神奈さんとアメリちゃん

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第四百九十話 一休み、一休み

公開日時: 2022年2月8日(火) 21:01
更新日時: 2022年2月9日(水) 18:24
文字数:2,392

 今日は土曜なので、白部さんとノーラちゃん、近井さん親子が来ている代わりに、押江先生、ミケちゃん、クロちゃんがOUT。


 で、今日は何をしているかというと、ゴッドレンジャーごっこです。


「すみませんね、あまりお構いできずに」


 私は、相変わらずデスマーチ中。お盆進行は伊達じゃない。明日コミットの準備もしなきゃだし。


「いえいえ、お気になさらず」


 白部さんも、魔の四面指導から開放され、気楽な感じです。


 アメリが特別カリキュラムに入ってしまったため、ノーラちゃん一人に勉強させるのもどうかと思い、土日は思い切って休養に当て、平日にご自宅で勉強を教えることにしたそうで。


「ノーラちゃんも慣れてきたことですし、一人でクラブに通わせるのも、ありかなと思うのですけど」


 彼女がデータを取らなければいけない対象は、ノーラちゃんだけではない。アメリこそ、勉学は押江先生の持ちぶんとなってしまったが、四人全員をモニタリングするのがお仕事だ。


「ノーラちゃん、一人で通えそう?」


「任せろ! バスの乗り方は、大体覚えたぞ!」


 おお、心強いお言葉。


「じゃあ、今度一人で通ってもらおうかしら」


「おー! 大船に乗った気持ちでいてくれよなー!」


 威勢がいいですねえ。思えば、アメリに常について回っている、私のほうがおかしいのかなあ……。


「ノーラちゃん、遊ぼー」


「おー、そーだな! アメリ、始めるぞー」


「おおー!」


 お、本日のゴッドレンジャー劇場開幕ですねえ。今日は、新入り「あのじろうアノマロカリス」をチョイスした、ともちゃん。今日は、どんなドラマを繰り広げるのでしょうか?


「バッドキング、さんじょう~! ふっへっへっへっ」


「あーっ! おねーちゃんの車がー!」


 開幕、白部さんの悪者ボイス。もはや、手慣れたものです。そして、さっそく私のミニカーは災難にあった模様。とほほ。


「でたな、バッドキング! ゴッドレンジャーが、せいばいしてやる!」


「ああーっ! また、おねーちゃんの車がーっ!」


 正義の味方、ゴッドレンジャーIN! 私の車、どうなってるのかしら……。見たいような、見たくないような。


「バッドキングさま! あっしも、すけだちしますぜ」


 ともちゃんの声。なんと、あのじろう、ヴィラン悪役側で参加! まさかの展開! でも、なんで三下キャラ?


「きゃー! ゴッドレンジャーさま! あのじろうさんの、せんのうを、といてあげて!」


 こちらは、アメリちゃん=ほえほえさん。おお、それっぽい設定が即興で組まれましたよ!


「なんだって! それは、ほんとうかい!? ならば、あのじろうくんを、きずつけることはできない!」


「さあー、どうする、ゴッドレンジャー? フフフ……」


 白部さん、悪役演技ノリノリですね。


「ゴッドレンジャーさま! わたしも、たたかいます! とう!」


「おお、ほえほえさんが、きょだいかを!」


 うん、ほえほえさん、この中で元々一番大きいけどね。


 なんと珍しい、がぶり四つのバトル展開。これはが離せません。


「おもいだして、あのじろうさん! わたしとすごした、あのひびを!」


 さすが、ほえほえさん。巨大化してもいつものノリね。


「くっ……なんだ、このずつうは!」


 ともちゃんも、ノリがいいなあ。


「まどわわされるな、あのじろう! やつらは、われわれのてきだ!」


 白部さん、お医者さんにならなかったら、保育園の先生になってただろうなーという、上手いノリ方。


 ちらりと親子ちかこさんの様子を見ると、とても楽しそうに見入っています。あと、転落している私の車も、視界に入りました。涙。


 そのまま少し見守っていると、ほえほえさんが、あのじろうに体当たり! ……いや、ハグ?


「おもいだして、あのじろうさん。わたしとあなたは、おともだちだったのよ……。うみに、いったでしょう? そこで、バーベキューたべて……」


 それ、こないだの海の話じゃない。リアルの思い出で、あのじろうを侵食するほえほえさん。もはや、どっちが洗脳かわからないわね。


「はっ、そうだ……! たしか、ホタテのバーべキューを……!」


 あのじろう、ノッてきた~!


「そうだ。ぼくは、ほえほえさんの、だいじなともだちだ!」


「なんだと!? せんのうが、とけただと!?」


 白部さんも、ノリがいいですね~。


「さあ、バッドキング! これで、おまえひとりだ! くらえ、ゴッドソード!」


「ぐわあああ~! お、おぼえてろ、ゴッドレンジャー!」


 バッドキング退場~。


「あのじろうさん!」


「ほえほえさん!」


 抱きしめ合う二人。


「さらばだ!」


 そして、颯爽と飛び立っていく、ゴッドレンジャー。


 大団円! 親子ちかこさんと二人で、拍手する。「どうよ?」ってな顔の三人と、照れくさそうな白部さんが好対照。


 つい、見入っちゃったな。


「面白かったですー」


 親子ちかこさん、絶賛。


「私も。先の展開が読めませんでした」


 同様に、賛辞を送る。


「いやー、お恥ずかしいです」


 より一層、照れる白部さん。


「おおー! 白部せんせー、ちゃんと上手だったよ!」


「そーだぞ、ルリ姉、自信持てよなー」


「ともも、バッドキング上手だと思った!」


 子供たちの賛辞に、ますます照れくさそうな彼女。


「ありがとう。本当は、アンチエレメント大帝が用意できると良かったんだけどねー」


「なんです? その、なんとか大帝って?」


 素朴な疑問を呈する。


「エレメントレンジャーが、最後に戦う敵なんです。ただ、グッズがなくて……」


 なるほどねえ。怪獣が売り物になる別シリーズとは、販売戦略が違うのか。ブンレッツは、食玩になったらしいけど。


「まったく、売り物として出てないんですか?」


「限定生産らしくて、かなり高値で取引されてるんですよ」


 へー。まあ、番組も終わりの頃の敵じゃ、不良在庫になっても困るものねえ。


「ルリ姉、バッドキングでもじゅーぶん楽しいから、安心してくれよな!」


「ありがと」


 白部姉妹の、ほほえまなやり取り。


 こうして、今日はゴッドレンジャーごっこを中心に、子供三人が思う存分遊ぶのでした。


 さーて、夜になったら、明日コミットの準備をしないとね!

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