえず、「どういたしまして! 来年も期待してててね」というメッセージと、私とアメリは元気にやっていることを報告する。お母さんも心配性だねえ。こないだ会ったばかりなのに。
まあ、それだけ私たちのことを大切に想ってくれてるってことよね。
せっかくLIZEを起動したので、いつもの皆さんにもご挨拶。皆さんからも、お返事が届きました。
ミケちゃんは正式に、ダンスと歌のレッスンに。ノーラちゃんもこれまた、正式に女子サッカークラブに入部したようです。私の周囲でも、着々と物事が進んでいるなあ。
私も、アメリを塾に通わせたりするべきなのだろうか。でも、アメリの学習状況はいびつで、漢字と算数だけに特化している。ああいうところでは、こういう子にどこまで対応してくれるのだろう?
やはり、しばらくは私と白部さんで教えていくのがいいのかもしれない。
アメリに、きちんとした勉学をさせてあげたいなという想いを胸に、再び筆を走らせるのでした。
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