神奈さんとアメリちゃん

退会したユーザー ?
退会したユーザー

第三百三十一話 女の子も祝っていいのよ?

公開日時: 2021年8月25日(水) 21:01
更新日時: 2021年8月28日(土) 18:35
文字数:2,167

「行ってきまーす……くわあ~」


「ほんとに、こんな日まで朝弱いんだから……。皆さんの前ではしゃっきりしなさいね」


「ふぁーい……」


 ロータリーで、お父さんの運転する車から降り、大あくび。助手席のお母さんにお小言を頂戴してしまいました。ふにゃ……。


「おとーさん、おかーさん、また会おーねー!」


「うんうん。またお盆に帰っておいで」


「アメリちゃん、待ってるからね」


 方やアメリちゃんは、朝から元気はつらつ。その元気、十%でいいから分けてほしいなー。


「それじゃー、またお盆に」


「ばいばーい!」


 二人で手を振り、改札に向かう。手を振り返してくれるお父さんたちと、車の姿が遠ざかっていく。


 むん! 名残り惜しいけど、気持ちを切り替えていきまっしょい!



 ◆ ◆ ◆



 特急のホームで待っていると、皆さんがぞろぞろとやって来ました。


「お待たせしましたか?」


「いえ、それほどは」


 気を使わせまいと答える。そもそも、電車がまだ来てないのだから、遅刻もなにもない。


「福井、とっても楽しかったですー。また、そう遠くないうちに来たいですねえ」


「ありがとうございます」


 まりあさんに故郷を称賛され、ちょっとこそばゆくも、素直に嬉しくなる。


「そういえば、駅弁は買われました?」


「はい。猫崎さんお勧めの、『福井かにめし』を買わせていただきました」


 紙袋の中にある、二つの包みを見せてくださる白部さん。


 さすがに内子はシーズン外だから入ってないはずだけど、それでも十分愉しんでいただけるはず。


「あ、そろそろ来ますよ」


 スマホを見たまりあさんが、声を上げる。


 それじゃー、楽しい列車の旅と洒落込みましょー!



 ◆ ◆ ◆



 やはり今回もみんなばらばらだけど、とりあえずアメリとはちゃんとお隣同士。


 福井の思い出を、存分に語り合う。


 どれも楽しかったようだけど、甲乙付け難いながらも、特に科学館が楽しかったようだ。


 この子は、しっかりした支援さえできれば、きっと「知」の道の第一人者になる。親バカかもしれないけど、そう思わずにいられない。


 米原で新幹線に乗り換え、例によって「カチカチアイス」とお茶を購入。溶けるのをゆっくり待ちながら、一緒に子供向け科学動画や生物動画を見る。


 一応、充電器はあるけど、あまりバッテリー無駄遣いしないようにしないとね。いざというときに、皆さんと連絡が取れなくなったら大変だ。


 アイスも溶けたので、いっただっきまーす! う~ん濃厚~! ほんと、こってりとしてる。これ食べると、スーパーの百円しないアイスじゃ物足りなくなっちゃうわね。まあ、そっちも食べるんですけど。


 で、名古屋を過ぎたあたりでかにめし開封~。二本めのお茶と一緒に、いーてぃんぐ・なう! やはり内子は入ってないけれど、十分美味しい。福井の幸に、幸あれ。


 あとは品川、渋谷と経ていって、やっとこ東F駅に到着! いやー、ほんの一週間ぐらい離れただけなのに、やけに懐かしい。


「福井一週間の旅、お疲れさまでした」


 改札を出ると、ぺこりとお辞儀して皆さんの旅路を労う。皆さんも、「ご案内、ありがとうございました!」とお辞儀を返してくる。


「バスが来るまでだいぶありますね。南のスーパーで、柏餅買っていきませんか?」


「あー、今日こどもの日ですもんね!」


 まりあさんのご提案に、優輝さんがピンとくる。そっか、そういや五月五日だった。


「こどもの日ってなーに?」


「休日の一つで、男の子を祝う日だよ。難しいいい方だと『端午の節句』っていって、兜飾ったり、柏餅食べたりするの」


「おお? アメリ、女の子なのに柏餅とかいうの食べていいの?」


 くりくりと、疑問の二文字を両の瞳に書いてありそうな目を向けてくるアメリちゃん。


「いいのいいの。男の子がひな祭りを楽しんでも、女の子が端午の節句を楽しんでもいいのよん」


「ボクも、去年柏餅食べたよ。さすがに兜は用意しなかったけど」


 クロちゃんが体験談を語ると、「おお~」となるアメリ。


「あたしも、ミケや家族と一緒に柏餅食べましたよ。美味しいですよね」


 さすが、イベント大好きガール。きっと、一家揃ってイベント好きなんだろうな。


「話してるとバス来ちゃいますし、とりあえず行きませんか?」


 仕切りガールの由香里さんに促され、駅南のスーパーで柏餅を買う一同でした。


 その後は、私たちは民営バスに乗って、一路「H街道交差点」へ。まりあさんは、このすぐ後に来る市バスを待って、「W町公園」のさらに一つ先にあるバス停を目指す。


 互いに手を振り合っていると、バスが発進。ゴールまであと少しだ。



 ◆ ◆ ◆



「やー、懐かしの我が家って感じですねえ!」


 かくてるハウスを見上げ、感慨深げな優輝さん。


「ですね。一週間離れただけなんですけど」


 私も、なんともいえない感情がこみ上げる。


「それじゃ皆さん、お疲れ様でした。今日はもう、ゆっくりしましょう! あたしらも今日一日は仕事オフです! では、失礼させてもらいますね」


 かくてるの皆さんとお辞儀しあい、例の大仰な門のロックを外し、中に入っていく彼女らを見送る。


「では、私もここで。福井ご案内、お疲れ様でした」


「二人とも、またなー!」


 白部さんとお辞儀し合い、彼女がノーラちゃん共々自宅に向かうのを背に、私たちも自宅の門を開ける。


 久方ぶりの我が家に入り、二人で「ただいまー!」とシャウト。


 荷解きを終えて、ガス栓戻してお風呂入ったら、柏餅食べましょうね。

読み終わったら、ポイントを付けましょう!

ツイート