今日は土曜なので、白部さんとノーラちゃん、近井さん親子が来ている代わりに、押江先生、ミケちゃん、クロちゃんがOUT。
で、今日は何をしているかというと、ゴッドレンジャーごっこです。
「すみませんね、あまりお構いできずに」
私は、相変わらずデスマーチ中。お盆進行は伊達じゃない。明日の準備もしなきゃだし。
「いえいえ、お気になさらず」
白部さんも、魔の四面指導から開放され、気楽な感じです。
アメリが特別カリキュラムに入ってしまったため、ノーラちゃん一人に勉強させるのもどうかと思い、土日は思い切って休養に当て、平日にご自宅で勉強を教えることにしたそうで。
「ノーラちゃんも慣れてきたことですし、一人でクラブに通わせるのも、ありかなと思うのですけど」
彼女がデータを取らなければいけない対象は、ノーラちゃんだけではない。アメリこそ、勉学は押江先生の持ちぶんとなってしまったが、四人全員をモニタリングするのがお仕事だ。
「ノーラちゃん、一人で通えそう?」
「任せろ! バスの乗り方は、大体覚えたぞ!」
おお、心強いお言葉。
「じゃあ、今度一人で通ってもらおうかしら」
「おー! 大船に乗った気持ちでいてくれよなー!」
威勢がいいですねえ。思えば、アメリに常について回っている、私のほうがおかしいのかなあ……。
「ノーラちゃん、遊ぼー」
「おー、そーだな! アメリ、始めるぞー」
「おおー!」
お、本日のゴッドレンジャー劇場開幕ですねえ。今日は、新入り「あのじろう」をチョイスした、ともちゃん。今日は、どんなドラマを繰り広げるのでしょうか?
「バッドキング、さんじょう~! ふっへっへっへっ」
「あーっ! おねーちゃんの車がー!」
開幕、白部さんの悪者ボイス。もはや、手慣れたものです。そして、さっそく私の車は災難にあった模様。とほほ。
「でたな、バッドキング! ゴッドレンジャーが、せいばいしてやる!」
「ああーっ! また、おねーちゃんの車がーっ!」
正義の味方、ゴッドレンジャーIN! 私の車、どうなってるのかしら……。見たいような、見たくないような。
「バッドキングさま! あっしも、すけだちしますぜ」
ともちゃんの声。なんと、あのじろう、ヴィラン側で参加! まさかの展開! でも、なんで三下キャラ?
「きゃー! ゴッドレンジャーさま! あのじろうさんの、せんのうを、といてあげて!」
こちらは、アメリちゃん=ほえほえさん。おお、それっぽい設定が即興で組まれましたよ!
「なんだって! それは、ほんとうかい!? ならば、あのじろうくんを、きずつけることはできない!」
「さあー、どうする、ゴッドレンジャー? フフフ……」
白部さん、悪役演技ノリノリですね。
「ゴッドレンジャーさま! わたしも、たたかいます! とう!」
「おお、ほえほえさんが、きょだいかを!」
うん、ほえほえさん、この中で元々一番大きいけどね。
なんと珍しい、がぶり四つのバトル展開。これは耳が離せません。
「おもいだして、あのじろうさん! わたしとすごした、あのひびを!」
さすが、ほえほえさん。巨大化してもいつものノリね。
「くっ……なんだ、このずつうは!」
ともちゃんも、ノリがいいなあ。
「まどわわされるな、あのじろう! やつらは、われわれのてきだ!」
白部さん、お医者さんにならなかったら、保育園の先生になってただろうなーという、上手いノリ方。
ちらりと親子さんの様子を見ると、とても楽しそうに見入っています。あと、転落している私の車も、視界に入りました。涙。
そのまま少し見守っていると、ほえほえさんが、あのじろうに体当たり! ……いや、ハグ?
「おもいだして、あのじろうさん。わたしとあなたは、おともだちだったのよ……。うみに、いったでしょう? そこで、バーベキューたべて……」
それ、こないだの海の話じゃない。リアルの思い出で、あのじろうを侵食するほえほえさん。もはや、どっちが洗脳かわからないわね。
「はっ、そうだ……! たしか、ホタテのバーべキューを……!」
あのじろう、ノッてきた~!
「そうだ。ぼくは、ほえほえさんの、だいじなともだちだ!」
「なんだと!? せんのうが、とけただと!?」
白部さんも、ノリがいいですね~。
「さあ、バッドキング! これで、おまえひとりだ! くらえ、ゴッドソード!」
「ぐわあああ~! お、おぼえてろ、ゴッドレンジャー!」
バッドキング退場~。
「あのじろうさん!」
「ほえほえさん!」
抱きしめ合う二人。
「さらばだ!」
そして、颯爽と飛び立っていく、ゴッドレンジャー。
大団円! 親子さんと二人で、拍手する。「どうよ?」ってな顔の三人と、照れくさそうな白部さんが好対照。
つい、見入っちゃったな。
「面白かったですー」
親子さん、絶賛。
「私も。先の展開が読めませんでした」
同様に、賛辞を送る。
「いやー、お恥ずかしいです」
より一層、照れる白部さん。
「おおー! 白部せんせー、ちゃんと上手だったよ!」
「そーだぞ、ルリ姉、自信持てよなー」
「ともも、バッドキング上手だと思った!」
子供たちの賛辞に、ますます照れくさそうな彼女。
「ありがとう。本当は、アンチエレメント大帝が用意できると良かったんだけどねー」
「なんです? その、なんとか大帝って?」
素朴な疑問を呈する。
「エレメントレンジャーが、最後に戦う敵なんです。ただ、グッズがなくて……」
なるほどねえ。怪獣が売り物になる別シリーズとは、販売戦略が違うのか。ブンレッツは、食玩になったらしいけど。
「まったく、売り物として出てないんですか?」
「限定生産らしくて、かなり高値で取引されてるんですよ」
へー。まあ、番組も終わりの頃の敵じゃ、不良在庫になっても困るものねえ。
「ルリ姉、バッドキングでもじゅーぶん楽しいから、安心してくれよな!」
「ありがと」
白部姉妹の、ほほえまなやり取り。
こうして、今日はゴッドレンジャーごっこを中心に、子供三人が思う存分遊ぶのでした。
さーて、夜になったら、明日の準備をしないとね!
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