神奈さんとアメリちゃん

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第三百五十四話 かんなせんせいのおりょうりきょうしつ ―前編―

公開日時: 2021年9月17日(金) 21:01
更新日時: 2021年9月24日(金) 18:15
文字数:2,004

「ふわあ~……」


 今朝も大あくびしながら、洗顔後キッチンへ。エプロン締めて朝食の準備をする愛娘を見つめながら着席。……若干訂正。見つめようとするものの、うつらうつらとまぶたが落ちそうになりながら。


 天気は昨日ほどの大降りではないけど、相変わらずの雨。


 しかし、どうしたことでしょう。アメリちゃん、固まって動きません。はてー?


「アメリちゃん。何かトラブルですかー? あふ……」


 問いかけると、くるりとこちらを向く。


「えっとね、きゅうりもたまねぎもないけど、どうしたらいいかな!?」


 あら、それで固まってたのね。


「ツナマヨだけとか、たまごマヨだけとかでも大丈夫よー……くふぁ~」


「おお~!」


 その発想はなかったとばかりにポンと手を打ち、調理に取り掛かるシェフ。意外と応用は苦手なのかな。どちらかというと、苦手ってよりは、まず基本に忠実にありすぎようとするってだけかな。


 そんなことをぬぼーっと考えながら、うつらうつら。


「おまちどうさまーっ」


 コトリとお皿が置かれる音で、ハッとなる。目の前には、美味しそうなツナサンドとたまごサンドが鎮座しておりました。


「紅茶もれるね」


「お~、ありがとー」


 いやはや、人間用トイレの使い方を教えたり、お箸の使い方教えたのが遠い昔のようだ。あれから、まだ季節が三つも巡りきってないんだなあ。


 ティーカップも置かれ、対面にアメリが着席。そして、いただきます宣言をするので私も続く。ほんとに、こんなにテキパキ動いちゃうんだからすごい。まだ、きっと人間でいえばとおにもなってないのよ、この子。すごいなあ。


「アメリちゃんは、ほんとすごいですねえ」


 なんかもう、脳内でも口でも、すごいしか言葉が出ない。


「ありがとー!」


 にこっとお陽様笑顔。


 すごいアメリちゃんに、今日はどんな料理教えてあげようかしら。もっとしゃっきりしたら考えましょ。



 ◆ ◆ ◆



 しゃっきりしたので、ニュースチェックとLIZEチェックののち、お仕事開始! 雨はやっぱり今日いっぱい降るみたい。ヤンナルネ。


 LIZEでも、皆さん今日の天気をぼやいておりました。


 すると、スマホに着信が。優輝さんだ。


「改めて、おはようございます。今、お時間いいですか?」


「はい、構いませんよ」


 例によって、平常運転で筆を走らせながら受け答え。


「実は、ミケがアメリちゃんと遊びたいと言うものでして、差し支えなければいかがかと思いまして」


「私は構いませんけど、ちょっと本人に訊いてみますね」


 送話口を塞ぎ、「アメリー、今日ミケちゃんが遊びに来たいってー。どうするー?」と具合を尋ねる。


「遊ぶー! オッケーしてー!」


 例の図鑑から目を上げ答える娘。ほいほい。


「オッケーです。せっかくですから、お買い物ついでにお菓子買ってきますね」


「いや、悪いですよ! うちから持たせますので、お気遣いなく」


「そうですか? あ!」


 ピンときた!


「どうしました?」


「ミケちゃんって、お料理どれぐらいできましたっけ?」


「料理ですか? お菓子はそこそこ熱心に覚えてくれるんですけど、料理はいまいちですねえ。ミケが気乗りしてくれないので、ほとんど教えてないです」


 ほむほむ。


「じゃあ、お昼にお料理講座開きましょう! 今、アメリに簡単な朝食を教えてましてね」


 アメリが朝食当番になったいきさつを話す。


「あはは。いや、笑っちゃ悪いですね。でも、合理的といえば合理的です」


 私の朝の弱さは皆さんに知れ渡っているので、優輝さん苦笑しつつも、いい考えだと肯定してくださる。


「そんなわけで、ものはついでということで、ミケちゃんにも簡単な料理を教えてあげようかなと」


「なるほどなるほど。あたしが勧めてもいまいちノリ気になってくれないんですけど、神奈さんがご指導なさるなら、案外気が変わるかもしれませんね。ちなみに、何を持たせたらいいでしょうか?」


「ああ、材料なんかはうちで用意しちゃいますよ。ほんとに初心者向けですから、あまり複雑なものは教えないんで。なので、エプロンだけでオッケーです」


 「なんだか、ほんとに厚かましくなってしまって恐縮です」と、遠慮がちに言う優輝さん。


「いえいえ。お菓子をご用意していただくお礼と思っていただければ」


「そうですねえ。じゃあ、うちのストックで一番いいの持たせますね。あと、ジュースも」


「あら、悪いですねえ」


 ペンを持ったまま、後頭部を撫でる。


「いえいえ。お料理を教えてもらうのと、材料費のお礼と思っていただければ」


 あら、上手い返し。


「で、ミケは何時に伺わせたらいいでしょうか?」


「そうですねえ……。まず買い物しなきゃですから、十二時少し前でお願いします」


「わかりました。一応、そちらの門まではあたしが送っていきますね。帰らせるときは、お電話を一報お願いします」


「了解です。それでは、その時刻に」


 通話終了!


「さーて、アメリちゃん。お買い物に行きますぞ」


「はーい」


 いそいそと本をしまう愛娘。では、お着替え&メイクを始めますかー。

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