冷蔵庫に食材を入れたら、アサリが弱ってしまわないうちに砂抜きですよー!
目分量で三%濃度の塩水が作れるほど器用ではないので秤で測って……。アサリをこすり洗いしたら、ボウルにザルを入れ、そこにアサリをイン! で、浸る程度に潮水をイン! あとはアルミホイルを軽く被せて暗くして、一時間ほど放置でーす。
さて、次はみどりんだ!
「アメリちゃん、みどりんを植え替えますよー」
みどりん、うちに来たときは葉っぱが二枚程度の小ささだったのに、今や十何枚もの葉っぱを持つほどに育っており、実に強い生命力を感じさせる。
「おおー!」
「やり方は教えるから、全部一人でやってみようね……と言いたいとこだけど、さすがにアメリ一人だとまだ大変かな。なので、少しだけお手伝いしちゃうよ」
「ありがとー!」
いえいえ、どういたしまして。アメリがまだこんなに幼いのに、みどりんという命を預かるとは思わなかったからね。
というわけで、新しい鉢の受け皿と鉢をセット。これはアメリにやってもらう。
「で、土をね。真ん中にくぼみができるように入れてちょーだい」
「はーい」
スコップを使いながら、少しずつ土を盛り、整えていくアメリ。
「そんで、みどりんを掘り起こしてね。こう、植え替えるですよ」
おお、立派に根が張っちゃって。くぼみにみどりんを移し替える。これはややデリケートだから私の作業。
「あとは、根っこの上から土を被せてあげて」
「わかった!」
土で根を覆うアメリちゃん。
「よし、支柱も私がやってあげるね」
割り箸を土に差し、紐で緩く縛る。アメリに、まだ紐の結び方教えて泣かたものね。今度、教えてあげなきゃ。
「あとは、栄養剤を新しく差して、お水を……コップに半分ぐらいかな。あげてちょうだい」
「はーい!」
アンプルを差し、とてとてとキッチンに行き、コップ片手に戻ってくるアメリ。そして、鉢に水を注ぐのでした。
「これで大丈夫?」
「うん、多分オッケー。お疲れさまでした!」
右手をタッチの構えにする。
「おお、いえーい!」
「いえーい!」
パチン! これで、みどりんは一件落着!
というわけで、お仕事お仕事~! 背後を見ると、アメリちゃんは夢中で今日買った本を読みふけっています。良き哉良き哉。
そうすることしばし、スマホのアラームが一時間経過を知らせてくれました。
「アメリー。アサリのザルを揚げてくるね」
「待ってー、一緒に行く!」
「ほいほーい。じゃあ、行きましょ」
すっくと立ち上がる彼女を連れ、台所へ。
アルミホイルをどけると、アサリから管がニョキニョキ。水をぴゅっと吹いてるのもいたり。
「おお~。アサリから変なの出てる~……」
「これ、アサリが水を吸ったり出したりするための管ね。よっと」
ザルを揚げると、ちゃんとボウルの底面に砂が落ちていました。
よし、砂抜き完了~。あとはバットに移し替えて、晩ごはんの三十分前まで新たな潮水に浸し、冷蔵庫で安置しまーす。
「じゃ、戻りましょ」
「はーい」
というわけで、戻り! 各々の作業を再開~。
こつこつ仕事に打ち込んでると、タイマーが鳴りました。やー、もう水抜きの時間ですか。早いねえ。
「ちょっと、もっかいキッチン行ってくるねー」
「おおー。手伝えることない?」
「塩水抜くためにザルに上げるだけだからね。すぐ終わるから本でも読んでて」
「はーい」
キッチンに着き、アサリをバットからザルに移す。あとはこれを流しに置いておくだけ!
「ただいま」
「ほんとに早いね!」
「うん。三十分経ったら、お料理始めるよー」
「わかった!」
というわけで、三十分程度ならということで、お仕事は一旦置いといて、ルビ振り作業。休憩も大事よね。……よし、できた! ぷりんとあーうと!
……む。アラームが。調理開始ですかー。このまま印刷しといて、三巻ぶんの原稿は後で渡しましょ。
「アメリー。行くよー」
「はーい!」
さあさあ、アサリくん。申し訳ないけど調理させていただきますよ。
「おお~……アサリ、殺しちゃうんだね」
「うん」
「アサリさん、ごめんなさい。ありがとう」
ぺこりとアサリに向かってお辞儀するアメリ。彼女の頭を、ぽんぽんと慈しむように叩く。優しくて、そして賢い子だ。
私もアメリに倣い、「ありがとう、そしてごめんなさい」と彼らに言葉を贈る。
最大限の礼儀を払ったところで気持ちを切り替え、脳内MP3プレーヤーをスイッチオン! 三分でクッキングするBGM、レディ・ゴー!
「今日はどんな料理にするの?」
「ボンゴレっていうスパゲッティーと、クラムチャウダーっていうスープを作るよ。どっちもアサリを美味しく食べられる料理なんだ」
「おお~……!」
キラキラ瞳を輝かせるアメリ。この子も、しっかり気持ちの切り替えができてるようだ。本当に賢い子だな。
さて、アメリちゃんにはどのパートを担当してもらおうかな。脳内で作業工程を組み立てる。
よし、クラムチャウダーから手を付けよう!
「それじゃー始めましょっか、アメリちゃん!」
「はーい!」
エプロンを締め、調理台側に私、テーブル側にアメリがまな板を前に分担して構える。じゃがいも、人参、玉ねぎと調理器具、レシピ動画を用意し、レッツ・クッキーング!
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