神奈さんとアメリちゃん

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第二百十七話 アサリさん、ごめんなさい。ありがとう

公開日時: 2021年4月30日(金) 20:01
文字数:2,081

冷蔵庫に食材を入れたら、アサリが弱ってしまわないうちに砂抜きですよー!


 目分量で三%濃度の塩水が作れるほど器用ではないので秤で測って……。アサリをこすり洗いしたら、ボウルにザルを入れ、そこにアサリをイン! で、浸る程度に潮水をイン! あとはアルミホイルを軽く被せて暗くして、一時間ほど放置でーす。


 さて、次はみどりんポトスだ!


「アメリちゃん、みどりんを植え替えますよー」


 みどりん、うちに来たときは葉っぱが二枚程度の小ささだったのに、今や十何枚もの葉っぱを持つほどに育っており、実に強い生命力を感じさせる。


「おおー!」


「やり方は教えるから、全部一人でやってみようね……と言いたいとこだけど、さすがにアメリ一人だとまだ大変かな。なので、少しだけお手伝いしちゃうよ」


「ありがとー!」


 いえいえ、どういたしまして。アメリがまだこんなに幼いのに、みどりんという命を預かるとは思わなかったからね。


 というわけで、新しい鉢の受け皿と鉢をセット。これはアメリにやってもらう。


「で、土をね。真ん中にくぼみができるように入れてちょーだい」


「はーい」


 スコップを使いながら、少しずつ土を盛り、整えていくアメリ。


「そんで、みどりんを掘り起こしてね。こう、植え替えるですよ」


 おお、立派に根が張っちゃって。くぼみにみどりんを移し替える。これはややデリケートだから私の作業。


「あとは、根っこの上から土を被せてあげて」


「わかった!」


 土で根を覆うアメリちゃん。


「よし、支柱も私がやってあげるね」


 割り箸を土に差し、紐で緩く縛る。アメリに、まだ紐の結び方教えて泣かたものね。今度、教えてあげなきゃ。


「あとは、栄養剤を新しく差して、お水を……コップに半分ぐらいかな。あげてちょうだい」


「はーい!」


 アンプルを差し、とてとてとキッチンに行き、コップ片手に戻ってくるアメリ。そして、鉢に水を注ぐのでした。


「これで大丈夫?」


「うん、多分オッケー。お疲れさまでした!」


 右手をタッチの構えにする。


「おお、いえーい!」


「いえーい!」


 パチン! これで、みどりんは一件落着!


 というわけで、お仕事お仕事~! 背後を見ると、アメリちゃんは夢中で今日買った本を読みふけっています。良きかな良きかな


 そうすることしばし、スマホのアラームが一時間経過を知らせてくれました。


「アメリー。アサリのザルを揚げてくるね」


「待ってー、一緒に行く!」


「ほいほーい。じゃあ、行きましょ」


 すっくと立ち上がる彼女を連れ、台所へ。


 アルミホイルをどけると、アサリから管がニョキニョキ。水をぴゅっと吹いてるのもいたり。


「おお~。アサリから変なの出てる~……」


「これ、アサリが水を吸ったり出したりするための管ね。よっと」


 ザルを揚げると、ちゃんとボウルの底面に砂が落ちていました。


 よし、砂抜き完了~。あとはバットに移し替えて、晩ごはんの三十分前まで新たな潮水に浸し、冷蔵庫で安置しまーす。


「じゃ、戻りましょ」


「はーい」


 というわけで、戻り! 各々の作業を再開~。


 こつこつ仕事に打ち込んでると、タイマーが鳴りました。やー、もう水抜きの時間ですか。早いねえ。


「ちょっと、もっかいキッチン行ってくるねー」


「おおー。手伝えることない?」


「塩水抜くためにザルに上げるだけだからね。すぐ終わるから本でも読んでて」


「はーい」


 キッチンに着き、アサリをバットからザルに移す。あとはこれを流しに置いておくだけ!


「ただいま」


「ほんとに早いね!」


「うん。三十分経ったら、お料理始めるよー」


「わかった!」


 というわけで、三十分程度ならということで、お仕事は一旦置いといて、ルビ振り作業。休憩も大事よね。……よし、できた! ぷりんとあーうと!


 ……む。アラームが。調理開始ですかー。このまま印刷しといて、三巻ぶんの原稿は後で渡しましょ。


「アメリー。行くよー」


「はーい!」


 さあさあ、アサリくん。申し訳ないけど調理させていただきますよ。


「おお~……アサリ、殺しちゃうんだね」


「うん」


「アサリさん、ごめんなさい。ありがとう」


 ぺこりとアサリに向かってお辞儀するアメリ。彼女の頭を、ぽんぽんと慈しむように叩く。優しくて、そして賢い子だ。


 私もアメリにならい、「ありがとう、そしてごめんなさい」と彼らに言葉を贈る。


 最大限の礼儀を払ったところで気持ちを切り替え、脳内MP3プレーヤーをスイッチオン! 三分でクッキングするBGM、レディ・ゴー!


「今日はどんな料理にするの?」


「ボンゴレっていうスパゲッティーと、クラムチャウダーっていうスープを作るよ。どっちもアサリを美味しく食べられる料理なんだ」


「おお~……!」


 キラキラ瞳を輝かせるアメリ。この子も、しっかり気持ちの切り替えができてるようだ。本当に賢い子だな。


 さて、アメリちゃんにはどのパートを担当してもらおうかな。脳内で作業工程を組み立てる。


 よし、クラムチャウダーから手を付けよう!


「それじゃー始めましょっか、アメリちゃん!」


「はーい!」


 エプロンを締め、調理台側に私、テーブル側にアメリがまな板を前に分担して構える。じゃがいも、人参、玉ねぎと調理器具、レシピ動画を用意し、レッツ・クッキーング!

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