神奈さんとアメリちゃん

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第八十三話 ハロウィンに向けて準備しよう! ―前編―

公開日時: 2021年4月20日(火) 07:01
文字数:2,433

シチューも食べ終わり、入浴後にアメリの髪をブラシでかしていると、ふと違和感に気づいた。


「アメリ、そういえば髪が伸びてないね?」


 彼女が今の姿になってから一ヶ月半以上が経っているけれど、そういえば髪の毛が伸びている感じがしない。ブラッシングやお掃除していると、普通にこの独特の髪色の抜け毛は出るんだけど。


「おおー? そうなの?」


「うん、そう見える」


 ふむ、これは不思議。こういうとき、持つべきものは専門家の知り合い!


 白部さんにこのふとした疑問をLIZEで送ると、こんな返事が来た。


「まだ研究段階なので断言できませんが、猫耳人間はその姿になったとき以上には髪が伸びないようです。生え変わりはするのですが、その点でも猫の毛に似た性質を持っているようです」


 なんですとー!? がーん、だな。出鼻をくじかれた。アメリのロングヘアを愛でることはできないのか……。


 いや、アメリはどんな髪型でも可愛いけどね? このショートヘアだって、最高に似合ってるし。でも、ロングも見たかったなあ……。まあ、この美しいシルバータビー模様が崩れないと思うと、それはそれでアリな気がしてきた。


「おお~? おねーちゃんどしたの?」


「んー? 『良かった探し』してる。とりあえず、アメリは髪伸びないんだって」


「へー」


 てことは、クロちゃんやミケちゃんは転生したときから長毛だったわけだ。切って短くするのはできるんだから、羨ましいなあ。考えてもしょうがないことだけどね。


 そういえば、私もそろそろろ髪切りたいな。どんどん寒くなるし、自分自身はロングの方が似合うと思うからショートにまではしないけど、適度な長さにして整えたいというのはある。


 今度アメリの冬物を買うとき、ついでに駅前で切りましょ。


 そんなことを考えてると、LIZEのメッセージ着信音が。スマホを見ると、優輝さんから「もうすぐハロウィンですねえ! 子供たちの衣装、用意しましょう!」と、バンザイ猫スタンプとともにメッセージが届いていた。こんなスタンプもあるのか……。しかし、さすがイベント大好きガール。テンションが高い。


 そっかー。もう、そんな時期なんだねえ。今までは近所の子供にお菓子をあげる側だったけど、今度からもらう側にもなるのか。


「アメリー。優輝さんが、もうすぐハロウィンだから衣装用意しましょうって」


「おおー? なにそれ?」


「十月三十一日にね、子供が魔女とかモンスターの格好して、近所の大人からお菓子もらうの」


 説明すると、こちらを向いて「おお~!」と瞳を輝かせる。良きかな良きかな


 お、また着信音。優輝さんからだ。


「てなわけで、明日うちで打ち合わせしませんか?」


 その提案に対して、まりあさんからも「いいですね!」とサムズアップ猫スタンプとともにメッセージが届く。むう、まりあさんまでこれ持ってるのか。私も欲しくなってきたな。


「了解です! 時間の都合とかいかがですか?」


 私も同意する。


「じゃあ、お昼集合で。また、美味しいピザ焼きますよ!」


 と、優輝さんもサムズアップ猫スタンプ。


 するとすかさず、「ピザはもうヤメロ」と、がっくり猫スタンプとともに久美さんのメッセージ。思わず苦笑。


 しばらく両者の押し問答が続いた後、「しょうがないなー。じゃあ、パエリアでも作りますよ」と、優輝さんが折れた。いやはや、向こうも大変だね。


 ああ、ほほえまなやりとりにほころんでないで、お返事しないと。「では、明日お昼にお邪魔します」と返信。


「おねーちゃん、ブラシもうしないの?」


「おっとと、ごめんね。手が止まってた。明日のお昼、お隣さんに行くことになったよー」


 というわけで、ブラッシング再開。


 明日が楽しみだなあ。



 ◆ ◆ ◆



「こんにちは~」


 インタホンに呼びかけると、「どーも、どーも、こんちわ。入ってきてちょーだい」という久美さんの声とともに門のロックが外れる。ほんとハイソな物件よね、ここ。


 こういうところでのシェア生活も、色んな意味で楽しそうだな。大変なことも多いだろうけど。


 ともかくも中に入ると、久美さんが「ちーっす」とソファでさつきさん、ミケちゃんと何やら映画を見ながらご挨拶。さつきさんとミケちゃんも、「こんちわっす!」「こんにちは!」と続く。


「お邪魔しまーす。アメリもご挨拶」


「こんにちは!」


 「アメ子は元気だなー」と、久美さんが笑顔を向ける。


 そういえばミケちゃん、もう落ち込んでる様子ないな。なんだかんだであれから吹っ切れたのかな。


「ほかのお二人はどちらに?」


「優輝はキッチンで鋭意パエリア調理中。由香里は宇多野サンたち迎えに行ってるよ。もうすぐ帰ってくるんじゃないかな」


 ああ、言われてみればバンがなかったなあ。とりあえずアメリと一緒にキッチンまでご挨拶に行くと、大きなフライパン相手に奮闘中の優輝さんが、「こんにちは! 今、腕によりをかけて作ってますんで!」とご挨拶を返してくれる。


 いい匂い。美味しそうね。


「お席、いいですか?」


 リビングに戻って久美さんに声をかけると、「どーぞ」とはす向かいのソファを勧められたので着席。


「マスペとコーラ取ってくるわ。二人とも飲むっしょ? さつき、後で展開教えてな」


「ありがとうございます」


 ぺったん、ぺったんと裸足でキッチンに向かう久美さんの背中に声をかけると、右手を少し挙げてそれに応える。


「今、何を見てるんですか?」


「優輝ちゃんが珍しく名作映画借りてきたんで、それっす」


 さつきさんが、タイトルを教えてくれる。あー、私も春に映画館で見たなあ。二度見るのも悪くないね。


「ただいまー。あ。神奈さん、アメリちゃん、こんにちは」という由香里さんの声に続き、まりあさんとクロちゃんが「こんにちは。お邪魔します」とご挨拶。私たちも挨拶を返す。


 久美さんが戻ってきて、マスぺとコーラのグラスを置きながらまりあさんたちにご挨拶すると、今度はお茶をれにキッチンへ舞い戻る。行ったり来たり大変ね。


 さてさて、いつものメンツがかくてるハウスに揃ったところで、どんな話になりますやら。楽しみ!

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