神奈さんとアメリちゃん

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第百九十一話 福は内! 鬼は……?

公開日時: 2021年4月27日(火) 17:01
文字数:2,047

夕食のしばらく前に、豆撒きを開始!


 本当は八時頃撒くものらしいし、鰯の頭を刺した柊も門に飾る必要があるらしいけど、まあそのへんはテキトーで。特に、豆撒きは思うところあって早目の時間に決行なのです。


「おお~? 豆まきってどうすればいいのー?」


「私が鬼のお面つけるから、福は内って言いながら家に撒いて。続いて鬼のお面着けて逃げ回る私にそのお豆さんを、鬼は外って投げればいいよ」


「おお? 鬼ってなーに?」


 む。そこからですか。


「えーと、何ていうか悪い存在かなあ……? 上手く説明できないけど」


「おねーちゃん、悪い存在になるの?」


 むう。テツガク者ね、アメリ先生。


「いやー、何ていうの? 役割っていうか……」


「おねーちゃんに豆投げつけるとか酷いことできない……。それに、鬼もまだ悪いことしてないよ?」


 項垂うなだれる彼女。


 なんというか、やはり感受性の強い子だな。イカの刺身にそめごろうぬいぐるみを重ねたり、セイコガニにセイコさんと人格を見出して感情移入したり。


 ふむ。では、邪道を承知でこうしましょう。


「よし! じゃあ、福も鬼も内に呼び込んじゃおう! 鬼さんとも仲良くしてみようか!」


「うん!」


 ぱあっと、お陽様笑顔になるアメリ。良きかな良きかな。まあ、こういう豆撒きをする家庭が一つぐらいあってもいいよね。雨の中、傘を差さず踊る人間がいてもいいって、何の言葉だったかな。


「じゃあ、私と一緒に掛け声を上げながら、アメリはお豆を巻いてね。福はー内! 鬼もー内!」


「福はー内! 鬼もー内!」


 お面を着けて声を上げると、続けて声を上げてぱーっとお豆を撒き散らすアメリ。


 こんな感じで家中にお豆を撒き、歳の数だけ食べる段になったわけですが。


「アメリちゃん。せっかくだから、お豆さんはそのままではなく美味しく食べましょう。ちょっと残りを貸してね」


 残ったお豆を、水を張ったボウルにイン。


「こうやってお水で戻して、煮物にしちゃいましょう。床に撒いちゃったのは、もったいないけどお掃除ね」


 お豆が戻るまでの間、掃除機で床のお豆を吸って片付ける。


 水で戻すのにはだいぶ時間がかかるので、原稿再開。アメリは、古生物の本を読んで復習なう。そろそろ新しいの買ってあげないとなー。


 さらに、お米を水に浸し用意。


 浸水時間が終わったら炊飯スイッチオン。お豆さんはまだ戻ってないかな。


 再びデスクで仕事に打ち込むと、炊飯終了をスマホが教えてくれる。それじゃあ、クッキングと洒落込みましょうか!


 脳内で三分でクッキングするBGMスイッチオン! いくよー!


「アメリちゃん。大豆の皮を適当に取り除いてくれるかな?」


「わかった!」


 一緒に、水に浮いた皮を取り除いていく。


「よし! じゃあ、私は煮物を作ってるから、アメリは魚をお刺身にしてくれる?」


「はーい」


 こうして、別作業を任せられるようになったのが本当にありがたい。


 大豆がぎりぎり浸るぐらいのお水を手鍋に張り、昆布だしの素を小さじ一杯イン! さらに、砂糖大さじ三杯、醤油小さじ二杯、乾燥わかめも入れて、コトコト煮込む。


 同時に、わかめのお味噌汁も作っちゃおう。


「そっちはどう?」


「おお~。順調!」


 様子を見ると、たしかに順調な模様。良きかな良きかな


 それじゃ私は、お米ときゅうりのスティックでも切ってましょ。といっても、きゅうりあまり量残ってないけどね。


 ん。煮物もできたね。味を染み込ませるために少し放置。


「できた!」


 板前アメリちゃん、無事お刺身を完成。では、盛り付けましょー。


「あ、そうだ。アメリもわさび使ってみる?」


「おおー! 試してみたい!」


「じゃあ、テーブルの上に置いておくから、少しずつ具合を試してみてね」


 というわけで、お刺身とごはん、もろきゅうを配膳。煮物も味が染みたと思われるので、これも配膳してお茶をれる。


「はーい、出来上がりでーす。それじゃ、いただきますしましょ。いただきます!」


「いただきます!」


 煮物からぱくっ。うん、甘くて美味しいわー。私は歳に足りないだろうし、アメリは歳以上だろうけど、まあいいよね。ていうか、アメリって何歳扱いしたらいいのかしら?


 で、お刺身もぱくっとな。お昼の残りだから鮮度が少々落ちてるけど、十分じゅうぶん美味しいと思う!


 お味噌汁も、定番のわかめでいいお味。


 マグロとサーモンの二色刺身定食か。ふふ、ちょっと豪華ね。


「わさびはどう?」


「んー! ツーンってする! でも、食べる!」


「無理はしなくていいからね」


 私の真似をしてお刺身にわさびを付けたアメリだけど、唐辛子系とは違ってあまり得意じゃないのかな?


 それでも、わさびの量を減らしつつ大人の味覚に挑戦する彼女。ほほえまだなー。


 最後にもろきゅうでさっぱりして、ごちそうさまでした!


 片付けと歯磨きをして、原稿再開。単行本のほうのゴールも見えてきた。


 そうそう、本誌原稿のほうは真留さんのチェックを無事通過して受領してもらえてます。良きかな良きかな


 多分、明日中にはすべての原稿が仕上がると思う。当初の見込みよりも三日ぐらい早いかな。我ながら、見事な速筆だこと。


 ラストスパート、頑張るぞー! えいえいおー!

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