朝、もっしゃもっしゃとツナオニオンサンドをいーてぃんぐ・なう。朝が壊滅的な私でも、昨日のうちに玉ねぎを切っておけば、これぐらい作れるのよー。パンの耳落としてないけど。ふわあ……。
「おねーちゃん、バレンタイン楽しみだね!」
「んー」
「チョコ作るの初めて!」
「んー」
ただ、「んー」と言うだけのマシーンと化した私。頭回んない。
アメリもそんな朝の私には慣れたもので、一人で盛り上がってる。元気ですねえ。
もしゃもしゃ、もしゃもしゃ。
ちまちまサンドイッチを咀嚼していたら、少しずつ意識がしゃっきりしてきた。時計を見ればもうすぐ八時。やっぱりこれぐらいかかるなあ。
アメリはすでにサンドイッチを食べ終わり、にこにこと私を見つめている。
もうちょっと、朝アメリに暇させない方法ないかしらね。キッチンにも小型テレビ置こうかなあ。もうすぐまとまったお金が入るので、あれやこれやと夢が広がる。
ん。ほぼ意識クリア。グンモーニン、私。
「アメリちゃーん、やっとしゃっきりしましたよー」
「おお~。おねーちゃん、偉い!」
とてとてと背後に回ってきて、頭を撫で撫でしてくれる。えへへー。
「それじゃあ、片付けて歯磨きしましょ」
「はーい」
こんな私は、漫画の中でもリアルに忠実に朝をめちゃくちゃ弱く描いている。ゆっきーさん時代の優輝さんは、長年漫画的な誇張だと思ってたようだけど、実際この有様を見たら、考えを改めたそうで。面目ないデス。
◆ ◆ ◆
ハイペースで下書きをバリバリ進めなう。今日たくさん遊ぶから、今のうちに仕事に励んでおかないとね!
すると、アラームが「もうすぐお出かけですよー」とばかりに鳴る。あや、もうそんな時間か。まあ、今日は十時集合だしねえ。
「アメリちゃーん。もうすぐお出かけよー。着替えてねー」
「はーい」と返事する彼女。私も、お着替え&メイク。男の人ってメイクしなくていいから楽そうだけど、「ヒゲそり面倒くさいよ」ってお父さんぼやいてたっけな。
よし、完了! あとは、用意しておいたチョコ用の型を四つと、製菓用チョコと白チョコのチョコペン、生クリーム。それにボウル、一回り小さい金属製ボウル、ゴムベラ、泡立て器を二つずつっと。あとは包装用のアルミホイルと……おっと、忘れちゃいけないマイエプロン。
これでおっけーよね? まあ、なんか足りなかったら取りに来ましょ。お隣さんって便利な立地よねー。
「おねーちゃーん。アメリ着替え終わってるよー」
「はーい。じゃあ、お出かけしましょうねー」
それじゃあ、行きまっしょい!
◆ ◆ ◆
「どうも、こんにちはー」
すでにお揃いの皆さんにご挨拶。まりあさんたちは、例によって由香里さんが車でお迎えされたとのこと。
「さて! メンツも揃ったことですし、さっそく始めましょうか」
優輝さんがぽんと手を打ち、音頭を取る。
「ええと、チョコ作りが初めてなのは子供たちだけということでいいでしょうか?」
「あ、恥ずかしながら、私も初めてです……」
由香里さんの問いに、白部さんがおずおずと挙手。
「わかりました。では、わたしと一緒に作りましょう」
「由香里、お菓子作りも教えるのもめっちゃ得意ですからね。大船に乗った気持ちでオールオッケーですよ!」
サムズアップして、由香里さんの実力を保証する優輝さん。ほんとに、ケーキとか作るの上手だものねー。
「それじゃ、行きましょう」
というわけで、優輝さんの声掛けで一同キッチンへ。
◆ ◆ ◆
「おおー。お菓子作るの難しそう~」
「んー? そうでもないよー。教えてあげるから、その通りにやればだいじょーぶ」
アメリと二人でエプロンを締めながら、準備中。
「ほんと?」
「うんうん。じゃあ、やっていこうね」
ボウルにポットの湯をいただき、そこに金属ボウルを浮かべ、チョコを投入。
「おお! 溶けちゃった……」
「うん、これに生クリーム混ぜて、この猫さんとハートの型にそれぞれ入れていくよー」
生クリームを混ぜて泡立て器で撹拌し、ゴムベラでとろけたチョコを二つのハートの型に入れていく。
型はソフトプラ製で、外から形を整えやすい。
「こんな感じ。平らになるようにするのがコツね。アメリもやってみよー」
「うん!」
アメリちゃん、少々苦戦しつつも、これまた二つの猫の型に入れていく。
「上手、上手! あとは、室温で放置だねー」
「おお~。もう終わっちゃった」
ちょっと残念そうなアメリ。一大イベントだと思ってたから拍子抜けしてしまったのね。
「少し固まったら猫さんにお顔描くから、そのときまたひと仕事だね。優輝さん、チョコはテーブルの上に置いたままでいいんでしょうか?」
「あ、すみません。このあと昼食作るんで、このへん載っけといてください」
彼女が、棚を示す。前見たときはなんか色々載ってたけど、今回のために片したのね。
「あとは、使わなくなった物は順次片付けていただけますと」
「はーい。チョコペンも一旦、避けときますね。そういえば、今日もピザですか?」
「んにゃ。今日はウチが作る」
意外なことに、久美さんが挙手して声を上げた。
「ウチだけ、いまいち腕を振るう機会がなかったからね。せっかくだからって、当番代わってもらったんよ。まー、楽しみにしててちょーだい」
へー。そういえば、以前一緒に唐揚げとお味噌汁作ったっけ。今日は、どんなのを作られるのかな。
「はい、あとは放置で大丈夫ですよ。こっちも棚に置くだけになったよー」
白部さんとノーラちゃんへの指導をしつつ、自分のぶんも作っていた由香里さんが最後に宣言する。
それじゃあというので、使用済みの道具を交代で洗った後、久美さんを除くみんなでリビングで時間をつぶすことになりました。
続く!
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