神奈さんとアメリちゃん

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第二百二十七話 しりしり食べれば~しりしりと~

公開日時: 2021年5月8日(土) 22:01
更新日時: 2021年5月22日(土) 06:23
文字数:2,862

 いつものスーパーにとうちゃーく! 店内BGMを聞きながらチラシチェーック!


 今日は缶詰、人参、じゃがいも、玉ねぎ、乾麺、珍味がおやすいですと。珍味ねえ……。私、普段お酒飲まないからなあ。


 ふーむ。雑にツナカレーでもいいけど、何かもう一捻りほしいな。


 とりあえず、ツナ缶、アスパラ缶、トマト缶あたりは、どんどこかごに入れちゃおう。今日は車だから、荷物重くても平気だしね。


 で、ですよ。カレー以外で何か……お?


 スマホでレシピを検索すると、そうめんチャンプルーなるものが。へー、これ面白いな。でもこのレシピだと、人参すごく余るね。


 さらに人参レシピで検索……いかにんじんですって。何これ、面白い。ちょうど、干しスルメを使うのか。だったら、珍味枠で一個入れとこう。ゲソは使わないらしいけど、アメリが寝た後一杯だけビール飲もうかな。


 ついでに、にんじんしりしりも作ったら面白いね。人参祭りだ!


 そうめん、玉ねぎ、ピーマン、そして大量の人参。うん。これであとは三種の神器買えば、オールオッケーね!


 ……って、大事なものを忘れてた! 明日はバレンタイン! 手作りチョコの材料買っとかないと。


 では、お会計~。


 アメリはお小遣いで、バルーンガムを一個買っていきました。



 ◆ ◆ ◆



 お米お水に浸して買い物行っちゃったから、そうめんチャンプルーの出番は明日かな。今日はいかにんじんと、にんじんしりしりでいきまっしょい。


 炊飯スイッチを押して、と。じゃあ、寝室行きましょうか。


 なんとなく、ファンレターを読み始める。皆さんの、「あめりにっき」とアメリへの愛情が伝わってきてとても嬉しい。作家冥利に尽きるひとときだ。


 そういえば、最近気になっていることがある。「ねこきっく」ではメールフォームでのファンレターも受け付けていて、真留さんがプリントアウトして持ってきてくれるのだけど、名物読者とも言うべき読者さんがいた。


 ねこきっくや単行本が発売されるたびに怒涛のような長文で私への賞賛を述べてくださっていたのだけれど、ここ数ヶ月ファンレターをよこしてくださらないのだ。


 何かあったのだろうかと、漠然と不安になる。たしか、お名前は「ゆっきー」さん。


 ……ん? んんん? ゆっきー?


 もしかして。いや、もしかしなくても。


 優輝さんのあめりにっき語りと、ゆっきーさんのファンレターを脳内で重ねてみる。


 ……ノリとか、文体がソックリだ。これは気になる。スマホを手に取り、彼女にコール。


「はーい、こんばんはー。いかがされましたー?」


「ええと、つかぬことを伺いますけど、ゆっきーというハンドルネームで私にファンレター送られたことあります?」


「あ! やっと気づいていただけましたか! はーい、あたしでーす! いやー、直接想いを語れるようになると、メールフォーム経由の方はいいかなあってなっちゃって」


 ビンゴ!


