「ふわあ~……」
今朝も大あくびしながら、洗顔後キッチンへ。エプロン締めて朝食の準備をする愛娘を見つめながら着席。……若干訂正。見つめようとするものの、うつらうつらとまぶたが落ちそうになりながら。
天気は昨日ほどの大降りではないけど、相変わらずの雨。
しかし、どうしたことでしょう。アメリちゃん、固まって動きません。はてー?
「アメリちゃん。何かトラブルですかー? あふ……」
問いかけると、くるりとこちらを向く。
「えっとね、きゅうりもたまねぎもないけど、どうしたらいいかな!?」
あら、それで固まってたのね。
「ツナマヨだけとか、たまごマヨだけとかでも大丈夫よー……くふぁ~」
「おお~!」
その発想はなかったとばかりにポンと手を打ち、調理に取り掛かるシェフ。意外と応用は苦手なのかな。どちらかというと、苦手ってよりは、まず基本に忠実にありすぎようとするってだけかな。
そんなことをぬぼーっと考えながら、うつらうつら。
「おまちどうさまーっ」
コトリとお皿が置かれる音で、ハッとなる。目の前には、美味しそうなツナサンドとたまごサンドが鎮座しておりました。
「紅茶も淹れるね」
「お~、ありがとー」
いやはや、人間用トイレの使い方を教えたり、お箸の使い方教えたのが遠い昔のようだ。あれから、まだ季節が三つも巡りきってないんだなあ。
ティーカップも置かれ、対面にアメリが着席。そして、いただきます宣言をするので私も続く。ほんとに、こんなにテキパキ動いちゃうんだからすごい。まだ、きっと人間でいえば十にもなってないのよ、この子。すごいなあ。
「アメリちゃんは、ほんとすごいですねえ」
なんかもう、脳内でも口でも、すごいしか言葉が出ない。
「ありがとー!」
にこっとお陽様笑顔。
すごいアメリちゃんに、今日はどんな料理教えてあげようかしら。もっとしゃっきりしたら考えましょ。
◆ ◆ ◆
しゃっきりしたので、ニュースチェックとLIZEチェックののち、お仕事開始! 雨はやっぱり今日いっぱい降るみたい。ヤンナルネ。
LIZEでも、皆さん今日の天気をぼやいておりました。
すると、スマホに着信が。優輝さんだ。
「改めて、おはようございます。今、お時間いいですか?」
「はい、構いませんよ」
例によって、平常運転で筆を走らせながら受け答え。
「実は、ミケがアメリちゃんと遊びたいと言うものでして、差し支えなければいかがかと思いまして」
「私は構いませんけど、ちょっと本人に訊いてみますね」
送話口を塞ぎ、「アメリー、今日ミケちゃんが遊びに来たいってー。どうするー?」と具合を尋ねる。
「遊ぶー! オッケーしてー!」
例の図鑑から目を上げ答える娘。ほいほい。
「オッケーです。せっかくですから、お買い物ついでにお菓子買ってきますね」
「いや、悪いですよ! うちから持たせますので、お気遣いなく」
「そうですか? あ!」
ピンときた!
「どうしました?」
「ミケちゃんって、お料理どれぐらいできましたっけ?」
「料理ですか? お菓子はそこそこ熱心に覚えてくれるんですけど、料理はいまいちですねえ。ミケが気乗りしてくれないので、ほとんど教えてないです」
ほむほむ。
「じゃあ、お昼にお料理講座開きましょう! 今、アメリに簡単な朝食を教えてましてね」
アメリが朝食当番になったいきさつを話す。
「あはは。いや、笑っちゃ悪いですね。でも、合理的といえば合理的です」
私の朝の弱さは皆さんに知れ渡っているので、優輝さん苦笑しつつも、いい考えだと肯定してくださる。
「そんなわけで、ものはついでということで、ミケちゃんにも簡単な料理を教えてあげようかなと」
「なるほどなるほど。あたしが勧めてもいまいちノリ気になってくれないんですけど、神奈さんがご指導なさるなら、案外気が変わるかもしれませんね。ちなみに、何を持たせたらいいでしょうか?」
「ああ、材料なんかはうちで用意しちゃいますよ。ほんとに初心者向けですから、あまり複雑なものは教えないんで。なので、エプロンだけでオッケーです」
「なんだか、ほんとに厚かましくなってしまって恐縮です」と、遠慮がちに言う優輝さん。
「いえいえ。お菓子をご用意していただくお礼と思っていただければ」
「そうですねえ。じゃあ、うちのストックで一番いいの持たせますね。あと、ジュースも」
「あら、悪いですねえ」
ペンを持ったまま、後頭部を撫でる。
「いえいえ。お料理を教えてもらうのと、材料費のお礼と思っていただければ」
あら、上手い返し。
「で、ミケは何時に伺わせたらいいでしょうか?」
「そうですねえ……。まず買い物しなきゃですから、十二時少し前でお願いします」
「わかりました。一応、そちらの門まではあたしが送っていきますね。帰らせるときは、お電話を一報お願いします」
「了解です。それでは、その時刻に」
通話終了!
「さーて、アメリちゃん。お買い物に行きますぞ」
「はーい」
いそいそと本をしまう愛娘。では、お着替え&メイクを始めますかー。
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