神奈さんとアメリちゃん

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第三百五十二話 雨の日に その三

公開日時: 2021年9月15日(水) 21:01
更新日時: 2021年9月20日(月) 22:50
文字数:2,229

「ではシェフ、今日はたまごサンドを作ってみましょう!」


「おおー!」


 今日チャレンジするのはアメリちゃんだけど、私の脳内で流しちゃいけないって決まりもないので、三分でクッキングするBGM流し中~。


「アメリちゃん、ゆで卵は作り慣れてますね?」


 こくこくとうなずくお嬢様。


「では、いつもの要領で、ゆで卵三つを十二分じゅうにふん茹でてください」


「はーい!」


 卵のお尻に爪楊枝でプスッと穴を空け、お水を張った鍋に投入! 点火し、タイマーをセットするシェフ。


「間違ってるとこない?」


 タイマーの時間を確認する。うん、問題なっしんぐ!


「完璧よん。じゃあ、時間まで動画でも見てましょうか」


 というわけで、アメリのチョイスで深海魚を見ることに。メンダコなる、ある意味可愛いタコが出てきて、アメリ大興奮! こういうのでテンション爆上がりするのが、アメリ博士らしさよねえ。


 耳 (?)があって、足についた大きな膜を動かしてふわあっ……ふわあっ……と泳ぐさまは、なかなかにファンタスティック! なるほど。アメリならずとも、これはグッとくるものがあるわ。


 二人でメンダコ祭りを開いていたら、ピピピとタイマーが鳴りました。動画に熱中してると、十二分じゅうにふんとかあっという間ねえ。


 冷水に入れ換え、卵をひび入れさせて、殻を剥くシェフ。


「はい、ここまではバッチリね。次は、この器具で玉子を格子状に切ってみようか」


 卵切り器を取り出す。


「おお? どうやって使うの?」


「最初に、一個だけ見本を見せるね」


 まず、横向きにすっと切る。これで輪切りになった。続いて、縦向きにスッ。さらに、九十度回転させてスッ。これで、細切れに。


「で、これをボウルに入れると……」


 見事に、バラバラになったゆで卵が! 「おお~!」と興奮するアメリちゃん。


「じゃ、やってみよー」


 私の動きをトレースして、卵を切断するシェフ。そして、ボウルに投入! 見事バラバラに!


「おー、上手上手! じゃあ、その調子で残り一つも切ってみよう!」


「うん!」


 こうして、初めてとは思えないぐらい手際よく、卵を切断していくのでした。


「次は何したらいいの?」


「マヨを入れてかき混ぜるんだよ~。胡椒とお塩もちょっと入れたほうが美味しいと思う」


「わかった!」


 マヨをぶちゅ~っと注ぎ、スプーンでこねこね。胡椒とお塩を軽くパッパッ。うん、いいお手並みね。


「いい感じですよ、シェフ。じゃ、昨日のツナサンドの要領で、きゅうり切って、バター塗ってパンの上に置こう」


「らじゃー!」


 きゅうりをすとんすとんと斜め薄切りにし、バターを塗った面に置いていく。


「あとは、たまごマヨを昨日のツナみたいに塗って、パンで挟んで、包丁で切れば完成! さあ、やってみよう!」


「頑張るー!」


 言われた通りにすると、美味しそうなたまごサンドが完成!


「お見事! これでアメリシェフは、たまごサンドをマスターしました!」


 パチパチと拍手。「えへへ」と照れる彼女。可愛いなあ、もう!


「じゃ、紅茶だけど……」


れる!」


「では、シェフにおまかせで」


 着席し、配膳を待つと、紅茶とともにサンドイッチが置かれました。


「どうぞ、お客様」


「ありがとうございます、シェフ」


 なんて、ほほえま会話。


 アメリも対面に座り、二人でいただきますの合唱!


 ぱくっ。うん、いいお味! ツナサンドもいいけど、たまごサンドもいいよね!


 卵だけでも美味しいけど、きゅうりがあると歯ごたえが生まれてグーよね!


「美味しいですよ、シェフ」


「ほんと!? やったー!」


 るんるんと、美味しそうに食べ進める当人。


 こうして、アメリシェフのレシピ帳に、新たな一ページが刻まれたのでした。



 ◆ ◆ ◆



 寝室に戻り、筆を走らせる。窓の外を見るまでもなく、ざあざあと大きな雨音が響いている。今年は梅雨が早く到来とかだったら嫌だなあ。


 昨日の写真図鑑をめくっているアメリちゃん。外と打って変わって、室内は静かな・・・空間だ。


「おお!」


 突然、おっきな声を上げる娘。


「メンダコ!」


 とててと走り寄ってくると、手にしたページをじゃん! と見せてくる。そこには、大写しになったメンダコの遊泳写真。


「おー、大きい写真だと見応えあるねえ」


「ねー!」


 それだけ話すと満足したのか、またとてとてと座椅子に戻る。


 あ、そうだ。お母さんからメッセージ来てるかな? LIZEチェック!


 すると、お母さんから「カーネーション、今年もありがとう」というメッセージが昨日の夜届いたようです。そのほかには、私やアメリを気にかけるメッセージがつらつらと。一日チェックが遅れちゃったな。


 とりあえず、「どういたしまして! 来年も期待してててね」というメッセージと、私とアメリは元気にやっていることを報告する。お母さんも心配性だねえ。こないだ会ったばかりなのに。


 まあ、それだけ私たちのことを大切に想ってくれてるってことよね。


 せっかくLIZEを起動したので、いつもの皆さんにもご挨拶。皆さんからも、お返事が届きました。


 ミケちゃんは正式に、ダンスと歌のレッスンに。ノーラちゃんもこれまた、正式に女子サッカークラブに入部したようです。私の周囲でも、着々と物事が進んでいるなあ。


 私も、アメリを塾に通わせたりするべきなのだろうか。でも、アメリの学習状況はいびつで、漢字と算数だけに特化している。ああいうところでは、こういう子にどこまで対応してくれるのだろう?


 やはり、しばらくは私と白部さんで教えていくのがいいのかもしれない。


 アメリに、きちんとした勉学をさせてあげたいなという想いを胸に、再び筆を走らせるのでした。

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