「ゆっきーさん、急にファンレターくださらなくなったなあって、さっき不安を覚えてしまって」


「あー、それは失礼しました。さっさと同一人物だって明かしたら良かったですね。ともかくも、不肖ゆっきー、あいも変わらず神奈先生の大ファンやってます!」


「ありがとうございます。そういえば、以前お約束した絵がなかなか手つかずで」


「あー、あれですか。お気になさらず。いただければめっけものぐらいの気持ちでいますから」


 気さくに言う彼女。


「今月の原稿が上がったら、着手しようと考えてます」


「うわー、楽しみですー!」


 こんな感じで優輝さんと雑談することしばし、お米の炊きあがりをアラームが知らせてきました。


「あ、すみません。ごはんが炊きあがってしまいました。名残惜しいですけど、またいずれ」


「はいー。神奈さんとのお話、すごく楽しいですからいつでもウェルカムですよー。ではではー」


 通話終了。


「アメリー、お料理しに行くよー」


 「おおー」と立ち上がり、とてとてとついてくる彼女を引き連れ、キッチンに向かうのでした。



 ◆ ◆ ◆



 さ・て。どういう順番で作ろうか。大量の人参を買ってきたけれど、一度に三種類の料理を食べるってのは無理ね。


 まず、そうめんチャンプルー。これはさっきも決めたように、明日に回す。すると、しりしりといかだけど。


 これは、今日両方作って、いかを明日のおかずにしようか。なんか寝かせる必要があるらしいし。うん、それがいいかな。


「アメリちゃーん、今日は人参をたくさん切りますよー」


「おおー! 頑張る!」


 いつものように、拳を突き上げる。それでは、例の脳内BGMオン!


「で、今回は千切りにするですよ。人参の千切りは初めてだろうから、お手本少し見せるね」


 ピーラーで皮を剥き、茎の付け根を落とし、千切りにしていく。


「こんな感じ。ちょっとやってみて」


「はーい」


 初挑戦に、ちょっとたどたどしいながらも丁寧に切っていくアメリ。


「おお、上手上手! じゃあ、一緒に切っていこうね」


 例によって調理台側とテーブル側に別れ、千切りを作っていく。


「よっし、こっちは完成! そっちはどうかな?」


「あとちょっとー」


 とのことなので、彼女の作業を見守る。そして、無事フィニッシュ!


「よくできました! お上手!」


 パチパチと拍手すると、「えへへ」と照れる。誰が見ても可愛い。


 さて、次にイカを炙るわけだけど。これはちょっと、私っがやったほうがいいな。


「アメリちゃん、小鉢に溶き卵一個作ってくれるかな?」


「任せて!」


 しゅびっと挙手し、溶き卵を作り始めるアエリシェフ。随分手慣れてきたねー。おっとと、イカが焦げちゃう。よそ見してる場合じゃなかった。火から目を離さない!


 よし、イカも炙れた。冷ましておいて、と。


「アメリ、にんじんしりしり炒めるのやってみる?」


「やるー!」


 では、監督しましょう。と、その前にごはんだけ切っとこ。


「まず、ごま油を引いてーそうそう。で、中火にして熱してね。熱くなってきたら、にんじんをこんだけ約百五十グラム投入~。しんなりするまで炒めてね」


 今のうちに、料理酒、みりん、醤油、砂糖、顆粒だしを調合して調味液を作っておく。


「ん。しんなりしてきたね。じゃあ、これ調味液を入れてねー。……そろそろ馴染んできたかな? じゃあ、卵を回し入れて、軽く火が通ったら、火を止めよう」


 言われた通りにするアメリ。完成!


「上手! さっすがアメリちゃん!」


 頭を撫で撫ですると、おなじみ「うにゅう」ボイスを上げる。


「あとは、お皿に盛って、白ごまをぱらぱらっとね。まずは冷めないうちに、こっちを食べちゃいましょう」


 お茶とごはんともども配膳。


「「いただきます!」」


 うん! 美味しい! シンプルイズベストというか、人参と卵だけのシンプルな味わいが良きかな良きかな


「アメリはどーう?」


「美味しい!」


 二人で、ぱくぱく夢中で食べる。


「アメリは、今日ほんと大活躍だねー。お勉強教えるの撮影して、ごはん作って」


「おおー! 頑張ったー」


「うんうん、偉い!」


 笑顔を向けると、彼女も笑顔になる。ああ、幸せ空間がここ二ありますよ。


 こうして、仲良くごちそうさま。お茶で口をさっぱりさせたら、いかだいこんのほうにとりかかりますよ。


 ちょっと大変だけど、頑張りましょー!

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